9-11話 イベントボスとの初戦
ヨキ:全員拠点に集合できるか?
イルミ:もう向かってる! っていうか急になんなの!?
クローディア:巨大な結界に包まれたわね。これ街全体?
ヨキ:魔女さんの魔術だ。これが6竜討伐の結果だな。
マリオ:討伐失敗で街崩壊はこれの事か。
ミミ:さっきから何発も攻撃してるし!
チャットで会話しながら全速力で拠点に移動する。
今回のレイドイベントの最後を飾る戦闘・嫌でも気合が入る。
周囲の道には同じように走り出している冒険者と、避難を始めたNPCでごった返している。
しかしそこそこ騒ぎは起きてはいるが、思ったよりは大きくない。
こういう事に街の人たちは慣れているんだろうか。
そんな事をちらりと考えながら、拠点に入る。
そこにはすでに全員揃っていた。
「ヨキが一番最後よ」
「悪い、イルミ」
イルミに軽く詫び、テーブルを囲む。
さて、作戦会議をしようという所で運営からのお知らせが飛び込んできた。
「このタイミングで運営からのお知らせ?」
クローディアさんの疑問の声。
それは俺も同じ。軽く頷きながら全体公開で再生する。
テープル上で再生された映像にはゴスロリ服を纏った俺が良く見る姿――ミリンが立っていた。
何やら眼鏡をしつつ表示板を動かしている。
その中のナビAIは録画を確認したのか、口を開いた。
『プレイヤー諸君。私はナビゲーターAI。ミリンじゃ。以後よろしく頼むのじゃ。
今回はナビAIのなかでも最も古いAIである私より全員に連絡なのじゃ。
さて今回のレイドイベント、”強襲ラグナロク”も終盤に差しかかっておるのじゃ。
大型イベントの最終盤、特殊ルールを採用することになったので、今からそれを説明するのじゃ』
なんか偉そうなことを言っているな。……なんか変な前口上が付いているが、ナビAIの中でも古い型なのか。
いや、俺が初めてINしている以上、彼女が一番古いAIなのは当たり前かもな。
映像の中で、彼女の口上は続く。
『今回のボス”ラグナロクは”ゲーム内時間2週間……リアルでは2日で倒すことが目標になるのじゃ。
それ以上の日数が経過すると、街を護る結界が消滅し、街に被害で及ぶことになるのじゃ』
明確にタイムリミットあるタイプか。しかも失敗の際は大きなペナルティが付くことになる。
『まあ、6竜を倒しているので崩壊まではいかぬがな。
しかし、完全勝利のためには期日以内に倒すことじゃ。
そして今回の特ベルルールについてじゃ。ラグナロクに対しては全ての時間のダメージが合計されることになる』
……?
なんとなく意味が分かるようでわからない。
『各プレイヤーの攻撃すべてが”ラグナロク”に対しては反映されるという事じゃ』
うーん、わからないな……と思っているとそれを察したのかイルミが口を挟む。
「なるほどね……プレイヤーがINする時間はばらばらだからね。通常のメンテでは状況を取捨選択されて次の日に反映されてるでしょ?」
「あ、そうだな。誰かが死んでも。他のプレイヤーの時間で生きてたら次のメンテ後には生きている処理されてるよな」
「そうそう。そういった取捨選択がボスに対してはされないで、殴った分だけ全部ダメージになるって事よ」
「……あー。そうか。"ラグナロク"にとっては大雑把に言ってゲーム内時間2週間×23時間分殴られるって事か」
「そういう事。それだけ強い設定になっているって事ね」
「なるほどな。本当に全プレイヤーで殴るレイドイベントなんだな」
会話の中、ミリンが画面に向かってピッと指を突き付ける。
『さあ、皆、頑張るのじゃ! レストアの街を護るのは君たちじゃぞ!』
そう言って、ミリンの映像は終わる。
しばらくして、ミミが呟くように言う。
「なんか、今回やたらと運営が気合入っているね」
「初めての大型イベントだからかな?」
「そうかもな。ここでつまらない烙印押されたら過疎るの目に見えるものね」
俺たちは頷きながら、さて、となった。
「じゃあどうする?」
「……まだ何も情報ないし、取りあえず最低限の装備だけ持って戦ってみない? 貴重な装備のロストは怖いし」
「そうだなぁ。そうするか」
「隊列は?」
「とりあえずいつもので」
まずは方針が決まり、全員固まって向かう。
結界を抜け、”ラグナロク”へ向かう。
道中、いくつもの光線がレストアの街に向かい、結界に阻まれる。
おかげて位置は容易に把握できた。
そして……それが見えた。
その形は漆黒の竜。しかしサイズが巨大だった。
まだまだ遠いのにも関わらず、形がはっきり見える程。
「流石イベントボスだけあるなぁ」
「近接攻撃は届きませんわね。まずは魔術での攻撃が主軸になるでしょうか」
「わかったわ。魔術使える人は一斉に使う。ヘイトが向かうだろうからミミとクローディアさんで挑発して」
「了解!」
それぞれがそう言い、役割を果たす。
バーゼスさんを中心とした魔術による一斉掃射。
それは狙い過たず、ボスに命中する。
……しかし。
「当然だけど全く効いてなさそうね」
「全員で行うイベントボスだから当然だよな。まあダメージは蓄積されるだろうし」
「あ、敵に動きあるよ!」
……そして、それは初めてこちらを見る。
一瞬、視界が歪み、ノイズが走る。
「―――っ!」
エラーログはなし。つまりこれは演出か?
「今、ノイズが……? またバグ?」
「いえ、これは演出ですわ。プレイヤーによってこの世界の未来が変わる分岐点に来た時、特殊演出になるようですわね」
イルミの言葉にバーゼスさんが答える。
なるほど、そういう事か。それだけ重要イベントなのだろう。
目の前の敵はこちらを明確に認めている。それも排除するべき敵として。
「あ、やばい、こっちに狙いつけてる」
「全員防御!」
バーゼスさんと、マリオで防御結界を構成。
同時にボスの咆哮が来た。
そして、次の瞬間。
「……あー一撃か」
見慣れたルームに戻った俺は一つため息を吐く。
攻撃力はバカ高い。長期間戦うならきちんとした装備が必要。
後は、少なくとも一撃は攻撃できるという事か。
そんなことを思いつつ。俺のルームに集まるであろう皆を待つことにした。




