8-7話 みんなで情報を集めました
俺たちは一応襲撃者を縛り上げ、近くの廃屋に陣取る。
チャットで状況をバーゼスさんに連絡し、NPCのリーフさんだけは宿屋に先に言って貰った。
後は全員集合するだけ。
集合とした後、簡単に状況の報告を行い一旦情報を整理する。
「そっちに襲撃者が行ったのね。錬金術ギルドから廃坑への通行許可は得られたし、襲撃者関連のイベントは別にいらなそうよね」
「複数ルートがあるのはいい事だけどね。同時に起こしたのは失敗だったかもね」
どうやら錬金術ギルドルートだけで廃坑に入ることはできたらしい。
冒険者ギルドからのルートは必要なかったと言える。
まあ、アジュとの交流があるがための特殊ルートだから、普通は使えない方法ではある。
結果としては不必要に動いたが故の襲撃となる。本来なら襲撃者を通して新しい情報を得るのだろうが、今は正直必要なかった。
「こいつら連れてきたは良いが、これからどうする?」
マリオの疑問も当然の事。
その問いに頷いたのはクローディアだった。
「困ったわね。下手に放置しても襲撃が続くかもしれないし。でも正直この3人は必要ないのよね」
「余計な敵を増やしちゃったかもね」
イルミも応じちょっと困った顔をする。
俺たちの目的はあくまで廃坑での鉱石集め。
襲撃者の存在から、イルールの町に政治的な対立があるのはわかるが介入する気はなかった。
というよりもシティアドベンチャー系統のイベントは時間が必要になりがちで、今は遠慮したい。
リルムとの約束があるからな。時間があるならやってもいいのだけれど。
かといって襲撃者イベントから始まる流れを完全無視も、それはそれで追手が増えそうで良くない状態ではあった。
「仕方ない。情報だけでも集めるか。それで襲撃者イベントの方をどうするか決めよう」
「どうやって集めますの? 聞き込みだと時間がかかりそうなのですけれど」
バーゼスさんの意見に頷くと、俺はミミとクローディアを見る。
同時、ミミは俺の考えをすでにわかっていたようで笑顔で言ってきた。
「リスナーからの情報を纏めると、あの3人は若いけどイルールの盗賊ギルドの中では割と腕利き。
今回は、イルールの軍部の一部からの依頼で、廃坑に入ろうとする冒険者を脅す役割だったみたい。
その中には暗殺も含まれているけど、あの3人は割と穏健派でそこまではしてないって」
「なるほどなー。竜退治の騒ぎに乗じてイルール軍部の一部が暗躍してるって所か」
「3人の名前はカイン・バレンタイン。エリス・バレンタイン、エドガー・アントニオ。
カインがリーダー格の男性、エリスがカインの妹。エドガーがカインとエリスの親友ポジね」
ミミの情報を総合すると、彼らは盗賊ギルドの中でも割とまともより。
当然諜報などはするが、どちらかと言うと冒険者でいう斥候の役割の方が多そうな印象だ。
そうなると、流石にあの一撃は容赦がなさ過ぎたかなと反省する。
同時に彼らにどう接するかが見えてきたかなと思いつつ、次の事を考える。
「次は軍部か。廃坑で何か準備しているのは間違いないな」
「だろうね。軍部が何をしているかは不明ね。
まあ軍部の中も極一部の暴走っぽいから、直接行って倒しても問題はなさそうね。
軍部全体としては最悪その一部をしっぽ切りして終われそうよ」
今度はクローディアさんからの情報。
俺はそこまでの情報を確認し、言葉に置き換える。
「最悪、廃坑でなんかあっても力押しで十分そうだな」
「錬金術ギルドの許可もあるから、政治はそちらでなんとかしてもらうか」
「ふふふっ……。そういえばレクターさんが『アジュがまた厄介ごとを押し付けて来た』ってぼやいてましたわね」
「うーん。レクターさんって苦労人ポジだったのね」
バーゼスさんの言葉にイルミが乾いた笑いを上げる。
ま、それはともかくとして、本来は自分の足で集める情報をリスナー情報でスキップできそうだった。
この辺はミミやクローディアさんの知名度のおかげだな。俺とイルミだけではこうはいかない。
ここまでの情報を得るまでにかなり時間がかかっただろう。
「しかし……余計に襲撃者たちを連れて来たのは失敗だった気が」
「廃坑の件潰しても、最悪この人たちが濡れ衣着せられて粛清されるかもね」
