7-5話 洞窟探索始めました
「っかは! 皆、大丈夫か!」
どのくらい長く落ちたかははっきりしない。
真っすぐ落下した場合、落下死の危険が高かったが、この穴は緩やかに曲がっていた。
両手が使えない状態で、しかし足がギリギリ土壁に引っかかっり若干のブレーキを掛けながら落ちることができた。
そうは言ってもとても止まれる角度でもなく、HPを見ると半分くらい減っている。
足の部分の防具は破損していたため、すぐに予備に切り替える。
ここまでして改めて上を見ても光が見えない。どうやら、相当深くまで落ちたようだった。
辺りは真っ暗で、何にも見えない状態だった。。
咄嗟に庇った人が誰かもわからないほどの暗さ。
身じろぎ一つしないことに不安を覚えるが、こうしていても状況は進まない。
仕方ないので、まずはその人をそっと地面に降ろし、ランタンを取り出し火を付ける。
ランタンの暗い光が辺りを照らす。
ここはかなり狭い空間のようだった。どうやら大きな穴ができたわけではなく、細い穴が複数できていると考えられた。
……つまりパーティ分断されたという事だ。状況はかなり不利な気がするが、愚痴を言っても仕方ない。
幸いここから横道もあり、閉じ込められた事にはならない。恐らく天然の洞窟に繋がっていたのだろう。
まだ、何とかなるか。俺はため息を吐きつつ降ろした人へ目を向けた。
当たり前と言うべきか、その人は直前まで話していたミミだった。
落下の恐怖でだろうか、真っ青な顔をして完全に固まっている。
これ、とんでもなく怖かっただろうし仕方ないか。しかしこのままだと移動に制限がでるし困るな……
まずは、ミミをどうにかするため声を掛ける。
「ミミさん。大丈夫ですか?」
「……」
「ミミさん?」
「……は、はい。大丈夫でしゅ!」
ようやく気付いたのか、慌てて立ち上がるミミ。
ついでに若干噛んでいるのがなんとなく面白かった。
そんなことを思っているとは悟られないようにしながら話を続ける。
「ん、大丈夫ならいいんだ。……どうやら皆とは分断されたみたいだ」
「……ですね。困りました……?」
また、ミミさんが固まっている。
「どうしました?」
「いえ、配信が止まっているようで。録画モードになっているんですよ」
「……あー」
俺の方でもチェックする。
確かに配信が止まっている。念のためログを確認。
確認個所は魔物の咆哮前後。推測が当たっていれば、この辺で何か起きているはず。
「あった」
思わず声を出す。
そこには、以前みたことのある表示があった。
エラー:ナビゲートAIと切断されました
エラー:通信モードオフ
前よりも大分ましではあるが、エラーが出ているのは事実だった。
改善自体はされているようで、エラーの内容は少なくなっていた。
この辺が、運営が対策した結果なのかもしれないな。
しかし、これでは別れたパーティと連絡が取れない。
俺の様子にミミさんが不思議そうに聞いてくる。
「ヨキさん。どうしたの?」
「あ、いえ、通信関係に一部エラーが出ているようです。ま、エラーと言う名の演出かもしれませんが」
「あ、本当ね。シルビアたちと連絡取れなくなってる」
ミミの方でも確認したのか同意してきた。
俺も頷き、言葉を続ける。
「通信できないのは厳しいですが、何とか合流するしかないでしょう」
「あー。そうなると二人で探索になるのね」
「配信上問題ありそうですか?」
「んー。それは大丈夫。私のリスナーは割と異性コラボに寛容だから。これがサツキだったりしたら暴れる人もいただろうけど」
俺の心配に、ミミさんは手を振りながら否定してくれる。
「それなら良かったです。まあ、どうにもならなかったら、強制ログアウトも視野に入れましょう」
「了解!」
気合を入れなおすミミさんに俺も頷きながら、横穴を見る。
俺が前、ミミを後ろの隊列にして慎重に歩き始める。
人工の道ではなさそうで、恐らく罠はない。
その点は普段レンジャー系のスキルをイルミに任せている俺としては助かった所。
ただ、天然のダンジョン故、脆くなったりして危険な場所はあるかもしれなかった。
その点は注意しながらゆっくり進む。
「なんだか息苦しい場所ね」
沈黙に耐えられなかったのか、配信者の性なのか、ミミさんが聞いてくる。
「ですね」
「ヨキさんは、こういう場所の探索はしたことある?」
「うーん。まあ、何回かは」
「へぇ。どういう所?」
ミミさんは案外聞き上手。的確に俺の話を聞きながら話をつなげてくれた。
配信やっている人ってこうなのかな?
いや、クローディアさんはマリオとの会話を聞く限り、丁々発止やって盛り上げるタイプだし色々スタイルがあるか。
ともかくミミのおかげでこのくらい洞窟探索も無用な緊張を持つことなく進むことができた。
もう2時間位歩いただろうか。いくつもの別れ道を行ったり来たり。
何回も行き止まりがありながらも進んで行く。
こういう時、オートマッピングがありがたい。
行ったり来たりはあるけれど、進んでいることははっきりとわかっている。
そう思いながら歩いていると、ミミさんがこっちを引っ張る。
「……?」
視線でミミさんを見ると、ミミさんは唇に人差し指を当てて静かにのポーズ。
俺もそれに習い、動きを止める。
チャットが使えればそっちで会話をするがまだエラーから回復していない。
仕方がないので、身振りのみで意思疎通を図っている。
確かに声がする。反響していてはっきりとは分からないが、何かがいるのは確かだった。
俺はミミさんに待つようジェスチャーをすると、ゆっくり声のする方に近づいていく。
そして、視界にそれが入った時、安堵で脱力することになった。
俺はミミさんに来るよう指示すると、そちらに向かう。
「マリオ、サツキさん。無事だったか」
「あ……ミミちゃん。ヨキさん。私たちは大丈夫です」
丁寧に答えてくるのはサツキさんだった。
あ、そういえば初めて話すなと思いつつ、今は状況を聞くことを優先する。
「マリオさんは、ここで見つけたNPCを、治療中です」
続けて聞いたサツキの言葉にマリオに改めて視線を合わせる。
そこには瀕死の重傷を負っていただろうエルフのNPCと、それを治療するマリオがいた。
「NPCがいたか……」
「私たちよりも前に来ていたみたいですね。まだ話もできていませんが」
「なるほどな」
状況によっては一旦撤退も視野に入れる必要がありそうだな。
そう思いながら、マリオの治療を待つことにした。




