8-3話 看板娘と状況を確認しました
「あ、なるほど、マリオさんとバーゼスさんの間にそんな事が……。確かにまだ二人とも少しぎこちなかったですね」
リルムと道端でばったり会ってから、そのまま昼ご飯にする流れになった。
その辺のレストランに入って雑談していた。
リルムとしては、今朝、クエストを確認しに来たマリオ達と話て違和感を感じていたらしく、
俺たちに聞いてきたと言う訳だった。
こちらとしても、そこまで察されているならという事で正直に二人の状況を話す。
その説明に納得するようにリルムは頷いた。
「まったく……それでマリオが振られた後、私が愚痴を聞く羽目になったのよね」
「あらあら。それはまあ。信用されてますね」
「まぁ、それはそうかもね」
そういえばそんなことを言っていたな、マリオもイルミも。
不満気に話すイルミを見ながらイルミの話を聞いている。
あ、このパスタ上手いな……語彙力ないからうまいしか表現できないけど。
「そういえば、あの時ヨキいなかったけど、どこ行ってたのよ? マツ……マリオ、はじめはヨキに愚痴りに行く予定だったらしいわよ」
だから急に話を振られて、ぼーっとしたまま考える.
いつもは大体イルミと一緒だからなぁ。そうなるとあの時か。
……あ、でも今も配信してる事を考えるとミミと一緒に遊びに行ったとは言わない方がいいな。
下手すりゃミミのリスナーに燃やされる。
「まあ、ちょっとした所用でな。詳しく知りたいならルームに戻ってからで」
「……あ、そうね。確かにここで聞くことでもないわね」
俺とイルミの会話にミミは入らないのは、俺たちが基本配信している事を彼女もわかっているからか。
その辺の配慮は流石配信者だな、と思いつつリルムを見る。
リルムは俺たちの会話に意味を図りかねているのか、曖昧な笑顔で座っていた。
いくら彼女が優秀で、察しが良くても俺たちと彼女じゃ前提条件が違うからな。
そりゃわからないだろうと思いつつ、話を変えるため口を開く。
「リルム。そういえば近頃は忙しいのか? 最近拠点に遊びに来ないけど」
地竜を倒して報酬を貰いに行ったのが、最後にギルドに寄った時だった。
マリオやクローディアさんが寄ることが多く、俺自身が行く機会が減っていたのは確か。
リルムの方も忙しいのか、俺たちの拠点に寄ってくることもなく、会うのが久しぶりな感覚すらある。
「そうですね。冒険者さんも増えましたし、依頼も増えましたしで大変です。
でもディアナが非常に優秀ですので、こうやって私が休憩に出られる程度でもありますね」
「あ、そうか。それなら良かった」
連れて行って迷惑になってなければいいがと思っていたが、杞憂だったらしい。
一方リルムの方は苦笑しながら言葉を続ける。
「一部の冒険者からは『悪役令嬢のディアナちゃん』とか言われて親しまれているわよ。
本当、冒険者さん達って情報が早いのよね。なんでそれを知っているの? って何度思ったか……」
……あー。そういえばジャンルとして人気あるよな悪役令嬢。
配信している以上、各種設定は駄々洩れだしな。最近はミルシアシードのまとめサイトも充実してきているし。
その辺から情報を得ているプレイヤーも増えたんだろうな。
それはそれとして、ディアナ自身がどう思っているか心配ではある。
「ディアナの反応は大丈夫か?」
「当然怒って冒険者を叩いたり魔術で攻撃しているけど、あくまでじゃれあいの範囲ですね。
ディアナの中では整理できてるみたいで、大きな問題にはなってないですね」
「ギルド拠点で攻撃魔術……。それで問題になってないのか……」
ディアナも大分ギルドに慣れたようだな、と思いつつリルムの話を聞いていく。
一方リルムは頷きながら言葉を続ける。
「最近じゃ熱烈なファンができたみたいで、ある意味親衛隊風になっている人たちも増えつつありますね」
「なるほど……」
プレイヤーの中で暴走する奴いないといいけどな。
心の中でだけディアナに謝っておく。俺が配信垂れ流しなのが大体の原因と言えるわけで。
その様子を察したのかリルムは笑いながら言ってくる。
「あ、大丈夫ですよ。冒険者の皆さん意外と紳士ですから。それに、この状況ならディアナさんを害しようとする相手も手を出しにくいでしょう。
そういう意味でもヨキさんの意図した通りになってますよ」
「……確かにそうだな。ありがとうな」
「いえいえ、どういたしまして」
にっこりと笑うリルムを見ながら俺も口の端が上がる。
そう言われれば確かにそうだ。冒険者ギルドの中でプレイヤーに守られている状況なら、
ディアナを陥れた敵も容易に手出しはできないだろう。
俺が礼を言いながら頷いていると、隣のミミがリルムに聞いてくる。
「そういえば、ヨキさん達が地竜を倒しましたけど、他でも同様な事起きてますか?
