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公爵家の問題児たちと天然皇女  作者: angelcaido
6章 The Trigger
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第84話 怖い? 手を繋ごうか

肝試し開始。


お化け達は労われ、

キドは泣いた。


誰も予想していない結果だった。

肝試し当日。


結局、騎士団員達だけでなく使用人達まで巻き込み、公爵城全体で行う事になった。


普段は落ち着いた城の中も、この日は妙に浮き足立っている。

廊下の隅では白布を被った使用人が「うらめしや」と練習しており、庭では鎧を着込んだ騎士が「怖いか?」と声の出し方を試していた。


団員や使用人達は、回る側とお化け役を交代でやる為、ラミア達よりもよほど心待ちにしている様子だった。


むしろ、お化け役の方が張り切っていた。


結局、最初は

ラミア、皇太子、ロエルの三人で回り、中間地点で人を入れ替えるという流れに落ち着いた。



「お兄様と、ロエル様とご一緒なら心強いです」


ラミアは二人を見上げ、にこりと笑った。


夜の城は灯りをかなり落としてあり、昼間とはまるで雰囲気が違う。

廊下の奥は薄暗く、庭の木々が風に揺れて影を揺らしている。


正門近くから、三人はゆっくり歩き始めた。


その時だった。


ぎし、と音を立てて鎧が動いた。


道の真ん中に、動く鎧が立ちはだかる。


普通なら驚く場面だった。


だが。


「こんばんは。暑くないですか?」


ラミアが心配そうに声を掛けた。


鎧の中から慌てた声が返る。


「は、はい! 大丈夫です! ありがとうございます!」


鎧が照れている。


皇太子が穏やかに微笑んだ。


「頑張っているね」


ロエルは鎧の隙間から顔を覗かせる団員に軽く手を上げた。


「お疲れ」


待機していたお化け達が思った。


(……全然怖がらない)



その後も同じだった。


廊下の角で、顔色の悪い幽霊が現れる。


「まぁ」


ラミアが足を止めた。


「顔色が悪いです。少し休まれた方が……」


幽霊役の使用人が戸惑う。


「お、お化けなので……」


「そうでしたか」


ラミアは安心したように頷いた。


「お大事になさって下さいね」


幽霊は深々と頭を下げた。


(何で俺が労われているんだ)


ラミアはその後も、お化け一人一人に丁寧に挨拶して回った。



(殿下に挨拶されてしまった)


(怖がらせる側なのに恐縮してしまう)


(むしろこちらが怖い)


気付けば、お化け達の方が恐縮していた。



「そんなに怖くないものだね」


皇太子が言う。


「そうですね」


ロエルも同意した。


皇太子は楽しそうだった。


「しかし、こんな経験は私も初めてでね。そこは素直に楽しいのかな」


「それは良かったです」


ロエルが笑う。


「皆、ずいぶん丁寧だね」


「礼儀正しいお化けですね」



背後では、お化け達が困っていた。


(出て行きづらい)


(驚いていただけないと、こちらが恥ずかしい)



その時だった。


「……ラミアは?」


ロエルが周囲を見た。


皇太子も足を止める。


「先ほどまでいたのに、どこに行ったのかな?」


二人は周囲を見渡す。


今日は屋敷の灯りもかなり落としてある。

廊下の奥は暗く、見通しが悪い。


「ラミア」


呼ぶと、少し先の通路で人影が振り返った。


「あ、お二人共」


ラミアだった。


「すみません。道に迷ってしまいました」


皇太子が安堵したように歩み寄る。


「問題なかったかな?

離れてしまってすまなかったね」


「いえ、大丈夫です」


ラミアは笑った。


「あちらの方が教えて下さいました」


ロエルと皇太子はラミアが指す廊下の先を見る。


その廊下は行き止まりだった。


誰もいない。


「……」


「……」


ラミアは、誰もいない廊下に笑顔で手を振っている。


ロエルが静かに言った。


「ラミア、誰もいないようだけど」


「?」


ラミアが首を傾げる。


「あちらにいらっしゃいますよ」


そして再び廊下を見る。


「はい? 成仏?

それは何でしょうか?」


ラミアは楽しそうだった。


その瞬間。


皇太子とロエルが同時にラミアの手を握った。


ラミアがきょとんとする。


「お二人ともどうされたのですか?」


しかし二人は、しばらく何も言わなかった。



その頃。


別ルート。


「そろそろ行こうか」


ルードを中央に、キドとユアンが並んでいた。


(怖がるフリをして、ルード様の腕にしがみつくのは、はしたなくありませんわよね?)


ユアンは密かに考えていた。


(か弱いふりをして、可愛いと思っていただきたいですわ)


その時。


遠くから悲鳴が聞こえた。


次の瞬間。


「ギャアアアア!!」


キドが叫び、ルードの腕に飛びついた。


「やめろ! うるさいぞキド!」


「まだ歩いてもいませんわ!」


ユアンが呆れる。


(私より先にしがみつくなんて!)


ルードが怒鳴る。


「早く行くぞ! 後ろがつかえてる!」


キドが後ろを振り返る。


順番待ちの使用人や団員が並んでいた。


それを見て。


「ぎゃああああ!」


ルードに抱きついた。


「抱きつくな! 離れろ!」


後ろの使用人が呟いた。


「団長が一番怖いですね」



ようやく進み始める。


しかし。


動く鎧が現れた。


「わぁぁぁぁ!」


鎧が呆れて顔を出す。


「団長、俺ですよ」


「何だお前か」


声は落ち着いた。


だが。


キドはまだルードにしがみついていた。



お化けが出るたび。


「ぎゃああああ!」


「ごめんなさい!」


「来ないで下さいー!!」


ずっとルードに抱きついたままだった。


ユアンが怒る。


「団長!

はしたないと思いませんの?

ずるいですわ!」


「私が先にしがみつく予定でしたのに!」


キドは聞いていない。


「もう帰りたい!」


「………」


ルードは思った。


(こんな事なら……)


(ユアン嬢と二人の方がマシだったかもしれない)


キドの体温が腕に伝わる。


妙に生暖かい。


ルードは終始、悪寒を感じていた。


その頃キドは半泣きだった。


「もう許してー!」


お読みいただきありがとうございます。

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