第五十三章 強制執行の鉄拳
轟隆――!!!
林野の号令と同時に、「終焉号」因果専列車に残されていた動力コアが、環状宮殿の外で激しく唸りを上げた。
次の瞬間。
無数の太い金色の因果の鎖へと変わり――
そのまま総勘定場の巨大な穹窿を覆う防衛法陣を、真正面から貫き抜いた。
「往生際の悪い奴らめ!」
林野が本当に攻撃を仕掛けてきたことを見て、十二人の金袍の長老たちは、もはや超然とした姿勢を保ってはいられなかった。
先頭の長老が怒鳴り声を上げる。
両手を虚空へ向けて掴む。
その瞬間。
編劇会総本部に残されていた最後の法則兵器が、一斉に目を覚ました。
数千、数万。
宇宙最高位の裁決力を象徴する白い光刃が、空を埋め尽くす。
そして――
林野たち三人へ向かって、雨のように降り注いだ!
「上等だ!」
レインが獰猛な笑みを浮かべる。
両腕の機械義肢から、最高出力に達した高周波振動鋸刃が一斉に展開された。
次の瞬間。
レイン自身が一本の鋼鉄の竜巻と化し、真正面から突っ込んでいく。
ギィィィン――!!!
耳をつんざくような金属音が鳴り響く。
無数の白い光刃と高周波振動鋸刃が激突した。
レインは一歩も退かなかった。
ただ純粋な物理的暴力だけで――
正面から飛来した光刃の大半を、次々と叩き潰していく。
一方。
墨清の姿は、稲妻のように走った。
手にした断剣が、冷たい月華の輪となって舞う。
剣罡が通り過ぎるたびに――
横から忍び寄ってくる因果禁制が、一つ、また一つと切り裂かれ、跡形もなく消滅していく。
そして。
大広間の中央。
林野は、頭上を飛び交う無数の法術の余波など、まるで気にしていなかった。
双眸を細める。
一歩。
踏み出した。
その手に握られた無刃聖剣には――
北境総館。
二枚の「初期原稿」。
そして、これまで浮世書斎が積み重ねてきたすべての因果契約。
そのすべての重みが込められていた。
林野はそのまま――
十二人の金袍の長老たちへ向かって、真正面から剣を振り下ろす!
「――署名捺印しやがれ!」
轟――!!!
その一撃は、単なる剣技ではなかった。
浮世書斎が幾代にもわたって積み上げてきた――
「清算の因果」。
そのものだった。
剣の一撃が、十二人の長老が共同で張った法則の光幕へ触れた瞬間。
多次元宇宙で最も堅牢と謳われていた防御が――
まるで薄紙のように、端から次々とひび割れていく。
パキッ!
パキパキパキ――!
「な……!」
十二人の金袍の長老たちの顔色が、一斉に変わった。
彼らは恐ろしい事実に気づいた。
自分たちが何紀元にもわたって掌握してきた、無数の物語権限。
それが林野の、荒々しく理屈など通じない人の世の息吹を前にして――
自分たちの意思とは無関係に、一つずつ剥がれ落ちていく。
いや。
剥奪されている。
そして。
退化していく。
「こ……これは……何の力だ!?」
金袍の長老の声に、ついに恐怖が混じった。
「これか?」
林野は冷笑した。
「人の世の息吹だ」
そして。
「合法的な取り立てってやつだよ!」
林野は片手で帳簿を空中へ叩きつけた。
バサッ!
帳簿の頁が一気にめくられる。
その瞬間。
金色の強制執行契約が、空中から一気に展開された。
それは十二本の重い枷へと変わり――
正確無比に、一人一人の長老の首へと食い込んだ。
ガシャン!
十二人の身体が同時に揺れる。
林野は帳簿を閉じた。
「帳簿はもう上限まで埋まった」
「利息の計算も、とっくに終わってる」
その声は静かだった。
だが。
その言葉には、一切の交渉を許さない圧力があった。
「さあ――」
林野は無刃聖剣を反転させる。
そして。
先頭の長老の肩へ、刃を静かに乗せた。
鋭い視線が、相手を射抜く。
「総本部の総権限を渡してもらおうか」
「それとも――」
林野の口元に、冷たい笑みが浮かぶ。
「俺が、お前ら十二人の老いぼれた骨を――」
「全員まとめて、法に則ってここで廃棄してやろうか!」
大広間に、重い沈黙が落ちた。
十二人の長老の首には、金色の強制執行契約が絡みついたまま――
編劇会総本部の無数の法則コードが、次々と警告音を上げ始めていた。




