8-1話 装備を新調しに行きました
「さて、今日はどうするの」
「んーそうだなぁ」
いつものようにミルシアシードの拠点に集合。しかしログイン時間の差のため少しの待ち時間ができる。
皆を待ってる間のイルミの質問にちょっと悩む。
地竜戦が終わった後、普通の小さな依頼は受けていたがいまいち身に入らない状態になっていた。
かなりの報酬は貰えていたが、武器防具の消耗も激しく余り大きな依頼は受けられない。
とはいえ、いい加減、今後を考えた方がいいわけで。
まず必要なものと言ったら、新しい装備だった。
「ちょっと鍛冶屋に行くかなぁ」
「ん、なんか買うの? 武器屋じゃなくて?」
「いや、装備の情報が欲しくってね」
地竜戦で、予備含めた武器防具があっさり壊されていた。
いい加減今までよりいい装備が必要だとは思うけど、さりとて単純にいい装備を武器屋で買おうとするととんでもなく高い。
色々考えた結果、まずは鍛冶屋に相談しに行く必要があると感じたわけだった。
「あーなるほどね。そういえば、ステータスどんな感じになった?」
「えーっと。こうだな」
HP 1000 MP 260 SP63
力150 素早さ80 体力120 知力40
近接攻撃12 遠距離攻撃8
投擲5 盾技能10 採取6 狩猟5 乗馬10
かばう8 自己犠牲8 攻勢防御3 対鬼2
弾はじき1 部位狙い2
「おー始めたときから比べると大きく変わったね。ここまでなると少しは良い装備が欲しいよね」
「イルミの方は?」
「私も似たようなものよ」
そう言って見せてくれるステータスはなるほど、イルミのプレイスタイルが反映されたものだった。
HP 800 MP 460 SP20
力100 素早さ150 体力100 知力80
短剣6 弓15
投擲10 採取7 狩猟8 乗馬2 探索10 罠解除9
対鬼2 鷹の目4 急所狙い6 部位破壊5 速射6 絶対命中2
システムスキル『索敵』
「そういえば、ヨキはシステムスキル取ってないよね」
「決められないままここまで来たなー」
何を取っていいか決めるのが難しかったというのは言い訳か。
今度、ミリンにちゃんと相談するかな。とは思っているが、ともかくまずは装備だと思いなおす。
「と、言う訳で俺は鍛冶屋行ってくるけどイルミはどうする?」
「んー、私も行こうかな。防具を見ておきたい。そろそろ普通のレザーアーマーだと怖くなってきたし」
「あ、私も行きます!」
俺とイルミが話していると、丁度やってきたなぜかミミも乗ってくる。
今日は夕方に配信してたはずなのにこっちにも来るなんて元気だよなと感心する。
「ミミもか?」
「はい。私もそろそろ新しい剣が欲しかったので。どうせなら鍛冶屋に相談できればいいなと。確かヨキさん。知り合いがいるんでしたよね」
「ああ、そういう事か。分かった紹介するよ」
「はい! よろしくお願いします!」
「……」
なんとなくイルミの無言が気になるが、深く突っ込むに足る理由もなく鍛冶屋へ移動の準備に入る。
こないだミミとは、自分のうっかりにより二人だけで遊園地に行く展開になってしまったが、まあ嫌われてはなさそうで良かった。
そういえば、本名は聞いてなかったな。まあ、困ることはないから別にいいけど。
そしてふと思い出す、リアルでのミミの姿。初めて会ったが、結構大人っぽくしてて驚いた。
黒髪の長髪。髪の先を赤いリボンで結んでいた。
身長は150位か。そこまで大きいわけではないが、背筋をピンと伸ばした綺麗な姿勢は演劇をやっていた時代の名残だろうか。
ミルシアシードのアバターとは全然姿が違ったが、雰囲気自体は変わらなかったので会ってすぐに分かったな。
クローディアさんもそうだったが、姿がアバターとは違ってはいたが、結局雰囲気的なものは出るものなんだろう。
……ミキ以外の女子と二人だけで遊んだのは初めてだったな。
あの銃乱射事件に巻き込まれなければ、今後、彼女を作れた時に参考になりそうだと思う所だった。
そうやって準備をしていると、マリオもこちらを見つけて寄ってくる。
そして俺たちの状況を見つめ、一言。
「両手に花か?」
「違うだろ。うちのパーティ、男は俺とお前だけだろが」
開口一番になんてことを言ってくるんだ。
マツルがバーゼスさんに振られたのは本人の口からきいている。
まあ、普通に友人関係継続な辺り、問題ない振られ方だったんだろう。
そうだからこそ変に気にする必要はない、マリオはそういうつもりでこんな軽口を叩いている。
だから、俺もいつものように対応する。
「まったく……お前ももう少し考えろよな」
そう言って、マリオは俺たちから離れようとする。
マリオも一緒にくると思っていたから、はて、となった。
「あれ、マリオは?」
「バーゼスさんとクロさんとで、ギルドに依頼見てくるよ。ついでにリルムに女たらしだとチクってくる」
「おい、ばかやめろ。つうか俺が両手に花ならお前もだろ」
「それはそうだな」
「あ、畜生。肯定しやがった」
「ははは、じゃあ行ってくるぞ」
本当にリルム言わないだろうな……
