第61話 NEXT STAGE
第二皇子、帰る――はずだった。
なぜか合同訓練が決定し、
被害は公爵家騎士団へ拡大。
巻き込まれるロエル、胃が死ぬキド。
そして皇室騎士団、全員絶望。
本日も平和
ユアンは第二皇子を蔑んだ目で一瞥し、
ふっと鼻で笑うと、その場を後にした。
「……何だあの女!?
腹立つな!」
第二皇子は本気で機嫌が悪かった。
「殿下、ユアン嬢はこのあとラミアの授業を受け持ちます。
終わればまた鉢合わせますので――」
ルードはここぞとばかりに畳みかけた。
「お早めにお帰りになられた方がよろしいかと!」
「ああ……そうだな。そろそろ帰るか」
その場の全員が、心の底から安堵した――
その瞬間。
「で、俺の護衛は誰だ?」
「……は?」
空気が止まった。
「俺、皇子だろ?護衛が必要だな」
(皇室騎士団長ですよね?)
「あー、丁度いい。そのまま数日、皇室騎士団に来い」
「……え?」
「合同訓練だ。面白そうだろ?」
全然面白くなかった。
「ちょっと待って下さい!
勝手に連れて行かれては困ります!」
ルードが慌てて止めに入る。
「ハハ、大丈夫だ。ルードは……立場的に無理だな」
あっさり切り捨てた。
「団長、お前来い」
「え!!?」
「うちの連中にも指導してやってくれよ」
「いや、しかし……」
「あと上級・中級・下級、それぞれ数人ずつ。
人選は任せる」
騎士達が凍った。
「決められねーなら、俺が指名するぞ?」
その一言で――
騎士達は無言でじゃんけんを始めた。
地獄の選抜だった。
「あとロエル。お前も来い」
「……俺は」
断ろうとした瞬間。
「お前暇だろ?」
「……」
ルードとキドが同時に息を呑んだ。
「なるほど。暇だから問題ばかり起こすんだな」
「暇つぶしの結果だったんですね」
キドが頷いた。
「……違ぇよ」
ロエルは心底呆れた顔をした。
「とにかく決定な!
俺は待たされるの嫌いなんだ。早く準備しろ!」
騎士達は一斉に駆け出した。
⸻
しぶしぶ公爵城へ戻る途中。
「……準備遅らせたら、待ちくたびれて帰らねーかな?」
ロエルが真顔で言った。
「怒鳴り込みに来ますよ!!」
「じゃあ裏から消えるか?」
「賛成したいですが無理です!」
二人は同時にため息をついた。
⸻
「じゃあな、ルード。借りてくぞ」
第二皇子は満足げだった。
「はい。よろしくお願いします」
ルードは解放感に満ちた笑顔だった。
その笑顔を、
キドとロエルと騎士達が冷めた目で見ていた。
⸻
そして――
皇室騎士団。
整然と後片付けをしていた団員達の前に、
第二皇子が現れる。
「おい、手を止めろ」
全員の動きが止まる。
第二皇子は、後ろを親指で示した。
「公爵家騎士団、連れて来たぞ。
今日からしばらく合同訓練だ」
沈黙。
皇室騎士団員の目が、
一斉に死んだ。
⸻
「あぁ……俺たちも数日後にはああなるんですかね……」
キドが遠い目をした。
「ハハ、公爵城に帰っても、あの目のままの奴いそうだけどな」
ロエルは笑う。
「何でそんな他人事なんですか!?」
「え?気に入られてるのはキドだろ?俺ら巻き添えだし」
その一言で――
公爵家騎士達の視線が、全部キドに集まった。
「何で俺を見る!?」
誰も答えない。
ただ静かに責める目。
「そんな目で見るな!!」
団員達は肩をすくめ、ため息をついた。
「何だその態度は!?」
「まぁまぁ」
ロエルは笑顔でキドの肩を叩く。
「ロエル様のせいでしょう!!」
キドは、
皇室騎士団の死んだ目と、
公爵家騎士団の恨みの視線の中心に立っていた。
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