9-13:3匹の散歩
季節を一気に?進めました。今回は短めです。
細かい部分の補足はいつかやります。いつか・・・
9-13
一面の銀世界。今年は寒波でも来てるのかというくらい寒く、稀に見る豪雪とのことだ。数週間前から降って、既に10m超えそうなほどに積もっていた。一旦止んだと思ったら、昨夜また降って今朝は晴れである。
私はベン、モナ、ロルフに引っ付かれて、一緒にぬくぬくと寝ていたんだけど、3匹に起こされた。明らかに遊ぼうと誘っている。時刻は1の鐘がようやく鳴った早朝。まだまだ外は薄っすら明るくなってきたくらい。
『ヴォウッ』
『クゥーンフーン』
『ワウッ』
3匹とも尻尾を千切れんばかりに振っている。前世で犬を飼っていたから知っている。これは散歩に連れて行けというサインである。めっちゃ期待している目をしているもの。ってか、君らね。一体どこでそんな上目遣い覚えてきたの?野生どこ行った?Where is wild?う、うーん。
「…はぁ、後で怒られるときは一緒に道連れにするからね?」
クローゼットを開けて、防寒着を着込んで雪靴を履く。窓から城内の庭を確認して、『神の至る道』で転移する。
「さっむ!!」
分かっちゃいたけど、寒い!目の前の景色が切り替わると同時に寒気が襲ってくる。マフラーをもう少し上に上げて、口まで覆う。うぅ、さぶさぶ…
そうして寒がっていると、3匹とも転移で飛んできた。相変わらず幻獣達は転移で好き勝手に飛んでくる。既に成獣のルシアやマルタ、セージなどは言えばキッチリ飛んできて欲しくない時間や、場所、日程を守ってくれるが、まだまだ幼獣の3匹やパックなんかは時々守らず転移で飛んでくる。他の成長し始めた幼獣とかも、そろそろ転移して飛んでくる気がする。
『ヴァウヴァウッ』
『グァルッ』
ベンとロルフは早速雪の中でボスボスと暴れながら、じゃれ合っている。モナは頭を擦り付けて甘えてくる。グイグイと、背中に乗れという仕草をしてくる。
「はいはい。程々のスピードでね」
モナに乗ると、ベンとロルフも耳をピンと立て、そわそわし始める。彼ら3匹はじゃれつくのも好きだが、思いっきり走るのも好きらしい。3匹とも期待の眼差しを向けてくる。
「はいはい。モナ、Go!」
『ワウッ』
一気に後ろ側へ体を持っていかれそうになるが、股と手でモナにしがみついて姿勢を低くする。姿勢が落ち着いたと判断したのか、モナもベンもロルフもぐんぐんスピードを上げていく。カーブに差し掛かるとややスピードを落とすが、それでもかなりの速度で曲がっていく。さすがに『魔鎧』も発動してさっきよりもガッシリしがみつく様にして耐える。でないと、ポーンと外側へふっ飛ばされそうである。
『ハッ、ハッ、ハッ!』
3匹とも息は上がっている筈なのに、速度を落とそうとしない。幻獣の高ステータスに物を言わせた化け物じみたスタミナで、すっごいスピードを維持したまま城の周囲を走っていく。
やがて2周目の途中でようやくペースを落とし始めて、3匹共雪の上に転がった。って、モナ!そのまま倒れたら--
「ぶっ」
私も雪上に投げ出されて、雪をかぶる。
『ハッハッハッハッ……』
3匹とも仰向けに、腹をさらけ出して満足そうに息を荒らげている。君らねぇ。野生はどこに行った(本日2回目)。まぁ、いいけど。
「ふぅ、満足?」
モナに付いた雪をパッパッと払う。モナは私を乗せてた分消耗したのか、まだ起き上がらない。ベンとロルフは自分も撫でろと頭を寄せてくる。はいはい。やがてモナも回復して、飛び付いてくる。
「あーもー、分かったから。うっ、舐めるのはやめろ!」
3匹とも回復したのか、相変わらずテンションが高い。じゃれつくか、雪の上を飛び跳ねている。
「姫様!」
急な声にビクッとする。先程までテンション高くはしゃいでいた3匹も、尻尾を足の間に入れて耳がペタンと倒れている。
や、やべー。誰かが来る前に戻ろうと思ってたのに…よりによって、マーサに見つかった。振り返ると既に目の前まで来ており、怒り心頭という具合である。
…………よし、落ち着こう。私はペットの散歩をしてただけだ。うん。ただそれだけである。
「…おはようございます、マーサ。今日はいい天気ですね」
「姫様、何をなさっているのですか?」
「さ、散歩を少し」
「この寒い中をですか?」
「3匹がどうしてもと言うので」
3匹がすごい顔してコッチを見てきた。「え、お前、俺たち売るの!?」みたいな感じで。器用だね、君ら。だが、元はと言えば言い出しっぺは3匹である。私はその散歩に付き合っただけ。というか、怒られる時は道連れにするって言ったよね?
