7-10話 コラボ配信が終わりました
「お疲れさまー」
「お疲れ様でした」
「好評価、チャンネル登録お願いしまーす!」
シルビア達の配信も無事終わり、俺たちの方の配信も終わりにする。
ここから先はただの雑談タイムになる。
一時起こった通信エラーも録画モードに切り替わったおかげで、
エラー修復後速やかに編集、配信に乗せることで一般的には問題なく進めることができていた。
「しっかしあの地竜は強かったわね」
「ヨキさんが死んだとき全滅覚悟したよね」
イルミの感想にミミが応じる。
壁役の俺が倒れたからな。あの時点では全滅は必至だった。
「あれは俺の判断ミスだったな。一旦距離を取るべきだった」
イルミが到着しタイミングだったからな。一旦下がっていれば。まだ別の戦法を取れた可能性があった。
俺の反省の言葉にマリオは苦笑する。
「いや、俺も魔力空っぽだったし、回復アイテムも切れてたしな」
「そういう意味では、どっちの判断をしても結果は同じだったかもしれませんね」
マリオとサツキさんが俺のフォローをしてくれたのが少しありがたかった。
一方、ミミは唇に手を当て何か考えると、クローディアさんの方を向く。
「ま、そのおかげであの3人の救援が映えたのだけどね」
「ミミへの攻撃をゴンザさんが受け止めたときっとか、中々ドラマティックな展開になったかな?」
シルビアさんが屈託ない笑顔で言っている。確かにあれは劇的と言ってもいいタイミングだった。
「あれ? そういえば地竜戦にシルビアさんいましたっけ?」
「ヨキ君が丁度戦闘不能になったときだね。私はクローディアと一緒に行動していたから。分からなかった?」
「あーなるほど。クローディアさんと一緒だったのか」
「なんかあった時用に彼らにも声かけておいたのよね。うまく行って良かったわ」
クローディアさんがそう言って笑う。
あ、そういえば、あの三人組の中の一人が個人配信者だったな。
なるほど、その辺で繋がりがあったのか。
「でもごめんなさいね。ヨキ君にバーゼスさんが戦闘不能になっちゃったし」
「いえいえ、問題ないわ。装備回収して貰えたし。なくすには惜しい装備もあったからね」
サツキさんの言葉にバーゼスさんが返す。
魔力を物理攻撃力に変換する腕輪はロストするには惜しかったしな。
自分の装備も回収できたし支出は消耗品のみ抑えられそうだった。
そんな中、唇を尖らせる金髪の少女が言う。
「わらわは全く活躍しなかったぞ」
「あ、そう言えば……アズサちゃん目立たなかったわね」
「コメント欄でも、一般通過モブとか言われててな……次こそは……」
「今回は私と一緒だったからね。穴落ちた後は迷子になってただけだったし。ごめんねー」
「いやいや。こればっかりはイルミ様のせいじゃありまえんから」
アズサはイルミと一緒だったか。そうなると、他の人と比べると取れ高少な目なのは仕方ない事か。
まあ、全体でみればいい感じになったんじゃないかと思う。
後気になることは、この配信自体の評価だった。
「そういえば、評価どうでした?」
「んー。そっちは、いつもの通りくらいかな。どっちかというと、これでこのゲームを始める人がどれくらい増えるかが問題かな?
企業案件は、そのゲーム等の宣伝が主目的になるんだし」
俺の疑問にミミが返してくる。あ、なるほど、案件なんだから宣伝の方が重要か。
やっぱり慣れてるよな。この人たち。
そんなこんなで話をしていると、リアルゲームプレイ時間の制限がやってくる。
「じゃあ、今日はここまでかな?お疲れ様でした」
「お疲れ様でした!」
「また、今度遊びましょうね」
「俺たちで避ければ、また遊びましょう」
手を振りながらログアウト処理。ゲームの終了を行った。
気が付くと、リアルの方の俺の部屋。
起き上がると、床に座っていたミリンが稼働を始める。
目に力が入り、正常稼働を始めるとミリンはこちらを見た。
『企業案件コラボお疲れ様なのじゃ』
「お疲れ様。いやー緊張したな」
俺の感想に、ミリンはニコニコと笑っている。
『全然緊張しているようには見えなかったのじゃがのう』
「その辺はシルビアさん達がコントロールしてくれたからな。やっぱりプロは違うな」
素直に関心していると、ミリンは一つ画面を見せてくる。
『ほれ、カリタ殿の方も初めて同接が100人超えたし、やはり大手とのコラボは影響力あるのじゃなー』
「そりゃ凄いな。俺の配信を見てくれる人も増えるのか」
俺のほうはいつもの通りでやってたから、増えると思っていなかった。
いや、もしかして運営はそれも狙いの一つか?
