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8-9話 決闘を行いました

フィールド内に入ると、PvPの表示が現れる。

これによって、プレイヤー同士での対戦が可能になるという事らしい。

勝敗判定は、寸止めとなっている。恐らく死亡まではいかない設定という事だろう。

これなら安心して戦える。

武器は今の所ミスリル製の剣を装備。そして静かに相手を見た。


……この場合俺の方が若干不利、かな。

相手は配信を見ているから俺のスキルやプレイスタイルを知っている事になる。

対して俺は彼の事を知らない。よほど実力差がない限り、この差は大きいと言える。

少しでも情報を得ようと構えながらも相手を見ていると、彼は特に構えをせずに言葉だけを向けてくる。


「ああ、そうだ。ヨキ君。ついでだから一つ賭けをしないか?」

「賭け?」


俺は怪訝に思いながらも彼に聞き返す。


「いや、僕、実はイルミちゃんのファンでね。僕が勝ったらサイン貰ってもいいかな?」

「……それは本人に聞いて欲しいけどな。むしろわざわざ賭けなくても喜んで書くと思うが」


俺に全く関係ない事だった。それは俺の方でどうにかできるわけではないことだ。

しかし俺の返答に彼は頷く。


「うーん。そうか。一応彼氏に了解はとっとく必要があると思ったんだが」

「……大いなる誤解が生じている気がするな。それ」


残念ながら俺はイルミの親友であって彼氏ではない。

俺の否定の言葉にイメルダは笑って言う。


「まあこの界隈。本人達の認識とは別に、勝手に回りでカップリングさせててぇてぇって言ってるだけだからな」

「……あーなるほど」


そういえばそういう事もよく起こってる。

Vの方もそういうのを利用して、コラボとかやってるよな。

大抵の人はそのことをわかっていて乗っている。

あくまでエンターテイメントとしての関係性と言う事だ。

しかしイメルダは肩を竦めると、嘆息したように言ってくる。


「本当にカップルでも俺は構わないと思ってるが、絶体許せないとな思うような奴も一部いるんだよな。カップリング派としてあまり過激にならないでくれと切に思うよ」

「ああ、そういう人もいますよね。それだけのめり込んでいるという事なんでしょうけど」

「まあ金払いがいい奴も多いからなそういう層も。仕事としている人は反転させないようバランス取りで大変だろうなー」

「まあアイドル崇拝みたいな物でしょうから」

「昔からそういうのって変わらないよな」


ハハハっと笑いながら、彼はようやく構える。

恐らく突き主体に見える、やや前傾姿勢の構え。


「それじゃ、サインの件は本人に聞くとして、始めようか」

「よろしくお願いします」


言葉が終わった瞬間、彼の姿が掻き消える。

認識は一切不能。俺は何も考えず勘のみで剣を横なぎに払う。


金属が衝突する音が響き、勘が当たったことがわかる。

攻性防御のスキルの補助により、相手の攻撃を完全にしのぎ切った。


同時、魔術を発動。使い慣れた闇の腕を振り上げる。

しかし、イメルダも予測していたのかすでに回避行動に入っている。

俺の攻撃は相手にかすりもせず、刹那の攻防が終わる。


……いや、終わらない。

瞬間、イメルダの顔が至近に現れる。

速度を利用した強烈なタックルをもろに食らい、俺は仰向けに地面に転がる。

この姿勢はどう考えても危険だった。


刹那の判断。闇の腕の横殴りに振りながら体を強制的に持ち上げる。

同時、闇の腕を消去し投げナイフに持ち替え数本同時に投げる。


魔術による攻撃に気を取られたイメルダの肩口にナイフが命中。

鎧に弾かれるが、それは予測済み。

俺は態勢を整えることを優先する。

一旦距離を取りなおし、再び構える。


「……しまったな。これで終わらせる予定だったのにな」


イメルダのボヤキのような言葉に俺は口の端を上げた。


「運が良かっただけですよ」


実際運が良かっただけだった。恐らく彼は速さに関係するレアスキル持ち。

初撃を防げなければ、それで終わりの可能性が高かった。

そして彼は俺の動きをかなりの精度で理解している。

状況は俺にとってかなり不利であることを裏付けられる結果となった。


動かない俺に対し不審に思ったのか、相手は一瞬躊躇していたが再び姿が掻き消える。

俺は一歩足を踏み出し、円を描くように回転斬り。

今度は背後だった面において衝撃が走る。


そこにはイメルダの剣と俺の剣がぶつかり、火花が散っている状況があった。


――やっぱり直進だけじゃないか


相手の行動力の高さに舌打ちをしながら力任せに押しのける。

彼はその力に逆らわずに後方に着地した。


うん、これは正攻法じゃ勝てないな。

あっさりそう判断し、さて、ではどうするかと考える。

……正攻法で勝てないなら、からめ手で行くしかないか。

そして俺は剣の切っ先を下げ、あえて彼に宣言する。


「仕方ない。苦手な方向で行こう」

「お、なんか思いついたかな」

「余りやりたくはないんだけどね」


相手の反応を待たず、俺は魔術の行使を行う。

足元に魔方陣が展開され、相手にも時間がかかる術と言うのがすぐにわかるはず。


イメルダもそれに気づいたのか、しかし一瞬の逡巡の後、攻撃を仕掛けてくる。

やっぱ言葉は重要だ。相手に考えさせる時間を与えることになる。

そしてその時間が俺の魔術の完成に必要だった。


彼の姿が再び視認できるときには、本当に至近距離。

相手の攻撃までに完成はできそうにない。

俺は少しだけ身をずらし、攻撃の当たり位置を調整する。


速度の乗った強烈な一撃が突き刺さる。

HPが半分まで一気に減った。半分無防備な態勢で受けたのだから当然と言えば当然。

肩に剣が突き刺さり、引き抜かれると血が噴き出す。

これ以上は喰らえないが、しかし同時に魔術も完成した。


「――――っ!!」


イメルダの声にならない悲鳴と共に、俺とは反対方向に吹き飛ばされる。

吹き飛ばしたのは当然俺の魔術の結果。影分身の魔術の行使の結果だった。

俺は2体の影分身を出現させ、同時に動かす。

俺と同等の攻撃能力を有した影、それらと共に俺もまた攻撃に参加する。


「実に卑怯な手だよな。これ」


実質3対1での戦いとなり、イメルダは防戦一方となる。

当然、イメルダがこちらに一瞬でやってくることを警戒し、その隙は決して与えない。

そして数合の打ち合いの後、唐突にイメルダは剣を投げすてた。


「降参だ。勝てるわけないだろ。こんな状況にされたら」


イメルダの降参宣言。それによってフィールドは消え、マリオがこちらにやってくる。

治療を受けながら、俺はようやく一息を吐く。

何とかこの決闘は俺の勝利で終わることになったのだった。


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