7-4話 魔物退治に出かけました
道中は何事もなく目的地近くまできた。
そのためかほとんど雑談メインで過ごすことになったが、それはそれでいいだろうと思う事にする。
念のためできるだけイルミやバーゼスさんを中心に話して、俺とマリオは一歩下がることにしていた。
それでも気を使ってくれているのか。シルビアさんとミミさんはこっちにまで話題を振ってくれている。
アズサとは一言二言程度だが、雰囲気クール系のキャラとして売っていそうだった。
……わからないのがサツキだった。結局今まで一言も話していない。ま、それはそれでいいけどな。
やがて目的地に近くになる。
街道にある衛兵待機所がある場所。
旅人用の簡易的な宿に泊まりながら、この先の方針について話す。
「馬車はここまでかな。宿に待機させておいて、後は歩きの方が良さそうだ」
「そうだねー」
「どうして?」
俺とイルミの言葉に、シルビアが聞いてくる。
それに首肯してイルミは言葉を続けた。
「この先、結構モンスターが多いからね。馬車の弁償はしたくないかな?」
「ふんふん。なるほど。じゃあしょうがないねー」
あっさり納得するシルビア。他の面々も頷いたので、次の日の方針が決定する。
次の日は日が昇る前から行動を開始する。ここからなら日が高いうちに目的地に到着するはずだった。
夜に魔物の巣に入るは避けたい。ただでさえ数が多いのにわざわざ戦い難い状況にしたくはない。
「出発しんこー!」
元気よく歩き出すシルビア。
その後ろをやれやれと言った感じでアズサがそれに続く。
それに続くように全員が歩き出いた。
進行はスムーズに。やがて大きな森に入ることになる。
この辺からは本格的に魔物が出現する場所で、いやでも警戒が増す。
そのまま移動を続け、異変に真っ先に反応したのはイルミだった。
「うわぁ。なんか結構いるけど」
「何匹くらいだ?」
「たくさん。100は越えてるよ」
「マジか」
システムスキル『索敵』持ちのイルミの言葉である以上、疑問を挟む余地はない。
俺たちの会話に全員が緊張する。
同時に俺のパーティの視線は一斉に俺の方に向く。こっちのパーティのリーダーは俺だもんな。
こういう時はシルビアたちやクローディアさんを目立たせるようにした方がいいのだけれど、状況はそれを許してくれなさそうだ。
俺は一呼吸で考えを纏め指示を始める事にする。
「1対1でペアを組んで敵と戦う事。基本俺たちのパーティが戦闘の主になるから、シルビアさんのパーティは補助をよろしく。
出し惜しみはなしで行くぞ。数が多すぎる」
「はい! わかりました! 皆いっくよー!」
シルビアさんの返事と共にコンビを組む。
俺は青髪の少女、ミミと組むことになる。
隣に立ったミミに俺は念のために声を掛ける。
「ミミは前衛か?」
「ええ、だから君の所に来たわけよ」
「了解! それじゃ援護頼む。俺たちは切込み隊長になるぞ」
まずは魔術を使用。
左腕に沿うように巨大な漆黒の腕を作り上げる。
結構応用が利くこの魔術は乱戦でも使い易い魔術だった。
一方隣で目を丸くするミミは聞いてくる。
「前衛で魔術?」
「うちのパーティ、クローディアさん以外は全員使えるよ」
「うそでしょ! こっちはカナエが魔術学園行って、ようやく初級の魔術を使えるようになったのに!
それでも異例の習得速度だっていってたわよ」
「プレイ時間の差だよなこういう所は」
うちのパーティ。誰一人として魔術学園に行ってないという事は黙っておく。
……それで1日以内で全員魔術使えるようになっているんだから、覚え方で習得速度も変わるのだろうか。
俺の場合は、ある意味チートNPCがいたから例外だろうけど。
他愛もないことを考えながら支援魔術を待つ。
マリオとバーゼスさん、そしてイルミから支援魔術が飛んできた。
これで攻防速度バフが付いたことを確認する。
「ほわぁ。凄いな。ヨキのパーティってこんな戦い方ができるのか」
「ミミさんの所もこれからできるようになるから。じゃ援護よろしく!」
俺はそう言って、ダン! と大地を大きく蹴る。敵のど真ん中に飛び込んだ。
同時に闇の腕を振り抜き奇襲の薙ぎ払いを行う。
周囲にいた魔物を薙ぎ払う。奇襲と題人数への同時攻撃により敵のヘイトが俺に向いた。
前衛タンクの役割を果たすべく、続けて近くのゴブリンを剣で刺突。
その一撃であっさり倒せる。
……思ったよりかは雑魚の集まりか?
