2-4話 野良パーティーを組みました
「へぇ。道具屋の依頼ですか」
「ええ、この辺に咲いている薬草の採取を依頼されましたの」
バーゼスさんと臨時のパーティを組み、雑談しながら目的地に向かう。
聞くと、採取のお使いイベを行っている最中だった。
「ギルドの依頼のほか、そういう個人依頼のイベントもあるのですね」
「私はギルドには行ってませんから」
「え、登録した方がいいと思いますが、色々割引もありますし」
「まあ、そういうプレイスタイルと思っていただければ……」
「プレイスタイルなら仕方がないですね」
彼女は割とフリーダムに遊ぶつもりらしい。
まあ、本当にダメなプレイならAIから注意が行くだろうし気にする必要はないか。
そう思っていると、視界に魔物が入ってくる。
「来てますね」
「では、私から行きましょう。仕損じをお願いします」
お互い、声を潜めて話していると、魔物がこちらに気づいたのだろう。
こちらに進みだした。
同時、俺は一歩前に出ようとして、足を止める。
突如、バーゼスの突き出した右手から闇色の光が現れる。
その闇が線状に魔物を貫く。
その一瞬の後、闇の光が消えた後、魔物は倒れ動かなくなった。
「それ魔術……ですか?」
「ええ、そうですね。初期スキルに闇の魔術がありましたので」
驚き思わず聞く俺に、彼女はあっさり肯定する。
「初期に魔術がある場合もあるのですね」
「ヨキさんはなかったのですか?」
「ええ、闇属性魔術の素質自体があるみたいなのですが」
「なるほど。人によってその辺違うみたいですわね」
彼女は意外なほど淡々と答える。
本当に、人によって所持スキルがことなるんだな。
確か、スキルの選択はできなかった以上、それぞれの個性に応じているはず。
どんな個性だと、魔術所持になるんだろうな……。
俺はなんとなく考えているが、彼女からはそれ以上の話はなかった。
彼女は一つ咳払いをする。
「まあこの辺は強い敵はいないですから、気楽に行って大丈夫ですわ」
「……そうですね」
なんかこの人、俺よりもVRMMOに慣れているかもしれないな。
その動きの淀みのなさに感心する。そういう人だから魔術スキルが初期で所持できたのだろうか。
……まあ、考えても仕方がないか。
話しながらも目的地に到着する。先を進むバーゼスさんにこちらから声を掛ける。
「あ、そろそろポイントに着きますね」
「そうですわね……これで薬草採るのに採取スキルが必要とかあったら困りますわね」
「まあ、流石にそれはないかと。むしろ採取スキルを手に入れるためのイベントの一つだと思います」
「あ、なるほど。それもそうですわね」
二人してその辺の草むらの探索を開始する。
しばらくして、あっさり目的の薬草があると思われるポイントが表示された。
多分、これの事だろう。
「あ、ありましたよ。ここを探索すれば見つかりそうです」
「そうですわね。では探すとしましょうか」
二人でそのポイントをしばらく探索する。
ただの雑草の中に、ふと、薬草が表示された。
アイテム入手を選択し、バーゼスさんの方へと振り向いた。
「バーゼスさん。ありましたよ」
「こちらも見つけましたわ。ありがとうございますわ」
彼女もそう言って頭を下げる。
俺が見つけた薬草を彼女へと渡し、俺がやることが終わった。
「これで、渡せば終わりですね」
「そうですね……。いい時間ですしそろそろ戻りましょう……?」
何かの獣の声が聞こえた気がした。それも今まで聞いたことのない圧の掛かった咆哮。
その声を聴きとり、お互い顔を見合わせる。
「何かいそうですね」
「そうですわね」
「……いきますか?」
「ヨキさんがいいなら」
俺の提案にバーゼスさんがあっさり頷く。そして警戒する雰囲気もなく、そのまま音の方向へ向かった。
俺も同じく音が聞こえた方へと向かう。
そこには洞窟の入り口が口を開いていた。
中は暗く、光源がなければ先が見通せない。
このような場所は今まで情報になかった。
「これ、情報にないよな……ミリン?」
『にゅ~! いいたいんじゃが言っちゃいけないのじゃ!? ネタばれになるのじゃ!』
「その反応で分かった。ありがとう」
『え? ええ?!』
試しにミリンに鎌を掛けてみたが、あっさり引っかかってくれた。
ここはまた別のイベントがある場所だ。それもそこそこ重要な。
もしあるとしたらこのゲームのメインシナリオに関わるかもしれない。
ただ、それだけならミリンは言えないとだけ答えるだろう。
言いたいけど言えない。つまり今の俺たちではクリアは難しいが、重要なイベント、という事になると推測できる。
動揺しているミリンを残し俺はバーゼスさんに聞く。
「なんか、ここ危険なイベントがあるみたいですけどどうしますか?」
「面白そうですけどね。そういうの。……ダース。死んだときのペナルティは?」
『持ち物がその場に置かれる事と、次の日までルーム待機だな』
バーゼスさんのAIが答えるのを聞く。
思ったよりペナルティが重い。最悪持ち物ロストの可能性があるのか。
後は、ゾンビアタックも制限されていると見た方がいい。
「……両方同時死亡だとまた取りに来るの大変そうですわね」
「一人がやられた時点で逃げでいいんじゃないんですか?」
「逃げるときに持ち物拾えればいいですわね。でも本当に行きますか?」
「半分偵察ですよ。仲間と行けるレベルか確認しないと」
「わかりましたわ。では行きましょうか」
……なんか、野良パーティーで妙なことになったなぁ
ま、それもゲームの醍醐味か。




