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8-8話 廃坑に行きました

「む……これは確かに許可証」

「ですから……入っていいですよね」



にこりと笑いながら、イルミは廃坑の入り口にいる衛兵に許可を求める。

本物の許可証に衛兵は悩み、そして聞いて来る。


「目的は?」

「魔物退治と鉱石採掘ですね」

「……まあ、許可証の有効範囲内だな。とはいえ、危険だからあまりうろつくなよ」


そう言って衛兵は俺たちをすんなり通す。俺たちは拍子抜けしながらも全員通り抜けることになった。

最悪戦闘を想定していたが、そういう事にはならなかった。

廃坑と言っても、中は十分に整備されていて、十分明るい。ランタン等を新たに灯す必要もないほどだった。

どう見ても魔物に荒らされている雰囲気ではなかった。


「やはり、魔物がいる雰囲気じゃないよな」

「まあ、当然よね。むしろすんなり通した衛兵が不気味ね」


イルミが答え、リーフへと向き直る。


「リーフさん。それで目的の鉱石はどの辺ですか」

「ああ、かなり奥だな。俺が先頭に立とう」

そう言ってリーフさんが先導となる。

イルミは隣に行きつついつもの編成となり、そうしながらもチャットを行う。


イルミ   :うーん。軍が使っているにしては頻繁に人が行き来してるようにはみえないよ

バーゼス  :別に入り口があるかもしれませんわね

ミミ    :それなら……軍に関係ありそうな所に近づかなければいいのかな?

クロ―ディア:盗賊ギルド経由で連絡は行ってるでしょうから、それは難しいかも

ヨキ    :だよなぁ

マリオ   :どっちにしてもこっちから事を荒立てる必要はないな

イルミ   :そうよね。とりあえずは警戒は続けるよ。


チャットで軽く今度の予定を再確認。

特にトラブルもなく、坑道を進んでいく。


「うーん。やっぱり魔物はいないわよね」

「それはそれで楽だからいいけどな。目的は鉱石なんだし」


そう言い合いながら、やがて大広間らしき場所に出る。

恐らく古くは工夫たちの休憩所として使われていた場所。

そこかしこに何かの機械があったが、どのような使われ方をしているかは不明。

人はいないが、明らかについ先日まで使われていた形跡があった。


「……これ、もしかして軍関係のかな?」

「多分。……もしかしてもう開発は終わってたとか?」

「かもしれませんわね」


イルミたちの会話を聞きながら、どうしようかと思う。

もし、こちらの想像通り軍部の暴走なら、今後どこかで事件が起こるという事。

当然どこかに被害が発生するわけで、止められるなら止めておきたかった。

同時に衛兵があっさり通した理由もわかる。

まだ見つかって欲しいわけでもないが、錬金術ギルドの関係を悪化させてまで止める必要もなかったという事。


ヨキ    :まあいいか。被害がでるなら新しいイベントになるだろ

ミミ    :それでいいんだ……

バーゼス  :できる事なさそうですしね。後でアジュに連絡しておきましょう

ミミ    :後は……レクターさんにもだね


とりあえずこっちは放置と結論付け、俺たちは本来の目的である鉱石採掘に目的を絞る。

しかし、俺たちの足はそこで止まった。

奥から足音が聞こえ、俺たちは身構える。


やがて一人の男性が奥から姿を現した。。

黒髪の長髪。優男といった風貌の男性だった。

外見こそ20代。そして表示はプレイヤーだった。


俺たち以外にもプレイヤーがいたことに驚きながらも、相手がプレイヤー故の気安さで俺は特に警戒することもなく挨拶する。

勿論この場にはNPCのリーフがいるため、ゲーム前提の話し方はしないが。


「こんにちは。他にも冒険者がいたんですね。魔物がいないのは貴方が倒したからですか?」


俺の質問に彼は苦笑を浮かべる。


「まあ、そんな物かな。軍の依頼でここの魔物を倒した後、そのまま用心棒をやっていたんだよ」


思ったよりも柔らかい口調。もっとも告げられた内容は内容だったが。

つまり、彼はプレイヤーであり軍関係者という事になる。


マリオ   :あ、まずいなこれ。


マリオのチャットでの呟き。

それには俺も同意見だ。そして、その認識は続く彼の言葉で証明される。


「私はイメルダ・ダーウェイと名乗っている。君はヨキだったね。知っているよ」

「はい? どうして知っているんですか」

「君は……いや、君たちは冒険者間では有名人だよ。割とね」


そうだったのか……。

いや、配信している以上知ってる人がいるのは実際嬉しい。

まあパーティにクローディアやミミがいるのだから、ある意味当然とも言える。

正直、有名配信者に寄生しているとか思われていても仕方がないよな、俺……

そう思いながら、ため息を吐く。


「もしかして、誘導されていました?」

「一人では誘導はできないよ。ただ、情報は得ていたからね。対処はさせて貰った」

「あーそれで誰もいないんですね」

「そういう事だね」


軍にプレイヤーが手を貸している。その可能性を考えていなかったのは痛恨のミスだった。

やっぱり正攻法で行かないとこういう落とし穴があるという事。

しかし、そうは言っても気になることはある。


「イメルダさんはどうしてここに残っているんですか? 軍にくっついて撤退すればよかったのに」

「ただの殿担当だよ。君たちを足止め役として買って出ただけさ」

「なるほど。後は軍の目的は教えて貰えますか?」

「竜退治のための装置の開発さ。当然その威力は強力で、竜以外にも向けることは可能だから、他国にとっては脅威にもなる。そういうものさ」

「……こりゃ、アジュには連絡しないとな」


そこまで呟いてようやく悟る。

彼は知っている事実を正確に告げることで、余計な憶測や誤解を与えないようにしている。

今回のイベントには基本的に悪い人はいないのかもしれないな。


「なるほど……では、俺たちは軍関係に首に突っ込む必要ないですし、採掘に行きますね、ありがとうございます」

「うん、まあ、少し待って欲しい」


俺は彼の静止に怪訝な表情を浮かべる。

何がしたいのかがわからなくて内心は困惑中。


「いや、まだ、軍関係者が多少残っているからね。そして殿を務めると言う実績も欲しい」

「……つまり?」

「ヨキ君。君と”決闘”を行いたい。これを持って時間稼ぎの実績とする」

「……決闘?」


俺の疑問の声に聞こえたのは姿の見えない相手。ナビAIであるミリンの声だった。

『本来PvPは不可の設定じゃが、イベントの都合で利害が対立する場合に選択できるPvP機能じゃな』

「はーなるほど」

そういう機能もあるのか……まあお互い戦えないのは不都合な場合もあるか。

『決闘の設定はプレイヤー間で決めるのじゃ。今回は1対1の設定じゃな。承認するかの?』

「……するしかないだろう。この場合は」

『分かったのじゃ、フィールドが展開されるからそこへ進むのじゃ』


「感謝するよ。ヨキ君」

そう言って、イメルダがまずそのフィールドに入る。

俺も同様に頷いて入ることになった。

まさかPvPになるとはなぁ。

さてどれくらい自分ができるか……張り切っていこう。

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