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天然皇女と3MENたち  作者: angelcaido
4章 パーティ・ジャンボリー
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第46話 変人だらけの会議室

この回では、騎士団本部にて事情聴取が行われます。


対象は、中級騎士――ではなく、

主にその原因です。

騎士団本部・会議室。


 中央には、簡素な椅子が一脚だけ置かれていた。

 そこに座らされているのは、ロエルだ。

 姿勢だけは妙に良いが、態度はどこか気楽そのもの。 


 その後方には、完全に被害者である中級騎士が、青ざめた顔で直立している。


 正面には、腕を組んだルード。

 その隣には、眉間に深いしわを刻んだキド。

 さらに壁際には、上級騎士たちが、静かに、しかし確実に胃を痛めながら控えている。


 重苦しい沈黙を破ったのは、ルードだった。


「ロエル。呼ばれた理由は、分かるか?」


 ロエルは首を傾げ、少し考える素振りを見せる。


「んー……馬術訓練で、要人に見立てて中級騎士を後ろに乗せたこと?」


 そして、にこやかに付け加える。


「そんなにダメだった? だってキドが、俺の馬じゃ要人乗せたら吹き飛ぶって言うから」


 その言葉に、キドのこめかみがぴくりと跳ねた。


「確かに、要人が飛んでいっちゃったら困るよね」


 あはは、と朗らかに笑うロエル。


(――笑えない)


 会議室の空気が、静かに、しかし確実に凍りつく。


 キドが一歩前に出た。


「落馬した騎士、無理やり乗せたでしょう!」

「悲鳴上げてましたよ!」


「え? 馬の上のほうが安全だろ?」


 悪びれもせず返すロエル。


「踏まれるかもしれないし」


「比較対象がおかしい!」


 ルードはこめかみを押さえ、低くため息をついた。


「……もう一つは?」


 ロエルは再び考え込む。


「集団模擬戦で、中級騎士を怪我人に見立てたやつ?」


 軽く首を傾げる。


「何か、いけなかった?」


「抱えたまま戦うな!」


 今度はルードが即座に叫んだ。


「え?」


 ロエルは心底不思議そうに目を瞬かせる。


「下級なら良いの? 上級?」


「違う! そういう問題じゃない!」


 ルードは声を張り上げる。


 ロエルは腕を組み、真剣に思案し始めた。


「……んー。じゃあ、埋める?」


 室内の空気が、音を立てて止まった。


「……は?」


 誰ともなく、かすれた声が漏れる。


「俺以上じゃないと倒せないなら、要人も弱い騎士も足手まといだろ?」


 理路整然と語り出すロエル。


「土に潜んで貰う。合理的じゃない?」


 キドの顔色が、見る見るうちに青ざめていく。


「要人を埋めるな!!」


「建物より安全だろ?」


 純粋に疑問を投げかけるロエル。


 ルードは低く唸った。


「……お前は、要人が皇帝陛下でも埋めるつもりか?」


「あー……それはダメだね」


 ロエルはあっさり否定する。


「忘れて置いて帰っちゃったら、笑えない」


(そこじゃない)


 全員の心の声が、完全に一致した。


「じゃあ、敵を埋めるか。

 反撃もされないし、拘束にもなる。

 生かす必要がなければ、そのままでもいいし」


 さらに思案を深める。


「弱い騎士も埋められるだろ?」


 その瞬間。


 ルード、キド、上級騎士、中級騎士――

 会議室にいる全員の背筋を、冷たい何かが一斉に駆け上がった。


 背後で、中級騎士たちが、ひそひそと囁き合う。


「……どうやって教えればいい?」


「剣も馬も完璧なんだよな……」


「戦術も理屈はわかってる。なのに……」


「人格からか?」


「……それ、怒らないか?」


 一瞬の沈黙。


「聞こえるぞ。やめろ」



 ルードは深く息を吸い、重々しく吐いた。


「……お前は、どうして問題ばかり起こす。

 ただでさえ頭が痛いのに……」



「わかった、わかった。持ち上げない。埋めない。――だろ?」


「……」


その場の空気が、完全に停止した。



 ロエルは椅子に深く腰掛け、足首をもう一方の膝に乗せる。

 背もたれに肘を預け、完全にくつろぎ始めた。



「何でだ? ユアン嬢か?」


 キドが即答する。


「ルード様が優柔不断なんですよ」


 上級騎士たちも、無言で小さく頷いた。


「……」


「ルード、振ってやるのも優しさだぞ?」

ロエルも付け加える。


騎士達も無言で頷く。


 ルードの表情が、無言のまま崩れていく。


 彼は観念したように語り始めた。


「ユアン嬢との見合いを勧めてきたのは、皇帝陛下だ。

 断るにしても、まずはご報告しなければならない」


 言葉を区切り、視線を落とす。


「その上で、侯爵家へ正式な書状を送る。

 だが、その前にラミアの教育担当に任命された。

 この状況で断れば、ラミアの教育が滞る可能性もある」


 ルードは、隣の上級騎士に視線を向ける。


「お前なら、どうする?」


 上級騎士は、胸を張って答えた。


「自分はユアン嬢のような妖艶な女性が好みなので、問題ありません!」


「聞いてない!」


 即座に怒鳴るルード。


 隣の上級騎士に向き直る。


「……お前は?」


「自分は、皇女殿下のような可憐な女性が好みです!」


 次の瞬間。


 室内の空気が、凍り付いた。


「……おい」


 ルードの声が、低く響く。


「ラミアを、そんな目で見ているのか?」


 ロエルは、ゆっくり立ち上がり、騎士の前へ歩み寄った。

 その肩に、ぽん、と手を置く。


「俺に、指導してもらってもいいですか?」


 笑顔。

 だが、目は一切笑っていない。


「え……え?」


 騎士は助けを求めるようにルードを見る。


「……許す」


 ルードは、即答した。


「じゃ、行きましょうか」


 ロエルはそのまま、上級騎士を連れて会議室を後にした。


 残された中級騎士たちが、震え声で呟く。


「……怖ぇ」


「怒らせるの、絶対やめようぜ」


 キドは天井を仰ぎ、深く息を吐いた。


(ユアン嬢に困ってるのに断らないルード様。

 自分から婚姻を手放しておいて皇女殿下を気にするロエル様)


 そして、心の底から思う。


(……この城、変人しかいないのか)

お読みいただきありがとうございます。

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