4-2話 ゲームセンターに行きました
駅の近くにある大型アミューズメント施設、そこに目的の場所がある。
「ここ、一度来たかったのよね。カリタ君たちはいいなー。結構来ているんでしょ?」
「まあ、そうですね。お金と暇があれば割と来てますね」
羨ましそうに聞いてくるバーゼスさんにミキが答える。
確かにこの辺じゃ一番大きな施設だったよな。ここ。
「よっし! じゃ、行こっ!」
速足で歩き始めるバーゼスさん。
その様子に俺とミキで顔を見合わせる。
「なんか、バーゼスさんが一番年下みたいね」
「同感だ」
あれでも大学生なんだよな……。
大学生なんて、すごい大人だと思ってたんだけどな。
「……置いていかれないように行こうか」
「そうね」
そう言って俺たちも後に続く。
ゲームセンター『AOKI』
ここは最新のゲームからレトロなゲームまでかなり大がかりにそろえている施設だった。
入り口から見えるのは最新のVRゲーム。
ネットワークで最大100人の同時対戦できるサバイバルゲーム。
最後の1人になるまで戦い。その状況はホログラムで表示され、周囲で観戦もできる。
最大金額は決まっているが、投げ銭もでき、気に入ったプレイヤーにファイトマネーを渡すことができたりもする。
定期的に大会も開催されていて、プロゲーマーも多数参戦している。
当然、そのゲームは大変人気で並んでいる人も多かった。
「相変わらずすごいな。このゲーム」
「遊んだことある?」
「1回だけ。すぐ負けたけど」
「あの時はひどかったわねー。私が95位、カリタは98位だっけ」
「フィールドに到着して速攻狩られたもんなー」
そんな話をしながら観戦しようとしていると、ここでプレイしている人が勝ち残っているらしくどよめきが起きていた。
表示では残り2人まできていて、最終盤まで来ていることがわかる。
「おー、残り2人かー」
「相手もプレイヤー名見えたね。ミミテア……って、結構やり込んでいる人だよね」
「あ、確か、こないだゲーム雑誌のインタビュー受けてた人よ。準プロレベルだったはず」
ダン! と発泡音と共に、こちらのプレイヤーが木の陰から飛び出す。
一方のミミテアが隠れながら銃身だけを出しノールックで発砲。普通ならただの牽制射撃のはず。
しかし、こちらのプレイヤーに何発かは当たり、急速にHPが減っていく。
「どうやって当てているんだ……」
「さっぱりわからないわねー」
「多分、発砲音から位置を推測、相手の予想行動位置に向けて撃ってるって感じじゃないかしら?」
「エスパーかよ……」
こちらのプレイヤーもひるまず装備を変更。手りゅう弾に持ち替え数秒待った後投げる。
同時、こちらのプレイヤーは臥せた。
「こっちはこっちでここまで切り札温存かよ」
「突撃掛けた時点で、手持ちがないように見えたのにね」
「相手の油断を誘うためのブラフみたいね」
相手の建物に手りゅう弾が到達した瞬間に爆発が起こる。
数舜の沈黙の後、しかし試合は終わらない。
ミミテアを仕留め切れていない。
こちらのプレイヤーは今までの進行方向とは逆、真後ろに向け銃を構えた。
直後、同時に発砲音が聞こえ、こちらのプレイヤーのHPが0になる。
試合終了になった。
歓声と共に何人かがこちらのプレイヤーに投げ銭をしているのも見える。
「惜しかったね。後、少しだったのに」
「よく見たらミミテアのHPも極少になってたな。当たり所次第では引き分け迄持ち込めてたかもな」
「いやー、白熱した戦いだったな」
3人で言い合いながらなんとなく、VR室から出てくるプレイヤーを見る。
……よく知っている顔をそこにあった。
そのプレイヤー、高校の同級生、シブヤマツルもこちらに気づいたのか近寄ってくる。
「よお! カリタにミキちゃん。お前たちも遊びに来たのか?」
「あー、お前だったのかよ。そりゃ上手いわけだ」
特にFPSをやり込んでいるマツル。考えてみればこの辺でマツルレベルのゲーマーはいなかった気がする。
「当然だろ? しかしやっぱミミテアは強いなー。壁を感じるぞ」
苦笑するマツルに俺は俺でため息で応じた。
「プロに勝てそうなレベルのお前もたいがいだろうが」
「へー、マツル君って言うんだ? カリタのお友達?」
「あ、はい、そうです」
急に会話に入ってくるバーゼスさんに俺は答える。
一方、マツルはと言うと、バーゼスさんを見て完全に固まった。
……あ、これ、まずいな。
直感的に察して、どうしたもんかと思う。
この銀髪美少女。外見だけなら間違いなくマツルの好みに直撃している。
マツルは恋愛ゲームなんてやろうものなら必ず銀髪キャラを攻略するレベルだった。
そんな美少女と俺が普通に話しているのだ。
話がややこしくなりそうだな、と心の中で諦めに似た境地に達する。
明日学校で変な噂が広まらないといいけどな。
「……おい。カリタ」
ようやく再起動がかかったのか、俺に腕を回し、小さな声で聴いてくる。
「お前の周りになんでこう美少女が集まるんだ」
「いや、そうは言われてもな」
「どこで出会った? 出会い系か?」
「バカか?」
とにかく今のマツルはきっと冷静さを失っているだろう。
説明はしないでただ罵倒する。さっさと頭を冷やせ。
「っく!」
マツルは眼鏡の位置調整し、とりあえず俺から離れた。
そしてバーゼスさんに向き直ると開口一番
「カリタの親友のシブヤ マツルです! よろしく!」
あ、今俺の事をだしに使おうとしたな……。ま、いいけどな。
そんなマツルに対し、バーゼスさんはにっこりと笑顔を向ける。
「クレア・バーゼスです。さっきのゲーム上手かったね。今度やり方教えてよ」
「!? ええ、当然ですよ! 今は……他にもプレイヤーいますから、別の日にでも」
「ありがとう! あのゲームやってみたかったの!」
あっさり意気投合するバーゼスさんとマツル。
二人の動きを見て、なんとなく思う事がある。
マツルの事は置いといて……バーゼスさんの心の距離の取り方がおかしい気がするな。
なんというか……初対面の相手への距離と取り方じゃない。
一気に距離を詰めすぎるというか。なんというか。
これは、下手をすると相手を勘違いさせやすい種類の女性な気がするな。
「バーゼスさん。じゃ次いきましょうか?」
「はーい。ミキちゃん。何して遊ぼっか」
ミキも言葉にバーゼスさんは振り向き頷いた。
ミキも空気を読んだようだ。バーゼスさんに声を掛け歩き始める。
バーゼスさんに隠れて一瞬だけ俺を見る。
俺も微かに頷くと先頭に立って歩こうとする。
一方、マツルは俺を振り向く。
その目は明確にこう言っていた。
『俺も絶対ついて行くからな』
……なんか、頭痛い問題ができた気がするな。




