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天然皇女と公爵家の問題児たち  作者: angelcaido
4章 パーティ・ジャンボリー
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第47話 皇室騎士団へようこそ

この回は、


合同会議と、 合同訓練。

だいぶ元気な皇子でお送りします。

 重厚な書棚と書類の山に囲まれた、公爵家の執務室。

 窓から差し込む光の中、ルードは一通の書状を手にしていた。


「キド。皇室騎士団から書状が届いているぞ」


「えっ」


「第二皇子が皇室騎士団長に就任したそうだな。

 皇女殿下の外遊の際は、常に合同警備を敷きたい、との要請だ」


「併せて、綿密な調整と合同訓練の招集――だそうだ」


 嫌な予感しかしない。


「……ルード様、一緒に行きません?」


「……嫌だ」


 即答だった。


「何でですか!」


 ほとんど悲鳴に近い声で、キドは食い下がった。


「だいたい、お前が第二皇子に気に入られたのが悪い」


「そんな……!」


「公爵家騎士団は、むしろお前の巻き添えを食らっている」


(胃が痛い……)


 キドは胸を押さえながら、深くため息をついた。



数日後。


 キドは上級騎士たちを引き連れ、皇室騎士団本部へと向かった。


 重厚な石造りの建物。

 歴史と権威、そして圧倒的な存在感が、訪れる者の背筋を自然と正させる。


(……胃が、既に悲鳴を上げている)


「失礼します」


 扉を開けた瞬間。


「おう、来たな!」


 やけに元気な声が響き渡った。


 出迎えたのは、満面の笑みを浮かべた第二皇子。

 その背後には、ずらりと整列する皇室騎士団員たち。


「紹介する」


 第二皇子に促され、一人の騎士が前へ出た。


「初めまして。

 皇室騎士団副団長を務めております、セディです」


 すらりとした均整の取れた体躯。

無表情で、冷静沈着そうな眼差し。


 キドは一瞬だけ目を見張り、すぐに表情を整えた。


「お会い出来て光栄です。

 公爵家騎士団団長、キドと申します」


 差し出した手に、セディは一瞬の逡巡もなく応じた。


(……やはり、女性か)


 視線を巡らせると、他にも数名、女性騎士の姿がある。


(皇室騎士団…… ずいぶん様変わりしたな)


 ふと、疑問が口をついて出た。


「皆さん、お若いですね。

 皇室騎士団には、名門貴族出身で長年在籍されている方々が多かったはずですが……」


「お、気付いたか」


 第二皇子が肩を叩きながら笑った。


「そいつら、全員追い出した」


「……えっ?」


「無駄に家柄だけで居座ってた連中だからな。

 じいさんだらけの騎士団なんて、つまらんだろ?」


 高らかに笑う第二皇子。


(いや、あなたこそ、その無駄な家柄の権化では……)


 キドは必死に口を閉じた。


「でもな」


 第二皇子は振り返り、騎士団員たちを見渡す。


「こいつらは実力だけで残した。

 俺が保証する」


 自信満々なその言葉に、キドは小さく息を呑んだ。


(……いや、色々と大丈夫なのか、この騎士団)



会議室――合同会議。


 公爵家騎士団と皇室騎士団による、護衛体制の協議。


 一通りの報告が終わった後、静かに口を開いたのは、皇室騎士団副団長――セディだった。


「護衛配置は、多層防衛が最適と判断します」


 空気が引き締まる。


「公爵家は対人戦闘と近接防衛に長け、皇室騎士団は索敵・統制・制圧に優れています。

 双方の強みを分断せず、重ねることで、最も隙のない陣形になります」


 理路整然。

 一切の無駄がない。


 キドは静かに頷いた。


「問題ありません。

 その配置で、公爵家は即応可能です」


 数語のやり取りで、即決。


 会議は驚くほど円滑に進んだ。



会議後。


「次は合同訓練だな!

 先に行ってるぞー!」


 第二皇子は、子供のような笑顔で廊下を駆けて行った。


(……生まれながらの対決バカ)


 キドは遠ざかる背中を見送りながら、嫌な予感に胃を押さえた。


「騎士団長殿」


 振り返ると、セディが立っていた。


「セディ卿。

 先程は、迅速かつ合理的な提案、ありがとうございます」


「いえ。

 短時間で即断いただけたこと、こちらこそ感謝いたします」


 淡々とした口調。


 キドは、何となくセディを見つめた。


「……何か?」


(何故、睨む)


「副団長として非常に有能だと感嘆しただけです」


 しかし、セディの視線はさらに鋭くなる。


(なぜ悪化する)


「……それは、私が女だから舐めていた、という意味でしょうか」


「えっ!?

 どうしてそうなるんですか!」


 キドは思わず声を裏返らせた。


「そんなこと、一言も言っていません!」


「……失礼しました」


 セディは目を逸らす。


「……公爵城では、女官や女性使用人も、争いになれば肉弾戦です。」


「……女官や、使用人が?」


 セディの目が、初めて大きく見開かれた。


「はい。騎士が引くレベルで激しいです」


 キドは遠い目で頷く。


「……公爵城で働く女性に、騎士になってもらうのも一案ですね」


「……それを先駆けた第二皇子殿下の改革は、尊敬に値するのかもしれません」


 キドは素直に言った。


 しかし。


 その場にいた皇室騎士たちは、一斉に目を逸らし、遠い虚空を見つめ始めた。


 光の消えた瞳。


 完全なる死んだ目。


「えっ?

 皆さん、どうされました?」


 キドも青くなる。


「……」


 誰一人、答えない。


 沈黙が、不気味に広がる。


(やばい、地雷踏んだ……)


 そして――



地獄の合同訓練が始まった。


 皇室騎士団演舞場に響き渡るのは、第二皇子の高らかな笑い声。


「ははは! もっと来い!」

「いくぞおおおお!!」


 それに混じる、公爵家騎士たちの悲鳴。


「団長ぉぉぉ!!」


「無理です!!」


「これ訓練じゃない!!」


「死ぬ、死にます!!」


 なお。


 皇室騎士たちの声は、一切、聞こえてこなかった。


 ただ、虚ろな目で、無言のまま地獄を見つめていた。



お読みいただきありがとうございます

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