この一撃でおおよその算段をたてると同時、一気に敵の攻撃が来る。
ヒュージウルフが正面から爪を振るう。
体を捻って回避。
オークの拳が側面からたたき込まれる。。
回避は無理。防具へ当たるように誘導しダメージを最小限に。
吹き飛ばされないように踏ん張ると、そのオークへミミが攻撃を仕掛けていた。
オークの注意がミミに行くのを確認し、俺は次へ意識を向ける。
弓を持ったゴブリン3体から同時に狙われる。
やはり回避は無理。しかし矢が放たれる前に別方向から飛来した矢によってゴブリンは絶命する。
見なくてもわかる。あれはイルミが放った攻撃だ。
俺は至近距離にいるオークに剣で攻撃を加え、やはり一撃で倒しきる。
ミミはオークが倒れたことを確認し、次の攻撃を別のウルフへと向けた。
俺の周囲には一瞬の空白が生まれる。至近距離に敵はいない。
装備を投げナイフに持ち替え背後に振く。この乱戦だ。敵がいないわけがない。
案の上、振り向きざま目に入った一体のレッドキャップへ投げ付ける。
シルビアと交戦中だったその魔物は俺の攻撃を受けぐらりと体を揺らす。
同時、カナエが雷の魔術を放ちレッドキャップを倒しきった。
身を回しながらざっと戦況を見る。
イルミとサツキのコンビは弓で状況を見ながら応戦。
マリオとアズサはマリオが補助魔術を行使しつつアズサがマリオを護衛している。
クローディアとシルビアは俺と同じように前衛に飛び出し、縦横無尽に敵を倒していた。
そして、バーゼスさんんとカナエは……
カナエの魔術の少し後、バーゼスさんの魔術が完成する。
同時、俺たちと敵対していた魔物の動きが唐突に止まる。
まるで金縛りにあったように動けなくなった魔物達。バーゼスさんの魔術『恐怖』を喰らい行動不能に陥ったことと確認する。
俺たちはその隙に一斉に攻撃を仕掛けた。
まともに動けない魔物はあっさりと倒れていく。
わずか10分くらいの戦闘。その戦闘で100を超えていた魔物が全滅していた。
俺たちは敵がいないことを確認すると一息を付く。
「俺たち、意外と強くなってるなぁ。思ったより簡単だった」
「あのね、マリオ。5人だけだったら大変だったわよ。シルビアのパーティもいたから何とかなったのよ」
「そりゃそうか」
マリオとクローディアさんの掛け合いに俺は苦笑を浮かべる。
俺たちも強くなっているが、それでもシルビアさんのパーティがいないとこう早く倒すのは無理だった。
そう思っていると、隣にミミがやってくる。
「お疲れ様。いやいや、ゲーム運営が推薦するだけあるわ。本当に強いね。助かったわよ」
「負けたらゲームの進行上大変だし、当然の役目だよ」
「あの数は私たちだけで言ってたら確実に全滅ね」
「俺たちだけどもきついですよ。どうやったって手数がいります。この場合は」
「ふふっ、ありがと」
そう言ってミミさんがはにかむように笑った。
俺としても役割は果たせていそうだ。と安心する。
しかし、その安心が油断に繋がったのかもしれなかった。
唐突に巨大な方向が響き渡る。
一瞬たじろぎ、硬直してしまう。
あれが、今回の目標の魔物の咆哮か?
だとしたら、近くにいるのかもしれない。最大限警戒しないといけない。
そして、その咆哮に紛れ、別の異変を見逃してしまう。
その異変に気付いたのはイルミだった。
「みんな! 走って! 崩れる!」
その言葉の意味が浸透する前に、地面が揺れる。
何かが崩れる音を感じ、逃げるのは無理だと判断する。
同時、地面が崩れ明確な浮遊感が襲ってきた。
声を上げる暇もない。咄嗟に近くにいた人間の腕も引き込み、護るように抱きかかえた。
突如出来上がった。天然の落とし穴。
恐らく目標の魔物が誘導したであろうその罠。
俺たちはその罠から逃げ出せず、落下していく事になった。




