7-8話 地竜と戦いました
間近で見ると、改めてその魔物の巨大さとどう猛さに圧倒される。
確かにゲームではよくあるシチュエーション。
しかし、それをテレビ越しに見るのと、直接体感できるのでは感覚が全く違う。
今までここまで巨大な魔物とは相対したことがなかった。
脳内では危険を知らす早鐘が鳴り響くような感覚にとらわれる。
別に本当に命を獲られるわけでもないというのに足が竦む。
続ける様に強烈な咆哮を浴び、一瞬思考が完全に止まり棒立ちになる。
しかし、そのタイミングで声がやってきた。
『これでどうよ!!』
いつもとは違う口調。甲高いミリンの声が聞こえ俺は我に返る。
「ミリン。通信は直ったのか!?」
『! ……まだ私の声だけ、無理やり繋ぎ変えたのじゃ! でもこれで突破口は出来たのじゃ。後は早いのじゃ』
俺の声にミリンの方も声が通ったことに気づいたのだろう。
若干早口でこちらに答えた。
「状況をわかる範囲で頼む」
『バーゼスは穴に落ちず、向こうから来たあの魔物に一撃ぶち込んだ後、強制ログアウトして戻ってきてるのじゃ。
バーゼスが言うにはクローディアが救援呼びに通信可能になるまで戻った。イルミは穴に落ちたからわからない。との事じゃ』
「把握した」
つまり、クローディアさんが呼んだ救援が来るまで持ちこたえれば、あの地竜に勝てる可能性が出る。
この辺に俺たち以外にプレイヤーがいればだが。
「それで、どうする?」
隣で臨戦態勢に入ったミミが聞いてくる。
俺と同様に青ざめた顔でその地竜を見たまま。
「クローディアが救援を呼んでくるとAIが言ってた。それまで持ちこたえる」
「エラー直ったの?」
「まだ一部だけだそうだ」
鬼戦の事を考えると、運営の対応が早くなっていると言える。
ちゃんと対応策を考えてたんだな、と考えるが、そもそもこんなエラー起こさないようにして欲しい。
まあ今、考えても仕方ないことだが。
ともかく俺は一歩前進し、魔術を行使。闇の腕を出現させる。
ミリンとの会話でようやく落ち着きを取り戻した俺は改めて地竜を見る。
改めてよく見なくてもこの竜は傷ついている。
恐らく、あのエルフの仲間が戦った跡。もしかしたらバーゼスさんのように他のプレイヤーでもすでに挑んでいる人がいるかもしれない。
そのダメージが地竜に蓄積されている。あの魔物は回復しないのだ。
マルチ戦と考えれば、ダメージを与えるだけ与えて倒れるのもありかもしれないが、できれば自分がいる場で勝ちたい。
俺は一歩でたまま、しかし行動を迷っている。そしてそれを許す魔物ではなかった。
咄嗟に反応できたのは、エルフの話を聞いていたからか。
跳ぶように後ろに下がりつつ、闇の腕を防御に回す。
瞬間、闇の腕が切り裂かれ、あっさりと消滅した。何とか俺自身にはダメージがない。
直前に尾を振る姿勢が見えた。あれが攻撃の前兆行動。その後、超高速の爪の振り下ろしが来ていたのだ。
俺は魔術の行使は諦め、武器を弓に変更する。
同時に射撃。流石にその巨体を外すことはなかったが、どれだけのダメージを与えたかも怪しかった。
イルミの技量ならまた違うのだろうが、俺の腕では剣での攻撃の方が良さそうだった。
「ヨキさん! 大丈夫!?」
ミミは視線は地竜に向いたまま問いかけてくる。
俺は再び武器を剣に戻すと、地竜に向かって掛けながら言う。
「大丈夫だが倒せる未来が見えない!」
掛け声のように言いながら切りつける。
今度は手ごたえがある。ダメージ自体は与えていると感じる。
だが、同時に地竜の攻撃の前兆を感じる。
剣を手放し横に転がる。しかし今度は避けきれない。