「運営の方もそれも狙いにしてたのか?」
『カリタ殿とミキ殿は半分私たちゲーム運営の公式Vじゃからな。継続的な宣伝に、こういう機会は逃したくないのじゃ』
「稼働初期に全く宣伝してなかった運営がずいぶんと成長したなー」
『全くその通りじゃな。あれで宣伝の大切さは身に染みたのじゃ』
「しっかし、俺、面白いことはできないし続くかどうかは未知数だぞ」
『まあ、ゲームの攻略サイト代わりに見ている者もリピーターになり始めているのじゃ。まだまだこれからなのじゃ』
「ん。わかった」
別にゲーム内容についても最新を突っ走っているわけでもないけどな。……それでも特殊な情報の発信源になることは結構多いか。
そんな他愛もない事を話していると、ミリンが反応する。
一瞬、思案顔を作るが、すぐに笑顔に戻り、こちらを見る。
『おっと……電話じゃぞ』
「ありがと」
ミリンから電話を受け取り表示を見る。
そこにはミミと表示がされていた。
はてと思いつつ電話にでる。
「もしもし。ミミか?」
「あ、出た出た。ヨキさん。さっき聞けなかったんですけど、明日っていつ頃インしますか?」
「確か、20時から予定だな」
「私の方は23時から配信だから……うん。間に合う。じゃ、また明日一緒に遊びましょう!」
「分かった。またよろしくな」
「はい。よろしくお願いします」
それだけを言ってミミは電話を切った。
しばらくボーっとその電話を見ていたが、
「あれ? ミミも明日来るってことか」
『そういう事じゃのう』
「コラボの続き?」
まず思ったのがそこだった。しかし、ミリンは首を横に振る。
『こちらにコラボの話は来てないから、単に一緒に遊ぶつもりじゃろうなあ』
「忙しいだろうに大丈夫なのかな」
『カリタ殿と遊ぶのなら、ゲーム中のフォローはできるのじゃ。なんだったら夏休みの宿題などはルームで一緒にやったらどうじゃ?』
「その手があったか……」
確かに体感時間が加速している中でやれば、リアル時間そんなに使わず宿題ができる。
昔の漫画にあった精神と時の部屋みたいなもんだな。
俺はミリンに感謝しつつ頷いた。
「そうするよ。フォロー頼んだぞ」
『当然なのじゃ。カリタ殿は私の所有者なのじゃからな。なんでも頼むといいのじゃ』
そう言って偉そうに胸を張る。
本当にとてもAI、というかアンドロイドに見えない人間らしさだよな。
そんな事を思いながら、一日が終わる。あの地竜を倒したことで、何か変化があるのか。楽しみにしよう。
変化を楽しみにしてはいたけれど、結果から言うと特に変化はなかった。
イベントとしては終わり、ギルトのクエストが達成されただけという扱い。
よく考えれば、現状維持を続けるための討伐なのだから、変化がある方が可笑しいの言う事だ。
ただ、変わったこともある。俺たちのパーティーにミミがほとんど加わっている状態になった。
流石に時間が合わない時もあるが、大抵は俺たちに合流して一緒に遊ぶことになる。
そんなことがリアル1週間程続いた辺り。ふと俺とミミは二人になるタイミングがあった。
他の全員が買い物で拠点にいない間、俺たちは待ちながら普通に雑談をしている事になった。
その雑談の中、ミミが急に聞いてくる。。
「そういえば、話は変わりますけど明後日って用事ありますか?」
「夏休みの宿題は終わっているし、バイトもないからな。なんもないぞ」
「そうなんですかー。私、明日事務所でオフコラボある関係で、首都圏に出るんですよ」
「へーそんなんだ」
「ただ行って帰るだけじゃつまらないし、ヨキさんと一緒に遊べないかなって。確か住んでるところが近いんですよね」
確かに以前聞いた住所から考えると十分近い所にあったはず。
俺は何も考えず、二つ返事で答える。
「いいぞ。確かあの辺、遊園地がリニューアルしたばっかりだし、どうせならそこに行くか?」
俺の言葉にミミが俺の顔を見る。そしてコクコクと頷いた。
「よし、じゃ、明日簡単に予定送るから、大丈夫か確認してみて」
「はい。よろしくお願いします!」
そう言って、その話は終わる。
やがてイルミたちが戻ってきて、いつもの通りに冒険が始まった。
そんな中、ミリンが俺にだけ言葉を送ってくる。
『カリタ殿、何気に断る事を知らないのじゃな』
「いあや、断る必要なかったからな」
『……まあ、気づいてないならそれも幸せじゃのう』
ミリンがなんか意味深な事を言っている。
ま、別にいいかと思いつつ、その時はゲームに集中することにした。
……あれ? 何も考えてなかったけど、もしかして二人でか? 他に友達呼ぶとか言ってなかった気がする。
その事実に気づいたのはその日のゲームが終わり、遊びの計画を立てていた時だった。