リルムがそう思われたくはないな。彼女が本格的に怒ったら、今後の冒険者生活に問題が出かねない。
まあリルムの性格的に、そんな事にはならないとは思っているが。
それはそれとして、彼女にあまり嫌われたくもないのもまた事実か。
そんな事を考えている間に、マリオはそのまま手をひらひらすると、先に行ってしまった。
まあマリオもゲーマーなんだし、ゲームにおいて不利になるような事はあまりしないだろう。
そう思いつつ、俺たちも鍛冶屋に向かう事にした。
「おう、ヨキ達か。今日は何のようだ」
鍛冶屋に親父は相変わらずぶっきらぼうに言ってくる。
俺は一つ頷くと武器を見回しながら答える。
「こないだの地竜戦で手持ちの武器防具がほぼ全滅したから。少し良い装備が欲しくなったんです。
それなら、親父さん所が一番だなと思ってきました」
「半年位でずいぶん立派な事を言う様になったもんだな」
鍛冶屋の親父は鼻を鳴らすように言うと、指を奥へ向けた。
「丁度、儂の息子が来ている。今のお前なら奴が打った物が丁度いいだろう」
「……へ? 息子さんがいるのですか?」
俺が驚いて思わず言った言葉に親父さんがぶっきらぼうに答える。
「おう、息子が3人、娘が2人。今は皆独立しているがな。今日は長男がたまたま来ているんだ」
ぶっきらぼうの中になんとなく優しさのような感覚を得る。
あー。この人も父親なんだな。と妙に納得した。
「なるほど。じゃあ、お邪魔します」
俺はそう言って、一人奥へ向かう。
一方イルミとミミは鍛冶屋の親父に呼び止められ、俺と同様何が必要か聞かれていた。
果たして奥に行くと、一人の大柄な男がいた。
鍛冶屋の親父と雰囲気がそっくりな赤毛の男。
恐らく20代後半と思われる彼は、一本の剣を見ながら、何やら考えているようだった。
その男は、俺に気づくと、顔をこちらに向けてくる。
「おや、いらっしゃい。ここに通されたという事は親父のお得意さんかな」
思ったより柔和な声のその人は、優しくこちらに聞いてくる。
「どうなんでしょうね。おやっさんに、貴方を紹介されましたが」
「ああ、そういう事か、君がヨキ君だね。話には聞いているよ」
話? と思っていると、その男性は少し早口で言ってくる。
「君が、僕が初めて作った剣を買ったんだってね」
なんのことだろうか、と考えて、ゲーム開始直後に一本の剣を買ったことを思い出す。
その剣は前に鬼戦で使用した武器。攻撃力はほとんどないが、思ったより耐久力がありある意味で鬼戦の決め手となった武器だった。
普段は使いようがないためルームに保管しっぱなしになっていたが、今日は地竜戦でほぼ武器を失っていたこともあり、念のため持ってきていた。
「あ、あの武器の製作者だったんですね。攻撃力はないですけど、妙に耐久力はあったのはなんだろうと思ってたのですが」
「おや、そこまでわかってるのかい。なら使ったこともあるわけだ。どんな敵を倒したのかな?」
男性は話を広げに掛かっている。俺も少し悩むようなそぶりを見せるが実際は一体だけだった。
「鬼、だけですね。倒したのは」
「ふむ、鬼か……鬼?」
一旦納得しかけた男性だったが、途中で言葉が疑問系になる。
「鬼? ゴブリンとか、ウルフとかじゃなくて?」
「はい」
「どう考えてもあの剣は、鬼へは歯が立たなかったはずだが……」
「あの時は耐久力が重要だったので。攻撃力自体は魔力で補いました」
「……ふーむ。なるほどな。魔力、か。……少し、見せて貰いたいがいいかな」
俺は素直に渡すと、男性は剣を子細に見始めた。
「……確かに、この強大な力の残滓は鬼の力。……他に相当強力な闇の魔力も宿って言るが、これは君のか?」
「よくわかりませんが、多分そうかと」
闇魔術が得意属性だから、多分俺の魔力の事なのだろう。というかこの人は見るだけでそこまでわかるのか。
というより、剣に魔力が残るなんて事あるのだろうか。そんな事を思っていると、その男性は改めてこちらを見る。
「この魔力から考えると、この剣は君専用の装備になっているな。……そうだな。この剣、打ち直してみないか?
この剣に宿った魔力を考えると、今なら相当な強化が可能になるぞ」
男性の言葉に、俺は疑問符を浮かべる。
「そんな事、可能なんですか?」
「ああ、この剣に使っている素材が特殊でね。ただ、今は打ち直し用の素材が足りないが」
その言葉でこれがイベントの発端になると悟る。
これはつまりお使いイベント。状況を考えると恐らく護衛イベントにもなる。
「なるほど、その素材を採ってくればいいんですね」
「話が早いね。目利きは僕がやる必要があるし、それ以外に欲しい鉱物もあるから、依頼を兼ねて君たちには護衛も任せたいが、どうかな?」
「仲間に相談してからになりますが、個人的にはお願いしたいです」
俺がそう言うと、男性は右手を差し出してきた。
俺もそれに応え、しっかりと握る。
「改めて、俺はヨキ。よろしくお願いします」
「僕はリーフ・エンテ。よろしくな」
その赤毛の男性は名乗りながら豪快に笑うのだった。