左腕に衝撃が走る。その衝撃に逆らわずに転がり続けながらHPを確認。
その一撃で半分までに減っている事を確認した。
俺は起き上がりながらも言葉を続ける。
「全滅覚悟で攻撃して後発に任せた方が良さそうだ。幸い魔物のHPは回復しないようだし」
「盛り上がらないけど仕方ないね。そういう方向でいきましょう!」
ミミもそういい武器を弓に変えている。
ミミのレベルだと、近距離戦は近づく間にやられると判断したようだった。
俺は再び前に出る。同時にHPが回復を始めた。
マリオの回復魔術のありがたさを感じながら再び攻撃を開始する。
「ヨキが倒れたら前線崩壊だからな。一撃でやられるなよ」
「善処する」
正直この相手だったら俺よりも回避盾であるクローディアさんの方が相性が良いと感じる。
俺にとっては余りにも攻撃力の高い相手だった。それでもダメージを与えるだけ与えて倒れよう。
俺は覚悟を決めると攻撃を開始した。
すでに戦い始めてから30分は経過した。基本はヒット&防御の地味な戦い。
少しずつ相手のHPを減らせてはいると感じる。実際地竜の動きは目に見えて遅くなっている。
しかし、すでにこちらのリソースは使いきっている状態だった。
俺のHPは残り5分の1。ミミの矢は尽き近接武器を構えてはいるが攻撃に移れない。
マリオの魔力も同様に尽きて回復もできない。サツキさんは、攻撃面では戦力外、基本待機で回復薬の類の融通を担当している。
しかし、その回復薬自体も尽きて、見守るのみとなっている。
「これは、次の一撃で俺は終わりかな」
「そうすると即全滅ね……。できるだけ防御でしのぐの?」
ミミの質問は地竜からの攻撃に遮られる。
最後の盾を破壊され、かつHPがさらに削られた。
なんかもう、なでられただけでやられるHP帯に入っている。
俺はそれでも全員の前に立ち、攻撃タイミングを窺う。
「俺のHP的に無理そうだ。ミミはできるだけ距離をとって。俺は最後の特攻するから。後は時間稼ぎしてくれ」
「……わかった。後は援軍期待で逃げ回るよ」
ミミがマリオ達のもとに下がる。対して俺は武器を両手に持ち、突進を始める。
今まで切りつけた中で一番ダメージが出たと思われる場所に突き刺した。
地竜が苦悶の叫びをあげる。思った以上のダメージを与えていた。
スキルを確認すると、自己犠牲のスキルが発動している。
能力値の底上げがようやく……扱い難しいよな。このレアスキル。
そう思いながらさらに切りつけようとし、しかし地竜がこちらを見ているのは確認する。
明確な攻撃の意思を感じ、俺は観念する。
「……ここまでか」
そう呟くと同時、地竜の目に矢が刺さる。地竜は苦悶の叫びを挙げのけぞった。
正確に地竜の目を射貫く技量。こんなことができるプレイヤーと言ったら俺は一人しか知らない。
ちらりと視線を矢が飛んだ元に向けると、そこにはやはり見知った少女がいた。
イルミはさらに連続で矢を放ち、さらにダメージを与えていく。
俺もその隙に地竜への攻撃を続けようとし、しかしその選択が間違っていたのを把握した。
目の前に地竜の爪が迫っていた。攻撃の前兆を完全に見逃していた。
それに気づいた時にはすでにどうしようもない距離まで迫っていた。
瞬間、意識が喪失し……目を開けるとそこは見知った俺のルームになっていた。
「負けちまったなぁ……。後もう一歩だったっぽかったが」
あっさりとそれを認める事になる。さて、ミリンに聞けば戦況わかるといいけどな。
すいません。体調不良により遅れてしまいました。今回の分は修正入れるかもしれません。




