暗闇の玉座01
闇――。
こそりとも動かぬ暗闇が広がっていた。
音もなく――時間もない空間……。
そこにあるのは、ただ一つの意識のみであった。
“全てを飲み込み食らい尽くしたい――”
それには、ただその思いだけしかなかった。
思考と呼べるほどのものでもなく、ただ一つの意識のみ。
やがてそれは、一つの波動を見つけた。
暗く淀む波動はとても心地よく、それはその波動を食らい尽くす。
そうしてそれは、人としての意識と知恵、そして力を得た。
もっともっと食らい尽くしたい――!
望みのまま、それは一つの世界を飲み込もうとした。
もう少し…もう少しで全てを飲み込める――と思った瞬間、思いも寄らぬ力でそれは元居た場所と似たような空間に閉じ込められた。
あれからどれだけの時が過ぎ、世界がどうなったのか、それに知る事はできなかった。
だが、長き時を経た事により出来たほんの僅かな綻びが、それを再び覚醒させる。
空間にできた綻びから、それは僅かに己の意識の先を解き放った。
解き放たれたそれらは、世界の様々な事を教え、己を閉じ込められた空間から解放させる為の術を教えてくれる。
それは歓喜し、解き放ったそれらに命令した。
己を、この空間より解き放ち、世界を食らい尽くせ――と……。
ゆらやらと陽炎が立ち上る水砂漠――。
永遠に続くであろうと思われたその砂漠の終わりは、突然視界に入ってきた緑と共に唐突に終わりを告げる。
砂漠との差に旅してきた者の大半は驚きの声をあげ、呆然と緑の森を見つめるのが普通であった。
まるで区切りの線で切られたかのように、くっきりとある一線から緑の森へと変わるのだ。
その線こそが、聖都“シュオール”の結界であると言われている。
唐突に始まるその森から十日ほど歩いた先に、シュオールはあった。
高い城壁の門を潜れば、そこは貿易の都に相応しいほどの賑わいに溢れている。
都の中央に位置する白亜の宮殿――。
天高く伸びる幾つもの小塔には、大陸中より集まってきた魔道士たちが暮らしている。
彼らは、ここシュオールで更に魔道の勉強をし、やがて大陸中へと散ってゆくのだ。
門を抜けてすぐの広場から、真っ直ぐに王宮へと向けて一本の大きな道が走っている。
主要な道路であろう道の両脇には、様々な露店が店を広げていた。
一番最初に門を潜ったリィースは、他の者たちが関所を通り抜ける前に、左側にあった大きな木の根元に腰を下ろし、ファラを腕に抱いて座った。
やや遅れてやってきたリュゼに、リィースは休む間もなく告げる。
「リュゼ――。住まないが、先に“ダリウス”を探してきてくれないか?」
リュゼは持っていた荷物を下ろすと、「承知いたしました」と言ってすぐにその場を離れていった。
第二章の第二部です。
ちょっとバタバタして更新が遅れております。なるべく早く更新できるようにしたいと思っているのですが……。




