9-12話 作戦会議
「いやー。一撃かぁ。これ、クリアまで行けると思う?」
「装備最低限だったからなぁ。フル装備ならある程度は耐えられると思うな」
「やられると一日行動できなくなるから……やられないために。ヘイトコントロールをどうするかよね」
ルームに皆で集まり作戦会議。
大きな机を購入し。全員で囲む。
とはいえ、一撃死では大した情報もなし。
大した案も出てこず唸っていると、不意にミミが声を挙げる。
「あー。攻略掲示板に結構書き込んでる人出てきてるよ」
「おっ? 本当だ」
ミミがモニターを覗きながら言ってくる。
俺もそれをひょいと後ろから覗き込む。
確かに結構な人数が書き込み始めていた。
「なになに……あ、『基本遠距離範囲攻撃。ただし攻撃間隔は長い』」
「『固まらないように注意して攻撃を加えた方がいいかも?』」
「『攻撃力高すぎ! 無理!』」
「『当たらなければどうという事はない』」
なるほどなぁ。やっぱり皆、攻撃力の高さに苦戦しているか。
ただ対応するためのヒントはありそうだった。
それは皆も同じだったようで、バーゼスさんがマリオの方に視線を向ける。
「ねぇ。マリオはどう思う?」
「そうだな。今回は各自ばらけて遠距離攻撃だな。やっぱりそれが一番効率が良いだろう」
「ま、そうなるよね。で、一発当てたらすぐに逃げる。これでちまちまやる感じかな?」
「攻撃まで時間がかかりそうだし、その間に逃げられればいいか」
バーゼスさんとマリオの話は確かにそう思える。
ただ、なにせあの攻撃力の高さだ。当然事故は起こるだろう。
「後は装備を回収する人を作っておく必要があるな。事故は起こる」
「そうはそうね。……そうなると遠距離攻撃ができない人が対応する事になるかな?」
「なら私とミミがその役ね」
「りょーかい!」
イルミの言葉にクロさんとミミが反応する。
その二人にイルミは頷きながらも申し訳なさそうに謝る。
「ごめんね。今回つまらない役になっちゃうけど」
「いえ、これも重要な役ですよ。装備ロストはきついですから」
「それに多分、これは前半戦だからね。全員参加できないようなイベントじゃないはずよ」
クロさんとミミは笑いながら答える。
皆の戦意もかなり高まっているようで、こちらとしても気合が入る。
「それじゃ、方針決定だな。バーゼスさん主力で、俺、イルミ、マリオでヘイトコントロール役。それで各個遠距離攻撃。ミミとクロさんは待機しつつ補助」
「オッケー」
「それでいこう」
「決まりね」
それぞれが頷く。こうやって気持ちが乗ってきたのが良いが、明日になるまでインができないわけで。
そう思っていたのは皆も同じ。真っ先にイルミが聞いてくる。
「それじゃ、インできるまでどうしようか?」
「ふっふっふ。こんなこともあろうかと! 今日は新しいゲームを手に入れたのよ!」
そう言ってバーゼスさんは手元にあるパッケージを見せる。
デフォルメされたキャラクターに鉄道の絵。これは……
「そ、それは、伝説の人間関係破壊ゲーム!」
「そう。国内を鉄道で回って物件を買い漁って競うゲーム。その最新版よ。……みんなでやんない?」
「全員負けるたびに進める訳か……ありだな!」
「私、このゲーム結構得意だよ?」
あっさりプレイすることが決まる。
ゲーム用のスクリーンにセットし、全員で遊ぶことになったのだった。
「いや~! 貧乏神が変身した~! あ~! 物件が~!」
「クックック。ミミよ。トップに立った貴公の愚を知るがいい!」
「イルミちゃん。テンションがいつもと違うよー」
『お、皆集合しておるのう』
皆で遊んでいる間、ミリンが戻ってくる。
いつもの調子だが、なんというか達成感があるのか声が若干高くなっている気がする。
……あのイベントの前口上はミリンが務めてたな。だからか。
「あ疲れ、ミリン。なんか大役任されてたみたいだけど」
『こういう役は私がやると決まっていたからのう。とは言えある程度やったら後輩にも振るつもりじゃが』
笑いながら話すミリン。
はー。なるほどなぁ、と思いながら、そういえばと思ったことを聞いてみる。
「そういや、あの時もなんか古いとか言ってたな。なんかあるのか?」
『初めての大規模イベントじゃからのう。一応特別感だした方がいいと思ったのじゃ。
ちなみに運営が直接作ったAIは8体。そのパターンからブレンドされて新しいAIを作っているのじゃよ』
「へー。単純コピーじゃないんだな」
『プレイヤー1人1人に特別感を出すためとか運営は言っていたのじゃ。
ある意味じゃ、2人3脚でゲームしているわけじゃしな。運営のこだわりポイントの一つなのじゃ』
「なるほどなぁ。そういや、こないだの二人も全然違ったもんな」
『そういう事じゃ。ま、私は一番古くから稼働しているから知識の蓄積と最適化では一番を自負しておるよ』
そう言って薄い胸を張って偉そうにふんぞり返る。
ナビAIは確かにゲームにおいては重要な位置だもんな。
偉いかどうかは言及避けるが。
「それはどうでもいいけど、実際皆イベント参加しているか?」
『攻撃力が高すぎて、参加する人間減りそうでのう。クリアできるか微妙なのじゃ』
「設定ミスってるだろそれ」
『こちらで設定できるわけじゃないからのう。あれも自然発生じゃよ』
「バランス崩壊しそうだな。それ」
『そこが怖い所じゃ。何とか成功して欲しいのじゃがのう』
ミリンは軽く言っているが、その目は真剣そのもの。
実際、イベントの成否はそのゲームの成否にも関わる訳で。
「……何とか頑張ってみるよ。フォローは頼むな」
『わかったのじゃ。できる範囲の権限でフォローするのじゃ』
ガッツポーズと共に話すミリンに俺は頷きを返す。
そして俺たちの会話が終わるのを待っていたかのようにイルミがこちらに声を掛けてくる。
「あ、ヨキ! ヨキの番よ!」
「わかった。……っておい! 俺に貧乏神なすりつけてるじゃないか!」
「……てへっ」
「ミミ……可愛く行ってもダメだからな。新幹線カードだ! お返しするぞ!」
「やーめーてー!」
さて、次に入れるまではこっちで遊ぶか。
俺たちが入るまでにイベントの方はどんな戦況になっているかな。




