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天然皇女と3MENたち  作者: angelcaido
5章 Surviving Knight
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第67話 ▶ 皇室騎士団が なかまになった!

空気は、確かに変わっていた。

互いの距離は、もう昨日ほど遠くはない。

訓練前。


前日の訓練を経て、皇室騎士団の視線は明らかに変わっていた。


キドの元には皇室騎士団員が自然と集まっていた。


「昨日の重心の崩し方ですが、あれは――」


「踏み込みの瞬間に腰を落とす、と仰っていましたよね?」


「力を入れていないのに、なぜあそこまで……」


矢継ぎ早の質問。


キドは一つ一つに足を止め、丁寧に答えていく。


「力ではなく位置です。

相手より先に“立っている場所”を取るだけです」


実演まで交えながら説明すると、

騎士たちは素直に感嘆の息を漏らした。


「……なるほど」

「理に適っている」

「無駄がない……」


いつの間にか、見る目が変わっていた。


尊敬と――少しの憧れ。


その空気を察したキドは、やや居心地悪そうに咳払いをした。


「……では、始めるぞ」


号令が響く。


「負傷者搬送訓練だ。二人一組」


声は淡々としている。


「戦場では、速さより安定だ。

落とせばそれで終わる」


短い説明だけ。


「……始め!」



「足並み合わせろ!」

「揺らすな、揺らすな!」


各組が慎重に走り出す。


その中で――


「……重くないんですか、その人」

隣を並走する騎士が小声で聞いた。


「失礼だな、筋肉だよ」

ロエルが即答した。


「力抜いてください! 本当に!」

ロエルを背負っている皇室騎士が半泣きで訴える。


「抜いてる抜いてる」


全然抜いていない。


むしろ体幹で固定されていた。


「固定しないでください! 重さが倍です!!」



折り返し地点。


「交代だな」


ロエルが軽く言った次の瞬間。


ひょい、と。


皇室騎士を背負い上げた。


「ちょ、ちょっと――」


ダンッ!!


地面を蹴る音が、明らかに他と違った。


「お、降ろしてください!!」


速い。


明らかに速い。


「ハハ」


ロエルは笑いながら加速する。


搬送ではない。


全力疾走だった。


「揺れる揺れる揺れる!!」

「景色が速い!!」


「かけっこじゃないですよ!!」


キドの声が飛ぶ。


だが止まらない。


気付けばロエル組が一位で戻ってきていた。


背負われていた騎士はぐったりしている。


「……怖かった……」

「搬送中に走る必要ありましたか……」


ロエルは爽やかに言った。


「早く着いた方が助かるだろ?」


「理屈は合ってますけど違います!!」


キドは額を押さえた。


「搬送対象に恐怖を与えるな」


ロエルは悪びれない。


「生きてただろ?」


「そういう問題じゃない」


休憩時間


誰からともなく地面に座り込む。


水筒の蓋が次々に開く音。

荒い息。

そして――


「…お前足遅いな」

「重かったせいだよ。」

「俺は太ってない!」


いつの間にか軽口が飛び交っていた。


公爵家騎士と皇室騎士が、

自然に混ざって座っている。


そこへ――


「よし」


第二皇子が立ち上がる。


全員、嫌な予感しかしない顔になる。



「腕相撲大会だ」


全員が固まった。


「負けたら俺とカバの池に行こう」


静寂。


風の音しかしない。


「一対一で鍛えてやる」



「「「絶対負けられない!!」」」


公爵家騎士も、皇室騎士も、

一斉に立ち上がった。


妙な団結が生まれる。



「来い!!」

「次!!」

「肘浮かすな!!」

「お前滑ってるぞ!」


地面に円ができ、

怒号と笑い声が混ざり始める。


さっきまでのよそよそしさは、もうなかった。


ロエルも普通に混ざっていた。


「お、強いじゃん」

「ロエル様、本気出してください!」

「出してるって」


次の瞬間、軽く勝つ。


「全然出してないですよね!?」

「いや今のは七割」


「七割で負けたんですか俺!?」



第二皇子は上機嫌で煽り続ける。


「どうした! 池が待ってるぞ!」

「根性見せろ! 皇室の名が泣くぞ!」


笑い声が爆発する。


キドは少し離れた場所から、その様子を見ていた。


(……悪くないな)


統制はない。

規律も緩い。


だが――


士気は確実に上がっていた。


「……騒がしい訓練ですね」


低い声。


振り向くと、セディが立っていた。


腕を組んだまま、少し離れた場所にいる。


「……まあ、否定はしません」


キドが答える。


視線の先では、

両騎士団が笑い合っていた。



その空気を、セディは黙って見ていた。

ただ一人、輪の中に入ることなく。


お読みいただきありがとうございます。

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