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公爵家の問題児たちと天然皇女  作者: angelcaido
6章 The Trigger
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85/90

第85話 妹を守るためだ。わかってくれるね?

肝試し後半です。

公爵城内・中間地点。


夜の城は普段より静かだった。

肝試しに参加した者達の声だけが、廊下に微かに響いている。


「……遅いな」


ロエルが待ちくたびれたように呟いた。


「あ、声が聞こえてきましたよ」


ラミアが声のする方を見る。


やがて近づいてくる足音。


そこに現れたのは――


不機嫌そうなユアンと、呆れ顔のルード。

そして半泣きでルードにしがみついているキドだった。


「……」

「……」


その光景を、皇太子は感情の読めない笑顔で眺め、ロエルは引いていた。


「ここで入れ替えだな」


ルードは、ようやくキドから解放されると思い安堵する。


「俺はルード様と離れたくないです!!」


キドは必死にルードに抱きついた。


「こう言っているし、ルードはそのまま彼と一緒にいてあげた方がいいんじゃないかな?」


皇太子が優雅な笑顔で言う。


ルードの口元が歪んだ。


(確かにキドを皇太子にしがみつかせる訳にはいかない。だがロエルに引き取って欲しい)


「ハハ、キドはルードを頼りにしてるんだよ。そのままいてあげれば?」


ロエルも笑顔で追撃する。


(引き取れ! ロエル)

(いらねーからな)


ルードとロエルは目で会話した。


結局、


ラミア・ルード・キド

ユアン・皇太子・ロエル


で回ることになった。



皇太子とロエルの間にユアンが立って歩く。


(万が一にも、この二人にしがみつきたくありませんわ)


しばし沈黙。

空気が張り詰める。


お化け役の団員とロエルの目が合った。


「ヒッ」


(あれロエル様です)

(撤退)


お化けは即座に背を向けた。


次のお化けが現れる。


三人の視線が集まる。


「……」


お化けは無言で道を譲った。


「……お二人とも、私をエスコートする気すらございませんの?」


ユアンが不満をぶつける。


「おや、ユアン嬢は私にエスコートして欲しかったのか?」


皇太子が微笑む。


「そんな事言っておりませんわ!」


「ロエル、ユアン嬢がエスコートをお望みのようだ」


ロエルは冷たい目を向けた。


「いらないだろ?」


「お二人とも何なんですの?!」


「皇女殿下と違って、どうして私にはそんなに冷たいんですの?」


「ラミアじゃないし」


「ラミアと比べられてもね」


(あの空気に割って入るのは無理だな)

(俺達より遥かに怖い)


ユアンはドレスの裾を気にしながら歩いた。


それを見た皇太子とロエルは、軽く息を吐き、少しだけ肘を差し出した。


「掴まれ」

「怪我はさせたくないからね」


ユアンは微笑む。


「エスコートなさりたいなら、素直に言ってくだされば掴まって差し上げましたのに」


「引っ込めるぞ」

「転んだ時に、手を差し出せばいいかな?」


「……掴まりますわ!」


ユアンは二人のシャツを少しだけ摘んだ。



「ぎゃああああー!!」


キドはルードに登る勢いでしがみつく。


「重い!」


ルードはキドの頬を押して引き離そうとする。


「キド様、お化けさんは皆さんお優しいですよ」


ラミアが微笑む。


(団長、面白い)

(皇太子殿下には無理でもキド様なら)


お化け達は積極的にキドを脅かしてくる。


「す、すみません!すみませーん!!」

「謝りますから許して下さいー!」


「キド様、何も悪い事してませんよ?」


ラミアがくすっと笑う。


ルードに拒否されたキドはラミアに近づき、両手を握った。


「キド、ラミアに触れるな!」


キドは慌てて離れる。


「殿下、手を。いえ、エスコートさせて下さい!」


「はい。お願いします」


ラミアは素直に受け入れる。


――が。


キドは、ラミアの肩に手を置き、背中に隠れながら歩く。


「……ラミアを盾にするなど恥ずかしくないのか?」


ルードはラミアに肘を貸しながら言った。


「敵が生きてる人間なら守れます!ですがそれ以外は無理です!!」


「……お化け役はお前の部下の、生きている人間だぞ」


「今は違います!!」


「もうお化けやってる時点で向こう側の存在です!」


「……」


その時、ラミアが立ち止まった。


木を見ている。


「大変です。お怪我されています」


「ラミア?」


ルードが声をかける。


キドは慌ててラミアを止める。


「殿下、どうされました?」


「あちらに、血を流している方がおります。早く手当てを」


ラミアが心配そうに言う。


「ラミア、これは肝試しだ。

お化け役の使用人が化粧でもしているんだろう」


「ル、ルード様!」


キドが声を上げた。


ラミアが木に向かって話しかけている。


――そこには誰もいない。


「………」


「……誰と話している?」


ルードの声がわずかに低くなる。


ルードとキドの顔が青ざめる。


そして。


「ギャアアアアア!!」


キドはこの日一番の悲鳴を上げた。



皇太子、ユアン、ロエルは顔を見合わせ、戻ることにした。


戻るとそこには――


キドが膝から崩れたままラミアの腰にしがみつき、

ルードが引き剥がそうとしている光景があった。


「殿下やめてー!!」


「キド、ラミアを離せ!」


「キド様、少し苦しいです」


その言葉で、皇太子とロエルの視線が鋭くなる。


ロエルはラミアを引き寄せた。


ルードはキドを引き剥がし、

皇太子がキドに蹴りを入れた。


「ゴフッ」


「制圧!」


その言葉で騎士団員がキドを拘束する。


――が。


その騎士団員達は、まだお化けの格好のままだった。


「ギャアアー! 連れて行かれるー!!」


キドはお化け達に担がれながら叫ぶ。


お化け達は無言でキドを運んでいった。



キドはその夜一晩うなされ、

翌日にはルード、ロエル、皇太子による尋問が待っていた。


キドは少しだけ、お化けが怖くなくなった。


お化けよりも――

生きている人間の方が怖かったから。


「どういうつもりだったのか、説明してもらえるかな?」


「ごめんなさい!!」


「順番に聞こう」

お読みいただきありがとうございます。

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