↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
浮世書斎と未亡の刃  作者: 亀


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

51/56

第五十一章 編劇会総本部の「資産再編」

轟隆隆――!


「最終審判裁決艦」の主制御中枢が金色の光柱の中で完全に崩壊した瞬間。


かつては高みから多次元宇宙の生死を握り、世界そのものをフォーマットしていた編劇会総本部が――


ついに。


その長い歴史の中で、初めての「破産清算」を迎えた。


無光の海を覆っていた荒れ狂う霧が、広大な市井の因果の衝撃を受けて、まるで薄い霧のように左右へと押し退けられていく。


その奥から姿を現したのは――


禁区の最深部に隠されていた、本当の中枢。


――多次元宇宙総勘定場。


その別名は――


「至高審判廷」。


それは、果てのない星海の中に浮かぶ巨大な環状宮殿だった。


無数の光ケーブルが、宇宙の底層法則そのものを象徴するかのように、四方八方からそこへと集まっている。


だが今。


その光ケーブルの大半が、契約違反を示す猩紅色の警報を明滅させていた。


巨大な宮殿全体が、かつてない混乱と機能停止に陥っている。


「おいおい……」


レインが「終焉号」を操縦し、環状宮殿に隣接する巨大な白銀の埠頭へとゆっくり停車させる。


窓の外では、慌てふためきながら逃げ回る高次元の審判官や財務担当者たちが、あちこちに溢れていた。


レインはその光景を眺めながら、思わず感嘆の声を漏らす。


「ここ、俺たちの第七街区の市場なんかより、ずっと立派じゃねえか」


そして。


「林野、この様子なら――」


レインはニヤリと笑った。


「今日は帳簿を回収するだけじゃなくて、ついでにいくつか使えそうな生産ラインまで接収できそうだな」


墨清は断剣を手に、真っ先に車両から飛び降りた。


鋭い視線で周囲に残る防衛禁制を一つ一つ見渡しながら、低い声で告げる。


「首席裁決長は敗れました」


「ですが、編劇会総本部の中枢長老会は、まだ完全に抵抗を諦めたわけではありません」


墨清の視線が、宮殿の奥へ向く。


「内部では、いくつかの極めて強力な高次元因果反応が、今まさに目を覚まし始めています」


「目を覚ましたんなら――」


林野が答えた。


無刃聖剣を片手に提げる。


もう一方の手には、これまでの清算によって分厚く膨れ上がり、眩い金色の光を放つ帳簿。


それをしっかりと抱えていた。


林野は何の焦りも見せず、「終焉号」から降りる。


そのすぐ隣では、縄でぐるぐる巻きにされたカールが、すでに顔面蒼白。


両脚から力が抜けたようになり、レインに車内から引きずり出されていた。


林野は編劇会総本部の、鏡のように磨き上げられた白銀の床へ足を踏み入れる。


コツ。


コツ。


ブーツの底が床を叩く音が、広大で静まり返った大広間に妙にはっきりと響いた。


周囲にいるのは、ついさっきまで誰も逆らえない存在だった高次元の審判官たち。


だが今は――


この「書斎の店主」を、まるで死神でも見るような目で見つめている。


誰一人として口を開かない。


手にした因果の鎖さえ、まともに握ることができない。


そして。


一人。


また一人。


無意識に、後ずさっていく。


そのときだった。


環状宮殿の正面。


虚空が突然、何度も大きく裂けた。


巨大な金色の時空の裂け目が、次々と開いていく。


その向こうから――


十二の巨大な人影が、ゆっくりと姿を現した。


古びた金色の長衣。


その顔は、まるで霧に覆われたように判然としない。


しかし。


その身から放たれる法則の威圧だけは、無光の海全体を震わせるほどに強烈だった。


彼らこそ――


何紀元もの間、編劇会総本部の奥深くに身を隠していた、最高長老会の十二人。


先頭に立つ一人の金袍の長老が、低く重々しい声を響かせた。


「林野……」


その声には、拒絶を許さないほどの威厳が込められている。


「貴様は理解しているのか?」


「最終審判裁決艦を破壊し、中央審判廷を踏み砕いたことが――」


「いったい何を意味するのかを」


金袍の長老の声が、宮殿全体へと広がっていく。


「もし貴様の行為によって多次元宇宙の秩序そのものが崩壊すれば――」


「億万の生命が、本当の虚無へと落ちることになるのだぞ!」


その言葉を聞いた林野は――


思わず鼻で笑った。


足を止める。


そして。


無刃聖剣を反転させ――


白銀の床へ、ドンッと突き立てた。


澄んだ轟音が、広間全体に響き渡る。


林野は顔を上げた。


その目には、一切隠すつもりのない荒々しさと嘲笑が浮かんでいる。


「秩序?」


「くだらねえこと言って、こっちに偉そうな帽子を被せようとするんじゃねえよ」


林野は十二人を睨みつけた。


「お前らみたいな踏み倒し屋どもが、毎日この総本部で好き勝手に脚本を書いて、他人の世界から金を巻き上げてたとき――」


「億万の生命がどうなろうと、考えたことがあったのか?」


林野は帳簿を持ち上げる。


「今日、先に言っとくぞ」


バサッ!


帳簿が大きく開かれた。


次の瞬間。


金色の光が一気に広がり――


至高審判廷全体を覆い尽くした。


林野の声が、巨大な環状宮殿の隅々まで響き渡る。


「多次元宇宙の物語総権限――」


「それから、残ってる『初期原稿』を全部出せ」


「浮世書斎による資産再編に、大人しく協力してもらう」


そして。


林野は無刃聖剣の柄を握り直した。


口元に、不敵な笑みが浮かぶ。


「それとも――」


「今日ここで、この十二人の老いぼれどもをまとめて――」


「このボロ宮殿ごと――」


林野は帳簿を閉じた。


「正式に破産倒産ってことにしてやろうか!」


静寂。


次の瞬間。


至高審判廷の全域で――


無数の警報が、一斉に鳴り響いた。


――第三部「北境廃墟と初期書頁」後日譚・第一章

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。