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宝石令嬢と白蛇公爵  作者: 暁紅桜
II章:《宝石箱》
80/90

5話

「初めまして、セレーネ様」


神殿に出向いて数日後。

特に何か大きな事件などは起きず、穏やかな日々が続いている。

教会側は特に王宮やソルネチア家に抗議をする様子もなく、誘拐も以降起きることはなかった。

そんな穏やかな日々の中で開催された、公爵夫人のお茶会。

セレーネはもちろん。今回のお茶会には、クローディアも参加していた。ピンと伸びた背筋に美しい立ち居振る舞い。2人の関係は初めて会った時よりも親密にはなったが、セレーネにとってクローディアは尊敬すべき女性だった。


「エトワール家長女、シシリー=エトワールです」


そしてもう1人。エトワール家の長女。セレーネにとっては因縁深い、メルフィーの姉である、シシリーもお茶会に参加した。

シシリー=エトワールは、女性初の王国騎士団の団長の座についた、女性でありながら剣術の才能に恵まれた人物。

現在は、エトワール家とも親交の深い伯爵家に嫁いでおり、今回はたまたま時間があったため、母親であるアナスタシアが誘い参加した。


「お初にお目にかかります、シシリー様」

「君のことは聞いてるよ。魔法の才能に恵まれていると。よければ、セレーネと呼んでもいいだろうか」

「もちろんです」


夫人たちとは違うテーブルを囲んでお茶をする3人。

紅茶の話やお菓子の話、ドレスの話などの話でクローディアとシシリーは盛り上がっているが、残念ながら魔法にしか興味のないセレーネはなんの話をしているかよくわかってない。だけど、必死に知ろうという姿勢は見せていた。


「そういえば、セレーネ。貴女、ユリウス様とそろそろ結婚するのでしょう」

「あ、はい」

「おぉ、それはめでたいね。結婚はいいものだよ。初夜なんて旦那は……」


過去のことを思い出すように、特に聞いてもいないがシシリーが話し出す。

困惑するセレーネにクローディアが耳打ちをし、彼女が旦那を溺愛していることを聞いた。

騎士となった影響か、シシリーは令嬢としての立ち居振る舞いが完璧な上に、令息としての立ち居振る舞いも完璧で、女性人気も高かった。そんな彼女が愛してやまないのが今の旦那様。かっこいいというよりは、可愛らしい方で、そんな彼をシシリーは溺愛していた。


「ドレスは決まったの?」

「奥様がいくつかデザインを考えてくださると。私はその中から好きなものを選ぶことになります」

「いいデザインがあるといいわね」

「はい。ただ、一つだけ不安が」

「不安?それはなんだい?」

「実は先日、教会と一悶着ありまして。なので……」

「あぁ、上位貴族は神殿で申請と儀式が必要だったね」

「はい」


申請は、神の使いである神官または教皇が2人の愛を認めたという証。

儀式は、女神からこれから共に生きていく2人への祝福を与えるためのもの。

上位貴族の結婚は、特に国のための結婚を行うことが多い。そのため、簡単には離婚ができないように多くの手続や制約を酷く絡み合う。

しかし、神殿が独立国家のように振る舞っているのは最近の話ではないもう1世紀以上前から、教会とお受けの関係は今のようになっている。そのため、神殿を解さずに結婚できる方法も存在している。


「だから、そんなに心配する必要はないと思うよ」

「はい。アルヴィス殿下にも言われました。しかし……」

「神殿は、盲目的にセレーネへの盲信がすごいらく。彼女もそれを懸念しているのでしょう」

「……【アレキサンドライトの寵愛者】だったかな」

「おやめください。恥ずかしいので」

「確かに、セレーネは双子の女神の色を持って生まれた。神殿としても、長年信仰してきた女神の色を持つ子……それが宝石眼ともなれば、盲信的にもなる」


実際に見たセレーネからしたら、あれは異常だった。

セレーネに対してもユリウスに対しても。だから、神殿がこのまま大人しくしているわけがない。セレーネは確信していた。彼らは自分たちの結婚を認めていない。必ずどこかでその結婚を邪魔しようとしてくるだろうと。


「そんなに心配であれば、私が剣術を教えてあげようじゃないか」

「あら、お忘れですか?私のお兄様は、殿下の護衛騎士ですよ?」

「ふむ。サイラスだな。確かに、彼は剣術の腕がいい。私も、手合わせしたいものだ」


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