3-1話 ルームに戻ってきました
「あーどうしようかな……」
とりあえず配信は停止して、状況確認。
配信の視聴人数は相変わらず10人前後を推移している。
まあ、この辺これ以上増えるとも思えないので、それはいいか。
ルームにいても特にやることがない。
体感時間の加速倍率落としてもらうかなぁと思っていると、ルームへの侵入許可申請が入ってきた。
はて、誰だろうと思って詳細を確認。
「……あ、バーゼスさんか」
IDと共にネームが表示されていたのでとりあえず許可する。
拒否する理由も特にないし。
しかしバーゼスさんから連絡あるとは意外に思う。
ギリギリまで遊ぶなら彼女がルームに戻るのはもうちょっと後のはずだけど、早めに寝たのだろうか。
そんなことを思っていると、扉が開き、先程まで一緒にいた銀髪の少女がそこに立っていた。
こちらが気づいたことに気づくいたのか軽く右手を挙げた。
「よっ! 悪かったね。君を犠牲にしちゃったよ。ま、おかげで私は逃げ切れたけどね」
……あれ? この人バーゼスさんか?
全然言葉づかいも違うし、雰囲気もさっきまでの人形然とした雰囲気が消え、どちらかというと年相応の悪ガキの雰囲気だ。
なんというか今までの雰囲気と全然違って戸惑ってしまう。
その俺の戸惑いを感じとったのか、彼女はニヤリと笑った。
「ふっふっふ。ゲーム中はロールプレイしてるからね。びっくりした?」
「……全然雰囲気が違うからな。正直戸惑った」
「ま、そっちも丁寧に対応してたからね。私の中身なんてこんなんだし、君ももう少し砕けて大丈夫だよ」
「まあ、そう言ってくれるなら助かるよ」
なるほど、ロールプレイか。すっかり騙された気分でもあった。
でも、今の彼女の方が話すのにも気が楽だったりするのでありがたかった。
「それで、わざわざルームに来るなんてどうしたんだ?」
「あ、そうそう。さっきの持ち物返しに来たのよ。はい」
彼女がそう言うと、こちらに持ち物譲渡のアイコンが出る。
俺はそれを承認すると、預けていたアイテムが戻ってきた。
「ありがとう。助かったよ」
「私の方は無傷で済んだから。お互い様よ」
彼女は微笑むと、こちらのルームをくるっと見る。
「あ、君はまだルームの飾り付けしてないんだ」
「そのうちしようとは思ってるけどな。まずはゲームだよ」
「ま、普通はそうだよね」
そう言いながら、彼女は視線を移すと、俺のナビAIを見る。
「へー。君のナビAI可愛いねー」
「ま、可愛いっちゃ可愛いな」
「私の方は格好いい男性型だったよ」
「あ、本当に一人一人違うんだな」
「そうみたいね。あー、君の所のような可愛い系AIでも良かったかな?」
「まあ、こちらから選べるわけではないけどな」
話題のAIは何やら編集している最中だった。
さっきの負け戦闘をどうやって見せるか考えているようで唸っている。
同時に複数枚のモニターを操作しているようで、視線があっちこっちに行っている。
「まあそうだよね。……あ、そうだ。ヨキ君。連絡用のフレンド設定していいかな?」
「もちろん喜んで。明日はどうする?」
「……んー。一緒に遊びたいけど、まだイベント途中だからちょっと難しいかな。私の方のイベントもう少しかかりそう」
「今日みたいに手伝おうか?」
「それも有りかと思ったんだけど……。見た感じ、君もイベント中でしょ」
「……あ、あれ、そういう事か」
途中までで止まったと思っていた女性の誘拐未遂。あの洞窟の出来事とつながっていたとしたら、自分も間違いなくイベント途中だという事だ。
下手にほったらかすと失敗になるかもしれない。
「確かに俺もそうみたいだ。残念だ。でもこちらのイベントに余裕がありそうなら手伝うよ」
「私の方もね。今度また一緒に遊びましょ」
そう言って、彼女は外に繋がる扉に戻る。
扉を閉める直前、再び顔だけ扉から出してウィンク一つ。笑顔をこちらに向けてきた。
「じゃーねー。また今度」
「また今度」
今度こそ、扉が閉まる。
俺はため息を一つ吐くと、脱力した。
「嵐のような娘だったなぁ」
ゲーム中とギャップが大きくて本当にびっくりした。
別のゲームでああいう遊び方してる人もいたけど、あそこまで人格を変える人は初めてだった。
そんなことを思っていると、動画の投稿が終わったのかミリンがこちらにやってくる。
『楽しそうに話していたのう』
「ああいう人と思わなくてびっくりはしたよ」
『ま、そういう事にしておくのじゃ』
「どういう意味だ?」
『鼻の下が伸びていたという意味じゃ』
「……そうかー」
しかたないだろう。あんなかわいい子と話す機会なんてめったにないんだから。
あ、ミキがいるか。リアルでバーゼスさんと遜色ない美少女だと思うが俺の中でカテゴリが違うから別という事で。
まあ、バーゼスさんのリアル姿は違うだろうけど。プレイヤーのアバターは基本美形化されるし。
そう心の中で言い訳をしておきつつ考えるのを止めた。
『さて、次の日まで一気に進めるとするかの?』
「体感時間加速を切ったらすぐだもんな。そうしようかな」
『了解なのじゃ。後、ステータスは確認しておくのじゃ』
「そうだった」
HP 120→150 MP 10 SP12→14
力15→20 素早さ10→13 体力14→18 知力10
剣技能2→4 盾技能1 採取0→1
かばう0→1 自己犠牲0→1
「色々増えてるな」
戦闘技能っぽいものも増えていた。
意外とスキルが増えるの早いなと思いつつ確認を続ける。
「かばうはわかるとして……自己犠牲?」
スキル名はわかるが効果は分からない。
「なあミリン。この自己犠牲ってスキルはなんだ?」
『ちょっと検索するのじゃ……あー、なるほど』
ミリンは一つ頷くとこちらを見る。
『味方を先に行かせて一人残るとステータスにバフが掛かるスキルじゃな』
「ここは俺に任せて先に行け! とかやるやつだな」
『そうそう。状況が限定されるスキルじゃから、発動すれば効果量は大きいのじゃ』
「主人公向けのスキルじゃないなあ」
まあ、それでいいんだけど。
こういう動きはやれると楽しいよな。
『マスターは無理するタイプじゃからな。あると便利じゃろう』
「ま、確かにそうか」
ミリンにジト目で見られた気がするが、あえて気づかない事にした。
『全く……、あ、そろそろ時間なのじゃ』
「了解。じゃ、行ってくる」
そうして再び意識が白み始め……次に気づいた時には、始めのログイン時の門の前だった。
「あ、死んだ場合はここが開始場所なんだな」
一人呟き町に行こうとし、止まる。
そばには、見知らぬプレイヤーが3人立っていた。




