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天然皇女と3MENたち  作者: angelcaido
4章 パーティ・ジャンボリー
48/73

第48話 並んで見る景色

この回は、


騎士の真面目な巡回と、

皇女の初乗馬と、

だいたい巻き込まれる団長でお送りします。


責任の所在は、わりと明確です。

公爵家前の広場に、乾いた蹄の音が規則正しく響いた。


城門をくぐってきたのはロエルだった。


巡回路を回り、城周辺の警備や見張りの確認を終えて戻ってきたところだ。


何事もなかったことを物語るように、静かに馬を止める。


近くに控えていた騎士へ短く状況を伝えると、騎士は背筋を伸ばして頷き、そのまま城内へ報告に走っていった。


その一連の動きを、少し離れた場所から見ていたラミアが、控えめに歩み寄る。


「お帰りなさい。」


ロエルはそこでようやく彼女に気付いたように視線を向け、ふっと表情を和らげた。


「ただいま。」


ラミアは馬を見上げ、目を輝かせる。


「大きいですね。」


「軍馬だからね。」


感心したように、しばらく見上げ続けている。


ロエルはその様子を眺め、わずかに口元を緩めた。


「乗ってみる?」


ラミアがぱっと振り返る。


「え…」


「馬、怖い?」


「……乗った事ないです。」


「そっか。じゃあ乗ってみようか。」


「…はい。」


「持ち上げるよ。」


そう言うとロエルは、ラミアの身体を軽々と抱き上げ、そのまま鞍へと乗せた。


驚く間もなく、ラミアの視界が一気に高くなる。


「高いですね…」


「怖い?」


ラミアは小さく首を振り、笑顔で答えた。


「大丈夫です。」


ロエルは後ろから支える形で跨り、ゆっくりと馬を歩かせる。


城の裏手へ向かう道は、石畳から土の道へと変わり、周囲の喧騒も少しずつ遠のいていった。


「…高い所苦手じゃなかったっけ?」


「……今は大丈夫です。」


少しだけ拗ねた声音。


「ごめん、ごめん。意地悪だったな。」


ロエルは笑いながら言った。


馬は一定のリズムで進む。

その揺れは不思議と心地よく、緊張していたラミアの体から少しずつ力が抜けていった。


やがて風が強くなり、視界が開ける。


「……気持ちいいですね。」


「だろ。」


「走ったらもっと気持ちよいのですか?」


ラミアは目を輝かせて尋ねた。


ロエルは小さく笑った。


「……走ってみる? ラミアが大丈夫なら俺は構わないけど。」


「では、少しだけ。」


ラミアはふふ、と小さく笑う。


「わかった。怖かったらすぐ止める。」


ロエルは馬の腹を軽く蹴り、手綱を操りながらゆっくり走り出した。


風が当たる。


ロエルはラミアの様子を確かめながら、少しずつ速度を上げていく。


支える手にも自然と力がこもる。


常に片手で彼女を支え、揺れを吸収するように馬を操っていた。


風の音が耳を抜け、

草がなびき、木々の葉が揺れる。


ラミアはロエルを振り返り、綻ぶような笑顔を見せた。


ロエルもまた、同じように笑って返した。


やがて速度を落とし、ゆっくりと広場へ戻っていく。


――だが。


空気が、明らかに違った。


仁王立ちのキドがいた。


その隣で女官が俯いている。


「ロエル様。」


低い声だった。


「なーに?」


「一体何を考えてるんですか?」


「散歩。」


「殿下を乗せて散歩するな!」


キドは半ば反射的にラミアを降ろそうとする。


「要人乗せた。

落とさなかった。

俺ちゃんと出来るね。任務成功。」


ロエルは飄々と言った。


「任務じゃありません!!」


「成功体験は大事だろ?」


「そういう問題ではありません!!」


その時だった。


「……何をしている。」


重い声が落ちた。


ルードだった。


キドが勢いよく振り向く。


「ルード様!聞いてくださいよ、ロエル様が――」


「キド。」


「はい!」


「お前は、何をしている?」


「……え?」


気付いた。


自分がラミアを抱えたままだった。


静寂。


ラミアがきょとんとしている。


キド、完全停止。


ゆっくり降ろす。


「……これは不可抗力でして。」


「話は執務室で聞こうか。」


それだけ言って、ルードは踵を返す。


キド、連行。


「行ってらっしゃい。」


ロエルが爽やかに手を振った。


キドは振り返り、下の歯を剥き出しにして物凄い形相で睨む。


だが逆らえず、そのまま引きずられていった。


広場に静けさが戻る。


「私、何かいけなかったでしょうか…?」


「全然。」


ロエルは軽くラミアの頭を撫でた。


「いつものことだから。」


遠くからキドの叫び声が聞こえる。


「ロエル様のせいですからね!!」


ロエルは聞こえないふりをした。


沈みかけた夕日が、二人をやわらかく照らしていた。


お読みいただきありがとうございます。

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