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天然皇女と3MENたち  作者: angelcaido
4章 パーティ・ジャンボリー
42/73

第42話 皇女殿下の平穏な外遊(※護衛付き)

この回では、皇女ラミアの初めての市井視察が行われます。


穏やかな市場見学のはずでしたが、

護衛の規模が少しだけ間違えました。


結果として――

だいぶ物々しいことになります。

ラミアの初の単独での市井視察が、正式に執り行われる運びとなった。


目的は、王都商業区の視察および民意把握。

つまり――簡単に言えば、市場見学である。


もっとも、対象が皇女ともなれば話は別だ。


当日の護衛は、

皇室騎士団並びに公爵家騎士団による合同警備。


公爵家騎士団団長キドを筆頭に、精鋭騎士、上級騎士、そして選抜された中級騎士が揃い、相応の人数が編成されていた。


にもかかわらず。


「……場違いにも程があるだろ……」


キドは、商業区の賑やかな通りを前に、遠い目になった。


屋台、露店、呼び込みの声。

人の波、子供の笑い声。


そこへ、完全武装の騎士団がずらり。


どう見ても――


戦場前夜の布陣である。



「殿下の身の安全を最優先とし、周囲の警戒を徹底せよ。

 不審人物、不審物、すべて即時報告!」


「「「はっ!!」」」


公爵家騎士団も皇室騎士団も、気合は十分。


だがその気合は、明らかに市場の空気と噛み合っていなかった。


そこへ、皇室の馬車が到着する。


御者が扉を開き、優雅に降り立ったのは、ラミア。


「キド様、本日はよろしくお願いいたします。」


「はっ。殿下のご公務に支障が出ないよう、万全を整えております!」


「ふふ、ありがとうございます。」


柔らかな笑顔。


その時――


「ラミア、大丈夫だ。俺が付いている。」


馬上から軽やかに飛び降りた一人の男が、ずかずかと歩み寄ってきた。


皇室騎士団の制服。

そして――


(……は?)


キドは、その顔を見て完全に思考が停止した。


第二皇子殿下。


「お兄様」


「心配するな。敵はすべて俺が薙ぎ倒す。」


「まぁ、心強いですね。」


(戦が始まる前提なのか……?)


キドは白目を剥きそうになる。


「キド様、お兄様は皇室騎士団の団長に就任なさったのです。」


「……は?」


(聞いてない!!)


「ラミアの初公務と聞いてな。

 俺がやるしかねぇと思って、昨日団長になった。」


「昨日!?!?!?」


(任命式は!? 承認は!? そもそも前任者は!?)


頭が追いつかない。


(だいたい、皇室騎士団は納得しているのか?一体どう思って……)


キドは皇室騎士団の方を見た。

……全員、目が死んでいた。


(…心中お察しします。)


「だからお前の出番はないぞ。安心して下がれ。」


「い、いえ……公爵家騎士団としても――」


「近々、皇室騎士団と公爵家騎士団で対決しても面白そうだな。

 公爵家に行くから、いつが平気かルードに聞いておいてくれ。」


「…口を出すなら、対決になるが?」


「……はい、失礼しました。」


(来ないでください。)



こうして、

異様なほど物々しい護衛隊列が完成した。


中央にラミア。

右に第二皇子。

左半歩前にキド。

その周囲を、両騎士団が完全包囲。


商店街を歩くには、どう考えても過剰である。



最初にラミアが足を止めたのは、飴細工の店だった。


「まぁ……これは?」


「飴細工でございます。」


店主は、手際よく鋏を操り、瞬く間に花を形作っていく。


「素晴らしい……芸術ですね。食べてしまうのが惜しいほどです。」


その瞬間。


「刃物を向けたな。」


「……え?」


「ラミアに刃物。謀反の疑いあり。」


「ちょっ――殿下!!」


「冗談だ。」


(いや冗談に聞こえません!!)


「だが鋏は使うな。手でやれ。」


「……手、ですか?」


「そうだ。」


店主は震えながら、素手で細工を始めた。


「まぁ、手でも見事ですわ。」


ラミアはにっこり。


「では、こちらを……」


差し出された飴を見て、第二皇子が即座に割り込む。


「その手で触れた物を、ラミアに?」


「……っ!」


「毒殺か?」


「違います!!」


「なら謀反だ。」


「どちらも違います!!!」


(誰か止めろ!!!)



その後も、


若い男性店員がいれば、

「不敬だ。」


女性店主が近づけば、

「反逆か。」


子供がはしゃげば、

「攪乱行為。」


――最終的には、剣に手が掛かる始末。


ついにキドの理性が限界を迎えた。


「いい加減にしてください!!」


通りが静まり返る。


「これは、殿下の大切なご公務です!

 皆、殿下を喜ばせようと真心を尽くしてくださっている!


 それをどうして――!」


一瞬の沈黙。


商人たちは感動し、目を潤ませる。


騎士団は――

(あ、終わった。)

という顔をした。


「……お前、身分は?」


「……騎士爵です。」


「年齢は?」


「……22、いえ、23で……」


言い直しは、一歳分の見栄だった。


「俺より年下か。」


(死ぬ。)


第二皇子が歩み寄る。


キドは目を閉じ、震える。


そして――


肩に、ぽん。


「気に入った。」


「……え?」


「俺に意見してくる奴なんて久しぶりだ。根性あるな。」


(生きてる……?)


「これからも合同警備でいこう。

 俺の暴走を止める役が必要だ。」


皇室騎士団の目が一斉に輝いた。


(救世主だ……)


公爵家騎士団は、引きつった笑顔で頷いた。



こうして。


皇女ラミアの市井視察初日は、


大混乱と苦笑と胃痛に包まれながら、幕を閉じた。


成年皇族としての独り立ちは、無事成功。


だが同時に――


第二皇子殿下という、最大級の厄介事を抱え込む結果となったのであった。


お読みいただきありがとうございます。

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