3-5話 学校でゲームの話をしました
「どうした。眠そうだな」
「あー、ミキとゲームしててな……」
「そういう事、平然と言ってると男の嫉妬がすごくなるぜ」
「そういう関係じゃないんだけどな」
「それでどうして付き合ってないんだって話だぞ」
「……悲しいよなあ。異性として見られてないってことなんだぞ」
「……ああ、なんかすまんな」
高校の昼休み。昼寝を決め込もうと思っていると、マツルに声を掛けられる。
眼鏡で中分けの髪型。ごく普通のオタク系男子で俺の貴重な友人でもある。
そいつと他愛もない雑談をしているとマツルが不意に話題を変えた。
「そういえば、昨日動画配信見てたんだけどな。面白そうなゲームの配信してたぞ」
「へー。そうなんだ」
「ミルシア・シードってタイトルなんだけどな」
「ふんふん」
「俺がよく見ている個人配信者が始めてたんだ。3人組でやってたけど、凄く楽しそうだったな」
あ、あの人か……。心の中で思っておく。
マツルが見ている位だし、有名な配信者なのかもしれないな。
「俺、今度そのゲームやろうと思っているんだけど、カリタはどうする?」
「まあそのうちな」
あえてやってるとは言わないでおく。
こいつが始めたらID教えて貰って乱入しよう。
そんなことを思いつつ知らない体で話を合わせる。
「こう、ゴブリンの群れを3人で協力しながらバッサバッサ倒していってな」
「ほうほう」
「洞窟の奥で、さらわれた人を助け出すんだ」
「へぇ」
「本当に3人の息が合っててな。迫力満点だったぞ」
「そうだろうなぁ」
あっちはあっちで初心者としては結構なイベントをやっていたらしい。
ゴブリンの群れじゃ、負ける可能も性高かっただろうに。すごいな。
そう思っている間もマツルの話は続く。
「女2男1のバランスもてぇてぇになりやすくて好きだけど、男2女1のバランスもいいな」
「へぇー」
「あの3人の中じゃ女性が一番プレイヤースキルがあるな。男二人を引っ張ってたぞ」
「あ、そうなんだ」
会ったときは女性が割と後ろに下がってた感があったけど、意外だった。
まあ、そうやって楽しめているんなら俺としても嬉しいことだった。
「カリタも動画探してみな。絶対気に入るから」
「わかった。探しておくよ」
そんな口約束をして休みが終わる。チャイムが鳴った。
……後少しで学校から解放されるぞ。頑張るかー
そして放課後。そそくさと帰る。帰宅部はこういう時楽だった。
ミキの方は何か助っ人で呼ばれているらしいので、考慮に入れない。
まあ、時間は守る奴だから問題はないはずだ。
家に帰るといつものようにPCを立ち上げる。
目的の物はミルシア・シードのゲーム動画だ。
「……結構あるな」
どうやら、あの個人配信者が切っ掛けになったのか、
この一日でプレイ人口が増えているようだ。
しかも配信のハードルが著しく低いのも相まって、ちょっとした配信ブームになりかけているようだった。
「おおう。ギルド内も結構人増えてるな」
適当に配信をみていると、ギルド内をせわしなく働いているリルムも写っていた。
こんだけ多くなると気軽に話せなさそうだな……と、ちょっと思う。
ま、いいことだけどな。そう思っていると、少し休憩なのかテーブルの椅子に腰かけている姿が見えた。
そこにこの動画の配信者の女性が近づいていく。
『……はぁ』
『あら? リルムちゃん。どうしたのため息なんてしちゃって』
『あ、テレジアさん。聞いてました』
『今のは想い人がこないっ……て感じのため息だったわよ』
『そ、そんなんじゃ……ある、かもしれません』
『へぇ。どんな人なの?』
『私がギルドの受付して初めて応対した人なんですけど、今は護衛で国を離れているの。
冒険者なんだからそれが当たり前なんですけど……心配は心配で』
『あらあら、その男性は果報者ねー、リルムちゃんにそんなに心配されているなんて』
このテレジアさんって中身絶対噂好きのおばちゃんだな。
しかし気になる会話だった。初めての応対者って……俺の事か?と一瞬思うもミキだっていた。
魔術だって教えていたしもしかしたら百合なのかもしれない。
『ま、元気ないとその男性も困っちゃうと思うわよ』
『……そうですね。ヨキさんが帰ってきたら元気に挨拶しますね』
あ、確定来た……。このゲームRPGだよな……ギャルゲーじゃなかったはずだよな。
まあ、リアルではないし深く考える必要はないんだけど……。
そういうロールプレイをするのも悪いわけではないんだけど……
リアルと遜色なくて、勘違いを起こしそうで非常に困るなこのゲーム。
『そうそう、折角の恋なんだから積極的に行かないとね。いい男ってのは待ってると他に取られるわよ』
『はい、頑張ります!』
あ、小さくガッツポーズしてる。
と言うかテレジアとかいうプレイヤー! リルムを煽るの止めてくれ!
俺、彼女なんてできたことないんだ。どう対応していいかわからないぞ!
そんな俺の心の声など届くわけもなく、話が終わったのかプレイヤーが移動を開始した。
当然、配信画面もプレイヤーを中心に動くわけで、そこまででギルドから画面が離れる。
「……ま、ゲームだからな。そういう要素もあるんだろうな」
そういうのもロールプレイとして楽しもう。そうしよう。
このゲーム。キャラクターもリアルだし、ガチ恋するプレイヤーも出そうだな。
……それはそれで社会問題化するんじゃないだろうか。
まあ、もしリルムががゲーム内のキャラクターじゃなかったら嬉しいってレベルじゃないのだけど。
そういう仮定は空しいだけか。
そんなことを思いつつ時計を見る。もうすぐ約束の時間だった。
ミキやバーゼスさんを待たすわけにもいかない。
俺は再びログインする。
一瞬後、俺のルームに立っていた。
まだ何もない部屋、その中央に昨日と同じようにミリンが立っていた。
服装も全く変わっていないのがゲーム内のAIだと認識できる要素で逆に安心できた。
俺に気づいたのであろう。ミリンは視線を向けるとこちらに近づいてきた。
あ、なんか若干スキップしているような気がする。
『おかえりなのじゃ』
「ごきげんだな」
『そうなのじゃ! なんと、登録人数が千人を超えたのじゃ』
「本当に早いな」
あの個人配信者の影響力って大きいんだな……。
嬉しそうに話すミリンに俺も頷く。
『これもお主のおかげなのじゃ』
「いや、たまたま影響力の大きい人が見てただけだよ。このゲームが面白くなきゃここまで増えない」
『本当は何かお礼をしたいのじゃが、流石にそのような権限はないのじゃ』
「あ、そうなんだ」
『ナビゲートが仕事じゃからのう。残念ながら直接的なプレゼントとかはできないのじゃ』
「まあ、運営側が特定のプレイヤーを贔屓はしては駄目だからな。当然だ」
『そう言って貰えると助かるのじゃ』
そんなことを言っていると、ミキとバーゼスさんから連絡が入る。
「あ、そろったみたいだぞ」
『わかったのじゃ。ではいってらっしゃいなのじゃ』
相変わらず上機嫌なミリンに挨拶をし、ゲーム世界へ入る。
さあ、護衛の続きだ。




