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宝石令嬢と白蛇公爵  作者: 暁紅桜
II章:《宝石箱》
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4話

教皇は勢いよくユリウスの手を振り払い、彼に軽蔑の目を向ける。

その目は、ここに来るまでに神官やシスター、信者たちに向けられたものと同じものだった。


「穢らわしい……邪悪な獣に汚された人間が、私によくも触れたな……」

「邪悪な獣って……」

「呪いか……」

「穢らわしい穢らわしい穢らわしい……そのお方はお前のような存在と一緒にいて言い方ではない!そのお方は【女神の子】。双子の女神の寵愛を受けた、神の子なのだ!!」


神殿がユリウスを嫌う理由を理解した。

呪いによって白蛇の姿になった彼を神殿側は魔物と同一視している。

汚れた、悪しき存在。


「女神の子であるセレーネ様は聖女として神殿で暮らされる。結婚はせず、したとしても、相手は神かそれに近しい存在……お前のような穢らわしい存在ではない」

「好き勝手言いやがって……誰と結婚しようとセレーネの勝手だろ」

「いいえ、セレーネ様は女神の子。人間ではなく、神と同じ存在なのです。そんなに結婚したいのであれば、神の代弁者である私や、神官たちの中からお相手をお選びください」


教皇がセレーネに手を伸ばす。だが、それをユリウスが払いのけ、グッと彼女を抱き寄せる。その行動に教皇も、そして周りにいる神官たちも眉を寄せて殺気を放つ。


「どちらにしろ、あなた方が結婚することはできません。上位貴族の結婚は教会で申請と儀式を行う必要があります。我々があなた方にそれを行うことはありません」


教皇の言葉に神官たちが同意し、祈りの場に罵声が響き渡る。それはあまりにもこの場にふさわしくない言葉ばかり。だが、彼らはその言葉は女神の言葉だと、神のご意志だと、なんの悪びれもなく正当化する。

周りの雰囲気に、さすがのサイラスやアルヴィル、ユリウスも動揺する。


「口を閉じなさい」


体を駆け抜けるような、ひどくゾッとする気配に、一瞬でその場が静かになる。

その気配の先に視線を向ければ、さっきまで黙っていたセレーネがゆっくりと顔を上げて教皇を見る。

目が合い、教皇はひどく嬉しそうに笑みをこぼすが、そんな彼に向かって、彼女は手にしていた聖女服を床に落として踏みつける。


「セレーネ様?」

「よくも……ユリウス様を穢らわしいといったわね」

「………」

「よくも……ユリウス様に罵声を浴びせたわね……」

「セレーネ様。正気を取り戻してください。貴女様は……」

「黙れ!」


セレーネの言葉と共に、その場に高濃度の魔力が漂った。

耐性がないものはそのまま気を失い、耐性があるものも気分が悪くなってその場に膝をつく。教皇はなんとか耐えているが、片膝をつくのがやっとだった。

怒りを露わにしたセレーネは、そのまま膝をつく教皇を見下ろす。それはひどく冷たく、感じる気配は人のそれではない。


「次、ユリウス様にあんな言葉を投げ掛ければ、タダじゃおかないわ」

「……あぁなんてお可哀想な、セレーネ様」


苦しげに顔を歪ませながらも、教皇は変わらず盲信する。

セレーネはユリウスに洗脳されている。だから彼を庇うのだと。

可哀想、可哀想、可哀想。

哀れみ悲しむ教皇は、セレーネに手を差し伸べる。自分たちが助けてあげると、あれから守ると。

当然その手をセレーネが取ることはない。その代わりに、セレーネは教皇の頬を叩いた。


「殿下……」

「……なんだ」

「神殿で申請と儀式を行わなくても、結婚できる方法ってありますか?」

「……もちろんだ」

「わかりました。では、帰りましょう。聞きたいことも聞けましたし」


本来の目的は、神殿が誘拐事件の犯人か調べるものだった。

それに対して彼らは肯定した。なら、これ以上ここにいる必要はない。


「お、お待ちください……セレーネ様」


振り返ることもなく、セレーネたちはその場を後にした………


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