依頼が多くなって忙しさが増したりしてますか?」
「そうですね……」
難しい表情で考えるリルム。
先ほど噂で聞いたほどなのだから、確かにギルドならもう少し情報が得られそうだ。
少しずつイベントが進んでいるんだなと思っていると、リルムが口を開いた。
「今、ギルドで扱っているのはライグニット国のさらに先、砂漠の国イルールから来ている風竜討伐ですね」
「へ? 一種類だけなのですか? 余り依頼自体は増えてない?」
ミミの疑問にリルムは頷く。
「他にも天竜や水竜、火竜の被害も確認されているのですが、レストアとの国交の関係でこちらのギルドには依頼が来ていませんね」
「こんな所にも政治が絡むのねー」
ミミのくたーとした声音に思わず苦笑するリルム。
「ギルド運営もそういうのとは切っても切り離せないものですから」
「そういうものでしょうけどね」
「念のために言いますけど、ギルドはそうでも冒険者さんは政治を無視して動いてもいいのですよ。
ギルドは支援はしますけど強制はできませんから」
リルムの言葉にミミはあっという表情になる。
確かにそれはそうだろう。プレイヤーは基本束縛されずに動ける存在なのだから。
勿論、プレイ結果によってしがらみは生じるかもしれないが、それもプレイスタイルの結果にしか過ぎない。
最悪、そういうのを無視するのもありだ。
そしてわざわざそのことをリルムが言い出すという事は、
「もう、他の冒険者は動いてますか?」
「ええ、すでに多くの冒険者が天竜や水竜、火竜の討伐に動いていますね。後は闇竜も地竜と同様倒されていますよ」
なるほどなぁ。これも当然と言えば当然か。
プレイヤー皆のモチベーションが高い。
俺たちもうかうかしてられないかも知れないな。
まずはもっと準備が必要との結論になった訳ではあるが。
「そういえばヨキさん達はこれから依頼を受けるのですか?」
「俺とイルミは鍛冶屋のリーフさんの手伝い兼護衛に行くことになった。他に予定がなければ他のパーティlメンバーにも声を掛けるつもりだ」
「竜退治ではないんですね、良かったです。……それで、結構遠くに行きそうですか?」
「どうだろうなぁ。まだ行き先はわかってないが」
「そうですか……」
リルムが露骨に何か言いたそうにしている。
流石にこれはこちらから聞かないといけないか。
「リルム、何かあるか?」
「いえ……一カ月後位に、魔術の学園で賢者祭があるんですよ」
「賢者祭?」
「ええ、学園の生徒たちが企画してお祭りをする行事なんですが」
文化祭みたいなものかな……と思っていると、リルムが意を決したように言ってくる。
「ヨキさん。その賢者祭、一緒に行きませんか? 結構楽しいですよ」
「賢者祭か……」
魔術学園というものには興味ある。俺たちは学園に行かず魔術を覚えた関係で、そこがどのような場所か知らずにいた。
それにリルムはその学園出身だ。もしかしたらいい話が聞けるかもしれない。
「わかった。約束するよ。……ま、依頼が無事終わったらだけどな」
「……! はい、ではお願いしますね。約束ですよ」
リルムの緊張が解けたのか、笑顔になっておじきをする。
俺も特に深く考えず頷いた。
その後、しばらく雑談と昼食を食べた後リルムと別れた。
その間中、何やら二人の視線が刺さっていたので仕方なくイルミに問いかけてみる。
「イルミ。どうした?」
「いえ、別に?」
「ミミも何か言いたそうだが」
「いえ、ヨキさん。リルムさんみたいな人が好みなのかなーって思って」
「NPCの信頼度を上げる行為は普通の事だと思うがなー」
「本当にそれだけですか?」
いや、好みかどうかで言えば好みではあるが、どこまでいってもゲームのキャラクターだからな。
その辺の分別はあると思ってる。
とりあえず二人にはドカッと手刀を喰らわせることにした。
「あっ!ちょっとHPまで減らさないでくださいよ!」
「お、こっちは全然減ってない。流石おやっさん特性ミスリルチェイン」
「バカ言ってないで、そろそろ拠点に戻るぞ」
俺はそう言って俺は歩き出した。
「少し揶揄っただけじゃない。わかってるって」
「ちょっと待ってくださいって! とりあえず明日は私の方に付き合って貰いますから!」
そして二人もついてくる。
イルミと二人パーティの時も良かったが、こうやって人数が増えると楽しさも増えるもんだな。
少しずつ日が陰ってくる道を歩きながら、なんとなく思う。
うん、やっぱり楽しいよな。このゲーム。