「後で寝込むことになるのは姫様ですよ?」
「その時はまぁ、養生すれば治るでしょうし」
マーサは溜息を吐いて、雪の上に座っていた私を立ち上がらせて、顔や頭に付いていたらしい雪を払ってくれた。
「まったく、こんなに体を冷やして…すぐにお風呂ですよ」
「…はぁい」
「モナ、ベン、ロルフ。冬の間は他の侍女に頼みなさい。分かりますね?」
『キュゥーン…』
『ヴゥ…ワウッ!ワウッ!』
『バウッ』
3匹ともまだ子供とはいえ幻獣である。マーサの言葉を理解したのだろう。抗議の声を上げている。
「出来ないならば、ルシアに言いつけて1日飯抜きにしますよ?」
『『『………』』』
さすがマーサ。3匹が嫌がることを既に熟知している。さっきまで威勢よく吠えるか、鳴いていたのに、ピタリと大人しくなった。君らやっぱり根本は犬なんだね。カースト上位には逆らえないらしい。
3匹を引き連れつつ、私はすぐさま自室に連れて行かれて、そこで待機していたララァナ、ルゥからお小言を貰い、そのまま風呂へ連行された。
一応、城内の設備として風呂を薪で沸かせることも可能だが、今は薪の節約の為に私かおじい様の魔法で沸かしている。薪で沸かす作業が無いので、侍女や使用人は大喜びだ。
普段からやっても良いんだけど、マーサなんかから下々の仕事を奪うなとか、令嬢のやることではないと言われて、やらせてくれないんだよね。だが、今シーズンは別。城で使用する予定の薪は、一部をキャメロットの市場に流して、値段を下げつつ市井に行き渡りやすいようにした。燃料が枯渇して、領民が凍死したとか嫌すぎるからね。
そんなわけで、『アクア』で出した水に『ファイア』で作った炎球を突っ込んで、ボコボコと沸かしました。ちょこっと微調整もして、適温の風呂にした。
それと、おじい様に増築してもらった幻獣用の浴槽も同様に。モナ、ベン、ロルフも、そちらへ放り込んでおく。3匹とも、嫌がる様子も見せず、ジッと浸かって眠そうにしている。そりゃ、あれだけ走りゃそうもなるよ。
一方の私はといえば、ララァナに洗われていた。ルゥも翼を洗っている。
「ララァナは寒さに弱いから、ちょうど良かった?」
洗われながら聞いてみれば、ララァナは溜息を吐いた。
「そりゃ、朝から体を温められるから役得だけど。でも、急に隣の部屋からヒスイの気配が消えたんだから、焦ったわよ」
「あはは、ごめん」
「まったく。ほら、流すわよ」
「うい」
ざばーっとお湯で流されて、サッパリする。ララァナも軽く洗って、翼を洗い終えたルゥも一緒に、全員で湯船に浸かる。うん、この3人だけで風呂入るのは久し振りな気がする。ナディとイリーナ?新婚さんを早朝勤務させたりはしませんよ?ほら、色々とあるじゃん?何がとは言わないけど。
テュリスはここ数日、教会の人手が足りないらしくって、そっちのヘルプである。なので、私は城の敷地内からは出ないよう釘を刺されている。まぁ、こんな寒さなら外出はしたくない。今朝は3匹の散歩で仕方なく外に出たけど。
「ふあ〜」
ついつい欠伸が出てしまう。朝っぱらから、3匹と散歩だったからなぁ。乗ってるだけとはいえ、しがみつくのにも体力は必要だしね。
「そういえば、最近はあの子達ヒスイと一緒に寝てるけど、ルシアはどうしてるの?」
「ルシアを祀り上げてた犬族の里があったでしょ?」
「あぁ、林業を教えてた」
「そうそう。一応あそこの近くがルシアの縄張りだから、ちょいちょい帰ってるんだけど、なんか大きな魔獣が出たらしくって、犬族と一緒に調査しに行ってる」
正直、心配ではあるけど、あまり手を貸しすぎるのも良くないということで、取り敢えずルシアの子供たちを預かって、犬族にはポーションの類や食料、一部の者には衣類などを提供するのに留めている。
「ふーん、大変ねぇ」
「今回は何とかなってるけど、薪の問題もあるし紙の材料にもなるしね、木材って。だから林業をスタートさせた犬族の里が滅ぶことになると困るんだよね」