「そんな事できるかな……。まあできると仮定すると俺たちも恨みを買う事になるなぁ。まあ、その場合イルールに来なければいいだけだが」
ミミの言葉に俺は思わずぼやいてしまう。
来なければいいとは言ってはいるが、今後イルールに来るのにペナルティが出るのは冒険者としてはよろしくない。
そうなると、襲撃者たちの処遇をどうするかを考える必要がある。
彼らに濡れ衣を着させられないようにするのがベストだが、俺たちがどうにかする事でもないとは思う。
しかし彼らは盗賊ギルド出身。ある程度の力があって情報収集にも使えそうな便利キャラ。
そうなると……彼らの選択次第だが、ちょっと思いついたことがある。
「少し彼らと話してみるか……いいかな」
「いいんじゃない?」
俺の言葉に軽くイルミが応じ、他の面々も頷いた。
改めて彼らを閉じ込めている一室へ入る。
彼らはすでに意識があるようで、俺が入ると視線だけでこちらを見る。
どこから聞こえていたかはわからないが、まあ、聞こえていた前提で言葉を選ぶ事にする。
俺は、彼らに無造作に歩みよると、年齢は恐らく俺と同じくらいのリーダー格を話せる状態にする。
ちらりとみると腕は後ろ手になっているが縛っている紐は緩んでいていつでも抜け出せる態勢になっていた。
まあそうだよなー、と心の中で思いつつ、表には出さないようにする。
その後近くの椅子を引っ張り、そこにどかっと腰を掛けた。
そのまま大人しくしている彼に向かって俺は口を開く。
「やあ、カイン君。目覚めはどうかね」
なんとなくテレビで見た悪役の口調で問いかける。
その男性、カインはしばらく口をつぐんだ後、ゆっくりと口を開く。
「……俺たちに何のようだ? 情報が欲しい……ようには見えないが」
カインもある程度は察しているらしい。
やはり頭がいい。若くして腕利きという事もわかる気がする。
「まあそうだな。大体の事はわかったし、解決方法の筋道も立った。
それが正解かは行動してみないと分からないがな。結果についても確証は今の所ない。
だが、俺たちとしてはどちらにしてもそんなに不利益はないな」
「……」
あくまで具体的な事は何一つ言わない。極めて抽象的に、ふわっとした言い回し。
相手に想像させるだけの言い方。
男は黙って続きを待っている。余計な情報は出さない。それは正解だ。
しかし、彼の横にいるエリスの方がピクリと震える。すぐに止まったが見逃さずにすんだ。
確定。少なくても彼らに濡れ衣が行くことは聞こていた。
だからこそ、俺の言い回しで自分たちが処刑される所を想像してしまった。
俺はゆっくりと息を吐くと、彼に告げる。
「さて、では要件だ。君たち3人……カイン・バレンタイン。エリス・バレンタイン、エドガー・アントニオ。
俺たちの支配下に入らないか?」
俺の言葉にカインは黙ったまま。
俺も特に答えは急がない。
「まあ、考えてくれればいい。どちらにしても仕事中はここに監禁させて貰う。
仕事が終われば解放する。その時までに決めてくれればいい」
そう言って俺は立ち上がる。これについては特に答えを期待してはいない。
彼らを縛った紐もすでに解けている。扉に鍵をかけるわけでもない。
彼らがここから逃げ出すのは非常に容易だった、
俺としては、ただ彼らに何もせず放置する理由をつけれられればそれでよかった。
俺は部屋を離れ、後ろ手で扉を閉め仲間のもとに戻る。
皆の視線が俺に集まっている。
そんな中、イルミが苦笑するように言ってくる。
「随分無茶な提案ね。結構苦しくないかな?」
「俺たちが、盗賊ギルトとは敵対しないことだけが伝わればいい。
襲撃者ルートは俺たちにとっては必要ないからな」
「……いや、あれだと伝わらないと思うなー。ただの引き抜きじゃない?」
「引き抜きったって、彼らの自由意思だからな。別にどっちに転んでも問題ないさ」
「まあ、そうなんだけどね」
俺たちがここを去った後、彼らもここを抜け出してて策を練り始めるだろう。
これで襲撃者の方は完全放置。
後は主目的の鉱石の採掘だ。まあ、何かの陰謀を潰すのはそのついでに過ぎない。
「それじゃ、さっさと廃坑に行こうか。時間は有限だからな」
俺はそう言って、皆と共に廃屋を出ることにした。




