10話
数日後、ソルネチア家にマダムシャーリーがやってきて、いくつかのセレーネ専用のドレスを持ち込んできた。
あの日以来、時々セレーネ専用のドレスの制作を彼女独自に行っており、今回お披露目できる機会があって大いに喜んでいた。
「今回はユリウスは同行しないけれど、ソルネチア家全員のデザインは統一させたいの。できれば、モチーフが同じとか」
「なるほど……色はいかがなさいますか?」
「そうね……ルキウスはこの色で、主人は……」
ドレスは主にアニエス主体で行われている。セレーネは言われた通りにドレスを着るだけ。彼女にとって、この着せ替えの時間だけが人生で1番嫌いな時間だ。
第三王女がこの国に訪れるまで残り数日。1から作るのは時間的に難しいとのことで、元々あるドレスに手を加える形になり、最終的なデザインができたのちにドレスなどを送ると、マダムシャーリーは屋敷を後にした。
「はぁ……」
「ふふっ、お疲れ様」
その後は、セレーネとアニエスは2人一緒にお茶をしていた。
のんびりと2人でお茶をするのはずいぶん久しぶりで、色々と話が盛り上がり、尽きることはない。
「そういえばふと思ったのですが」
「どうかしたの?」
「例の第三王女様ですが、結婚相手の可能性にロサ家の双子は含まれないのですか?」
婚約者がいない相手といえば、クローディアの弟であるロサ家の双子も同様だ。
姉であるクローディアが王妃となれば、必然的に双子のどちらかが公爵家を継ぐことになる。つまり、立場的にはあの2人もルキウスと同じで婚約者候補のはずだ。年齢を考えれば、双子の方が歳も近い。
「あら、セレーネはまだ知らないの?」
「え?」
「ロサ家の双子はすでに、ケイシーが選んだ婚約者がいるのよ。どちらのご令嬢も魔法の才能がある方でね」
「そうだったのですか?」
初耳だと口にするセレーネ。最近は、昔に比べて世間のことにも目や耳を傾けてはいたが、まだまだ足りないなと思ってしまった。
しかし、一度彼らとは会ったことが、ずいぶんクセのある人物だった。婚約者苦となったご令嬢たちは大丈夫だろうかとセレーネが心配になっていた。
「もしかして、教育は……」
「ケイシーが行うそうよ」
「そうですよね……」
ケイシーならそうするだろうと思っていたセレーネ。だが、なんとなく令嬢たちが耐えきれずに泣いている姿がひどく目に浮かぶ。根は優しい方だが、表情や態度、言動によってかなり厳しい人物の印象が強い。ご令嬢たちは公爵家の令息の婚約者になれて嬉しいかもしれないが、ケイシーからの教育を受け始めて、きっと後悔するだろう。
「結婚、ですか」
「………不安?」
ぽつりと溢れた言葉に、アニエスが尋ねる。
咄嗟に自身の口を隠すようにするが、すぐにそのまま俯く。
不安などはなかった。むしろ嬉しくてたまらなかった。
多くの夫婦を目にし、そして子ができる瞬間にも立ち会った。結婚すること、子を授かること。それがどれだけ嬉しくて幸せなことなのか。
「私は、ユリウス様にもらってばかりです」
「……きっと、ユリウスも同じことを思ってるわよ」
「そうですね。ユリウス様でしたら、きっと僕の方がもらってばかりだって言いそうです」
「ふふ、そうね。だからそんなに不安にならなくていいわ。1人ではないのだから、不安なときは夫婦で一緒に考えるといいわよ」
「……そうですね。ありがとうございます」
それから少しお話を続け、お茶会はお開きとなった。
そして数日後、ファータの第三王女が王城が入国したという知らせが高位貴族たちに届けられた。