そう、今回は薪の節約なんかで何とかなっている。あとは、おじい様に炎を上手いことコントロールしてもらって、街中の雪を溶かしたり。私自身はあっちこっち回って火種の提供である。あとはファイアーピストンの伝播や、提供。
衣類は残念ながら、多くは提供できない。城にも数には限りがあるし、この雪でグランドルからの物流が滞っているから。そちらも、おじい様に街道の雪を溶かしてもらったりしているが、毎日出来るわけではない。それに、何やかんやグランドルまでは遠いからね。
冒険者連中にも依頼として雪かきやら、燃料の確保やらを頼んでいるけど、資源にも限りはある。尽きないのは魔獣くらいだよね。本当に尽きないよな、アイツら。まぁおかげで食料には困らないけど。
魔獣狩りには私もたまに騎士団に同行して、レベル上げをしている。ただ、私達が狩ってくる以上に、幻獣軍団の方が狩りしてくるんだけどね。獣士隊の面々も、冬に強い種族は狩りをして自分達の食い扶持以上に狩りをしてくれるので助かる。
逆に冬に弱いラミアやアラクネなどの種族は、城の敷地内で内勤状態である。字を教えつつ、書類仕事を手伝ってもらっている。というか、彼らの場合はこの時期に外で仕事させると、ガチで凍死しかねない。彼女らは冬眠しないみたいだし。それはララァナも一緒なので、基本的には外に出ない。
久々の3人だけの入浴を終えて、外へ出る。ふーサッパリサッパリ。
その後朝食を取って、淑女教育である。今年の冬の間は雪のせいもあって、色んな事が止まっているので私の執務量は激減する。なので、空いた時間にマーサがこれでもかと教育を詰め込むらしい。勘弁して…
と言っても、年明けには再び王妃たちとの新年会が控えているので、手を抜けないのも分かる。なので、大人しく教育を受けているわけで。しかし、この日は教育の毛色が違った。
「……で、これを読めばいいんですか?」
「えぇ、そうですよ。姫様の読むものといったら、魔法に関する事や、様々な技術書ですからね。それでは、情緒も育ちようがありませんから」
「………」
まさかこんな変化球で来るとは。渡されたのは、そこまで厚くはない本である。革表紙の本で、かなり高価そう。表紙の題名は『公爵騎士の恋物語』である。
……………………………う、うーん。
私の苦手なジャンル。前世の頃からこの手の本は読んでこなかった。読むとしたらファンタジー物や伝記物、それこそ技術系の書籍とかだった。あとはほら、少年マンガ、青年マンガとか。
この手のものが映画化された時に、従兄妹にねだられて見に行ったけど、見ていて背中がむず痒くなった。あと、無駄に顔のいい俳優が甘ったるい言葉を吐いてるのが、気色悪かった。いや、別に俳優さんは嫌いじゃないよ?あーいうシチュエーションがマジできっついってだけで。従兄妹はそれに「キャー」って小声で言ってたけど、何が良いのか分からなかった。
そして、鑑賞後に感想を求めてきたので、適当に返してたら「……ちゃんと見てた?」と言われる始末。私の情緒は前世のころから死んでいるのである。
まぁ、ムカついたので後日オタク趣味全開の映画に連れ出してやったが。まぁ、そっちはそっちで内容が濃くて胸焼けしそうになったけど。問題は従兄妹がそっち方面の沼にハマってしまった事であった。お前の守備範囲広いなぁ!
従兄妹の底知れぬ守備範囲を思い出して身震いしていたら、マーサが表紙を開いてきた。
「さぁ、姫様。お読みくださいませ。それとも、私が朗読いたしましょうか?」
「じ、自分で読みます」
うぅ、リアルの他人の恋愛事情に出歯亀するのは好きだけど、フィクションのゲロ甘な色恋は吐きたくなる。
結局その日の昼食は胸焼けで食えませんでした。おえ。
どこもかしこも人材不足で忙しいですね。
さて、少し更新に間が空いてしまいましたが、現在次章を執筆中でございます。更新はもうしばらく待っていただくことになると思います。
それといつも誤字脱字報告、ありがとうございます!助かります!推敲苦手なんです!すみません!




