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天然皇女と公爵家の問題児たち  作者: angelcaido
5章 Surviving Knight
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第58話 ROUND 2

団長キド、本気の一戦。


ただし、その場にいた全員の目的は少し違っていました。

第二皇子は軽く肩を回し、振り返った。


「団長、次はお前だ」


キドは、まるで死刑宣告を受けた気分になった。


(なぜ俺なんですか)

(どうしてこうなった)


周囲の視線が一斉に集まる。


逃げ場なし。


キドは観念して木剣を取り、ゆっくりと立会台へ上がった。


深く息を吸う。


――空気が変わった。


さっきまでの混乱が、すっと消える。


構えは低く、無駄がない。

視線は一点、相手の重心だけを追っている。


騎士達が思わず息を呑んだ。


(あ、団長だ)

(さっきまで胃押さえてた人と別人だ)


「行くぞ」


第二皇子が踏み込む。


速い。


だが――


キドは動かなかった。


いや、動いたのは一瞬だった。


身体を半歩だけずらし、

相手の腕を外しながら木剣を滑らせる。


カン、と乾いた音。


最小の動きで、最大の制御。


力で押さない。

読む。

流す。

崩す。


完全に、技術だった。


第二皇子の二撃目。


それを迎え撃つように、今度はキドが踏み込む。


鋭い。


先ほどまでの防御主体とは違う、

迷いのない直線の打ち込み。


「――っ」


第二皇子の目が、初めて細くなった。


受け流される。


だがキドは止まらない。


連撃。


速さではない。

正確さ。


相手の動きの“隙間”にだけ剣を差し込む。


訓練場の空気が一段引き締まった。


――その時。


「さすが、団長!」


一際大きな声が響いた。


全員が振り向く。


(ロエル様!?)


ロエルが満面の笑顔で拍手していた。


騎士達は一瞬唖然としたが、

すぐに同じ結論に達した。


(この流れに乗れ)

(万が一次が自分に来たら死ぬ)


「よ、団長!」

「団長、頑張って下さい!」


次々に声が上がり始める。


(何だ?あいつら)


キドは困惑しながらも、

第二皇子の突進をいなし、逆に木剣を叩き込む。


カン!


乾いた音が響く。


その時。


「もう、俺を抜いたな!」


ルードが大声で――

ものすごく棒読みで言った。


「この公爵城で一番強いのはキドだな」


あまりの下手さに、

騎士達の声が一瞬止まった。


(演技下手すぎる)

(せめて感情込めて)


キドは呆れた。


(嘘なのはわかってる)


だが。


(……悪くないかもしれない)


ほんの少しだけ、

踏み込みが鋭くなる。


「はっ!」


木剣が閃く。


第二皇子に襟を掴まれかける――


その瞬間。


体を捻り、手首を外し、

至近距離から打突。


完全に訓練された動きだった。


「ほぉ」


第二皇子が笑う。


「いいな、お前」


打ち合いが続く。


技術対体格。


読み合いと力の押し合い。


周囲の騎士達は――


(団長、逃げ切れ!)

(勝たなくていい!)

(時間稼げ!)


完全に応援の方向を間違えていた。



少し離れた場所で。


ロエルが小声で言う。


「このままじゃ、次お前だぞ」


「だからキドの方が強いと言っているだろう」


ルードは真顔だった。


「いやいや、足りねーよ」


「じゃあどうすればいいんだ?」


二人とも最低だった。



「埒が明かねぇな。だが良い試合だった」


第二皇子が一歩下がる。


息は切れているが、満足そうに笑っていた。


「次はルードか」


振り向く。


そこにいたのは――


「第二皇子殿下」


ルードだった。


「俺は足を負傷しておりまして、

誠に残念ですが本日は――」


先ほどまで無かった包帯が巻かれていた。


松葉杖まで装備していた。


完璧な負傷者だった。


「……」


訓練場が、完全に沈黙した。


誰も突っ込めない。


あまりにも堂々としている。


ただ一人。


ロエルだけが、肩を震わせていた。


お読みいただきありがとうございます。

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