12話
日は傾き、身支度を整え馬車に売られて王城に入る。
多くの貴族がパーティーに参加しており、誰もが煌びやかな服に身を包む。
その中でも、人目を引くのが高位貴族たち。
「見て、ソルネチア家の方達だわ」
「おや、ユリウス様は参加されてないのか」
「なのに、婚約者のセレーネ様は参加されているなんて……やはり、ルキウス様とも関係をお持ちだという噂は本当なのかもしれないわね」
「アニエス様もいらっしゃらないし、もしや公爵様とも?」
コソコソと周りの貴族たちがあらぬ噂を口にしているが、3人は特に気にした様子もなく、他の貴族たちに挨拶をして回る。
ソルネチアの顔色を伺うように挨拶をするものもいれば、下心を隠すこともなく近づいてくるもの、いまだにセレーネを卑下する者もいたりするが、そこはリュシュリシュが上手くフォローというよりもおどしの近い言葉で相手を叩きのめしていった。
ルキウスもセレーネも、まだまだリュシュリシュには叶わないなと思いながら、黙って入るタイミングを待っていた。
他の三大公爵家の者も参加していたが、エトワール公爵とだけはどこかぎこちなく、気まずい気持ちがあった。
「セレーネ」
その途中、セレーネの父であるリュカードと兄であるレオンが声をかけてきた。
今回のパーティーには2人だけで参加しており、エフィニアは子供のそばに居たいからと今回は欠席をしているそうだ。
「ドレス、よく似合っているぞ」
「ありがとうございます」
「久しいな、伯爵」
セレーネが家族と話してるのに気づき、リュシュリシュとルキウスが2人に挨拶をする。
セレーネの家族とリュシュリシュたちが顔を合わせるのは婚約パーティー以来久しぶりだった。
年齢はセレーネの父のうほいが上だが、身分はリュシュリシュの方が上。特にリュカードとレオンは権力欲が強いわけではないので、自然に会話をし、話内容は主にセレーネのことについてだった。
「それで公爵。今回のファータの第三王女の訪問ですが、やはり噂通り……」
「あぁそうだな。恐らく……」
その時、陛下と殿下が姿を現し、同時に見覚えのない女性が姿を現した。
ピンクがかった白髪に、毛先が肩につくかつかないかぐらいのふわりとした髪に、甘いイチゴを嵌め込んだような赤い瞳の華奢な女性。
「みな、今日は集まってくれて感謝する。この場にいるほとんどのものが耳にしているが、現在我が国に来客が訪問しておる。紹介しよう」
女性は一歩前に踏み出し、少しぎこちないカーテシを披露する。
姿は初めて見る。しかし、彼女が誰かは一目瞭然だった。
現在我が国に訪問している、隣国【ファータ】の第三王女。
《フラーグム=トリア=ファータ》
◇ ◇ ◇
第三王女、フラーグムは陛下と殿下と共に挨拶回りを行っている。
貴族たちも彼女に挨拶をするが、彼女は俯きながらか細い声で返事を返していた。
その様子をセレーネは遠くから見つめていた。
彼女のあの態度は仕方がないなと思っていた。人前に姿を現さなかったということは、同然こういう場に参加したこともない。だというのに、急に城を、国を出て、他国で顔も知らない多くの人の前に姿を現すことになった。ある意味では見せ物にされているようで気分がいいものではないだろう。
ひどく怯えているのか、体は僅かに震えて顔色も悪い。そろそろ限界だなと思い、セレーネはルキウスとリュシュリシュに声をかけて3人に近づいてくる。
「おぉーセレーネ。ルキウスに公爵も」
3人に気づいた陛下が彼女たちに声をかけてき、3人もそれに応えるように挨拶をする。
チラリと王女に視線を向ければ、目が合った瞬間に顔をうつむかれてしまった。
セレーネは、ヒールを何度か鳴らす。すると、先ほどまで騒がしかった会場が一気に静寂に包まれた。
なんだなんだと陛下や殿下、ルキウスやリュシュリシュたちも戸惑っていた。
皆楽しそうに話をしているのに、全く声が聞こえない。
「遮音魔法です。私たちの以外の声は聞こえませんし、周りにも聞こえません」
「さすがだなぁ……」
「陛下。王女様の顔色が良くありません。幻影魔法を使用しますので、一旦場所を移しましょう」
戸惑っているのは王女も同じだった。
何が何だかわからない彼女はただただ当たりをキョロキョロするばかりだった。
陛下と殿下はお互いに顔を見合わせた後、小さく頷き、それを確認すると魔法を使用してその場から移動する。
会場には再び人々の声が響き渡り、変わらぬ光景が広がる。
しかしその場にいる約5名だけは幻覚であり、本人たちではない。




