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2-5話 初めてダンジョン探索をしました

「しかし暗いですね。バーゼスさんは明かりを持ってますか?」

「一応冒険者セットは買ってありますわよ」


そう言って、彼女はランタンを取り出す。


「念のため2セット買ってありますので、貸せますわよ」

「あ、助かります」


彼女からランタンを受け取り、明かりをつける。

明かりに敏感な敵がいたら目立ってしまうがそもそもこちらが見えなければ探索ができない。

隠密は気にするだけ無駄だと思うことにした。


俺が前衛、バーゼスさんが後衛となり、ゆっくりと洞窟に入る。

淀んだ空気が、否が応でも緊張させる。


「……多分、この洞窟はそこまで深くはないと思いますわ。気軽にいきましょう」


バーゼスさんがこちらに声を掛けてくれる。

多分、俺の緊張が彼女に伝わったのだろう。

彼女の配慮に感謝しつつ、俺は頷くと、ゆっくり空気を吐き出した。


一歩一歩、慎重に歩く。自然の洞窟に見える以上罠はないとは思うが、足元がもろくなっている可能性はある。

このゲームのリアリティからおそらくその辺まで再現されていると推測している。


100m程歩いたところ、左右に分かれる道があった。

声はあれから聞こえてこない。


「どっちだと思いますか?」

「……こういう時は念のため」


彼女は、ランタンの明かりを左右以外の方向に向ける。


……別の横道か

彼女が照らす先、左右以外の空洞があった。


「……道が三つ」

「場合によっては挟み撃ちを警戒しないといけませんわね」

「そうなったら普通に全滅ですね」



一人死亡までならまだいいが、全滅が普通にありうる状況。

アイテム全ロストはきついか……。入ったばかりだが今ならまだ引き返せる。


そう思いながら、彼女の照らす明かりを頼りに道を見る。

すると、ふと不自然な点に気づいてしまった。


「バーゼスさん。ここ、変じゃありませんか。このへこみ具合、人間の足跡では?」

「……ですわね。ここに人間が出入りしている?」


彼女が思案気に視線を足元に落とす。

俺は、とりあえず思いついたことを話す。


「可能性1。自分たち以外のプレイヤーがここに入った」

「その場合、あの獣の声は?」

「プレイヤーの戦闘音の可能性があるかな。……ただ、これだとミリンの反応と齟齬があるかな」

「その場合は、止めたそうにはしませんわよね」


俺は彼女の話に頷く。


「だから可能性2。敵対NPCがここに来ている」

「そうなると相手は、ここを根城にしている山賊とかかしら?」

「当然レベルにもよると思いますが。ミリンの様子からすると、戦闘は避けた方がいいと思います」

「……そうなると、戦闘になったら全滅になる可能性が高いですわね」


相手が魔物ではなく、人間の可能性がある。

そうなるとできれば戦闘を避けたい。全滅した場合、アイテムロスト率はかなり高くなる。

しかし戦闘は避けたいが人間だった場合、こんな場所で何をしているか気になりもした。


「あまり良くないことをしているNPCがいるとしたら、確認だけして街へ連絡しますか」

「……まあ、それが無難かしらね。あまり無謀なことをするのもどうかと思うし」


結論として、やや慎重気味の方針になった。

まあ、ミリンからある意味警告をされている。無理をする必要はないだろう。


二人で頷くと、さらに歩みを進める。

相変わらずの一本道。しかし視線の先に自分たち以外の明かりが見えた。

俺たちはランタンに布を被せ、明かりを遮る。


ヨキ:では行きましょう

バーゼス:ええ


お互いTELLで意思表示をし、少しづつ進む。

しばらくして、声が聞こえた。俺たちは止まり、耳を澄ます。



「……おい。上手くいってなさそうだな」

「余計な邪魔が入った。クソッ! 今頃たんまり金を頂いてこんな洞窟からおさらばだったのになぁ」

「まあ、まだ時間はある。アレを必ず連れてこい」

「わかってらぁ!」


一人はいかにも荒くれの声。非常に分かりやすくて助かるな。

そしてもう一人は落ち着いた男の声だった。


ヨキ:このパターン。要人の誘拐ってところか?

バーゼス:そうですわね……ここで叩くのも手だとは思いますが。

ヨキ:勝てない……でしょうね


こういう時のパターンで怖いのは落ち着いた声の男の方だ。

大抵強キャラに決まっている。


バーゼス:戻りますか?

ヨキ:ええ、そうですね


これ以上いてもいいことはない。

そう判断して、少しずつ道を戻る。


……その判断自体は間違っていないはず。だが、根本的な失敗があった。

挟み撃ちの可能性を考えていながら、結局無視していたのだ。


「貴様!!」


もう少しで分かれ道に出るところ、そこで別のNPCに鉢合わせしたのだ。

恐らく中にいたNPCの子分だろう。


敵の誰何の声は後ろまで響く。中の相手にばれたのは想像に難くない。


バーゼスさんを押しのけるように俺は相手へタックルを仕掛ける。

そのまま二人して倒れこむように転がった。


俺は同時にインベントリを操作。

バーゼスさんへとアイテム譲渡のコマンドを選択する。

意図を把握したのだろう。バーゼスさんは頷きアイテムを受け取ると、俺たちを無視して走り抜ける。


「なっ! テメエ! 逃げるな」

慌ててて追いかけようとする敵を俺は抑え込み、唯一残した投げナイフの柄で殴打。

敵を昏倒させる。


……これでよし。

バーゼスさんが逃げきれればアイテムロストはほぼなし。

なら、ここで俺がすることは時間稼ぎだった。


実際息の吐く暇もなく奥から二人の男が現れる。

一人は、いかにも山賊然とした大柄の男。

そして、もう一人は……金属鎧を纏った男だった。


金属鎧の男は無言でこちらを見る。

一方、山賊は笑いながらこちらに武器を構えた。


「運が悪かったな! 冒険者。アレを聞かれた可能性があるなら殺すしかねぇ」


俺はその言葉を無視し、武器を構えた。


「なんだぁ、やる気か! 御館様はそこで見ていて下せえ。俺一人で十分だ」


相手は嬉しそうに笑うと、向かってくる。


思惑通り。下手に反して時間稼ぎを疑われるより戦う方を選ぶ。

それに恐らく金属鎧の方が偉いし強い。そして山賊は一度何かを失敗している。

なら、見栄を張って山賊単独でこちらと戦おうとするだろう。

二人相手より一人だけ相手にする方が時間を稼げるはずだった。


――そして、数合の打ち合い後、


「おらぁ!!!」


山賊の斧が俺の胴に命中。致命攻撃だったらしくHPがあっさり0になるのを見ながら、意識が一瞬途切れた。






『おはようなのじゃ。気分はどうじゃ』

「……大丈夫」


気が付くとミリンが俺の顔を覗き込んでいるのが見えた。

ルームに戻ってきたという事は、死んだんだなぁ。


『いくらゲームとは言え、あまり無茶はしない方がいいのじゃ。プレイ時間が減るのじゃ』

「そうだな。すまなり。気を付けるよ」


何やら怒っているミリンに謝る。

とりあえず、それでミリンの気持ちは落ち着いたのだろう。

表情が戻ったのを確認してから、念のためイルミへとTELLを送ることにした。


ヨキ:死んだ。ゲーム内時間で次の日までインできない。

イルミ:草。……リルムには適当に誤魔化しておくね

ヨキ:助かる


イルミの反応はありがたかった。リルムには心配を掛けそうだなとは思う。

ま、ともかく。……次の日までどうしようかな。

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