表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天然皇女と公爵家の問題児たち  作者: angelcaido
5章 Surviving Knight
56/75

第56話 嵐を呼ぶ第二皇子

外遊、無事終了。


問題も、一緒に連れて帰ってきました。


皇女殿下の外遊が無事終わり――

ラミアを乗せた馬車が、公爵家正門前に到着した。


出迎えに立ったルードは、いつものように柔らかく笑みを浮かべ――


そして、その笑顔が固まった。


馬車の横で、キドがすでに遠い目をしている。


(嫌な予感しかしない)

(もう帰りたい)


もう一頭の馬が、ゆっくりと歩み寄る。


そこから一人の男が降り立った。


精悍な顔立ち、鍛えられた体躯。

だが所作には妙な品の良さがある。


その男――第二皇子レフは、自然な動作で馬車の扉に手を掛けた。


中からラミアが現れる。


第二皇子は手を差し出す。


「どうぞ、殿下」


「ありがとうございます。お兄様」


ラミアは嬉しそうにその手を取った。


第二皇子は振り返りながら、実に気軽な口調で言う。


「外遊、予定より早く終わったしな。

せっかくだから――ついでに公爵家にも寄っていこうと思ってな」


ルードの口元がわずかに引きつる。


(何が“せっかく”だ)

(何の“ついで”だ)


キドは視線を空へ逃がした。


(これは絶対、ついでじゃない)


その瞬間。


「では我々はこれで失礼致します!」


皇室騎士団が、見事な速度で撤収した。


誰一人振り返らない。


逃げた。


完全に逃げた。



「お兄様、私の私室にいらっしゃいます?

それとも庭園でお茶を?」


ラミアが楽しそうに尋ねる。


第二皇子はラミアの頭を軽く撫でた。


「いや――先に騎士団へ挨拶だな。

……せっかく来たんだしな」


ルードとキドの背筋に、同時に冷たいものが走る。


「まぁ。お兄様は礼儀正しいのですね」


ラミアは何も疑わず微笑む。


「では私は先に戻っておりますね」


(行かないでくれ、ラミア!)

(唯一の緩衝材が離脱した)



ラミアの姿が見えなくなった瞬間。


ルードとキドの心の声が一致した。


(殴り込みに来たな)

(……正式には、力量確認のご訪問、とのことです)


「さ、案内しろ!」


爽やかな笑顔。


圧。


逃げ場なし。



歩きながら、第二皇子は楽しそうに話し出す。


「ルード、こうしてゆっくり話すのも久しぶりだな!」


「はい……そうですね」


「同い年だろ?そんな固くなるなよ。

一緒に育った仲じゃねぇか」


バシバシと背中を叩かれる。


ルードの表情が静かに死んでいく。


「……お気遣い痛み入ります」


キドは二人の後ろを歩きながら思った。


(このまま自然に消えたら怒られるかな)

(怒られるな)



騎士団訓練場。


「整列!」


号令がかかり、団員達が振り向き――


そして全員、顔色を変えた。


「第二皇子殿下だ」

「しかも皇室騎士団長…」


現場が一瞬で張り詰める。


だが当の本人は、まるで気にしていない。


「最近なまってるだろ?

今日は身体起こしに来た」


にやり、と笑う。


「不敬とか気にすんな。

腕に覚えある奴、遠慮なく来い」


団員達は一斉に目を逸らした。


(嫌だ、関わりたくない)

(皇子が勝つまで終わらないやつだ)


その後ろで――


ロエルが一歩足を引いた。


しかし。


「お――」


皇子の視線が止まる。


「ロエルじゃねぇか」


捕捉された。


「久しぶりだな!」


ロエルは一度目を閉じ、小さく息を吐き――前に出た。


胸に手を当て、礼。


「ご無沙汰しております。第二皇子殿下」


「お前、勘当されたんだってな!」


――空気が止まる。


「ハハハ!面白ぇな!

不穏分子の件の功績、どこ行った?」


笑い声だけが響いた。


団員達が青ざめる。


キド、胃を押さえる。


(地雷踏んだ)

(しかも全力で)


ロエルの目に、静かに冷たい光が宿る。


ルードが慌てて口を挟む。


「殿下――」


だが止まらない。


「そういやルード!

ユアン嬢受け入れたんだって?」


さらに爆弾を投げた。


「性格に難がある女が好みか?

兄貴が婚約決めたら弁論対決させるには丁度いいかもな!」


沈黙。


団員達、完全停止。


(ああ……)

(この人、悪気ゼロだ)


キドは悟った。


(これが皇族か)

(空気を読むという発想が、そもそも存在しない人種だ)


こちらから、新章に入ります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