大巫女
大巫女
川はあまり深くなく、腰ぐらいだ。水の流れも強くない。
川を渡るのは、簡単だった。
丘に登ると、小屋が立ち並んでいた。
何だ。ここは、凄い。
森のない平地に小屋が並んでいる。
沢山の人がいる気配、捌いた魚や肉が干されてるようす。
歩きながら、遠くに見えた茅葺きの大きな屋根に向かっていた。
と、広場のような空間の奥に大きな茅屋根の建物があった。
男が立っていた。
「失礼します。大巫女様に毛皮をお待ちしました。大巫女様にお会いできますか?」
「どこのものだ」
「失礼、栗林の小屋に紹介されたもので、我は、北のケヤキの集落のものです」
男は、入り口の茅を上げて中のものに伝えた。
「しばらく待て」
よしおは、仕方ないなと思って立っていた。
中から侍女らしき女が出てきて中に入れてくれた。
中は広かった暗い、真ん中に焚き火の跡があった。
その奥に柱に挟まれた奥があった。
「大巫女様、連れてまいりました。」
よしおは、頭を下げて挨拶をして、名乗った。
「北のケヤキの集落のよしおと申します。毛皮をお持ちしました。お受け取りください」
大巫女は、大きく頷き、侍女に指示して、毛皮を受け取り、笑顔を見せた。
「栗林の紹介とな、北にいて北川辺を知らなんだか?」
「いや、知らなかったわけじゃないが、最近は狩りに忙しく、外出をしてなかった。すっかり変わったのぉ」
「ほほほ、変化がわかるか。我の所は初めてだろう」
「はい、失礼しました。土浦や水戸それと、那須や宇都宮の巫女様とは会ったことがあるのですが、北川辺は、通過してました。」
「正直じゃのうぉ」
「親父が、移動して動いていた時に付いて行っただけだで、親父が死んで、集落をまとめるのに時間がかかったのです。」
「ケヤキの巫女は代替わりしたのか?」
「はい、巫女様も代替わりして娘の《ゆかり》が務めてます」
ケヤキの集落はまだ若く、連れてきた親父も巫女も代替わりして、集落をまとめて、動き出したばかりであった。
「それで、風やケヤキもざわざわしていて、大巫女様に伺いに来ました。」
大巫女は、北川辺が大きくなるに従い、この様に気配を疑うものがいなくなったことに、疑念を抱いていた。
「そうか、お主らも気づいておるのか。」
大巫女は、嬉しそうに微笑んだ。
「南の方から新しい勢力が生まれてるようだ。大きな船が一度来てな、色々見せてもらい、出来ることを試してみている。その内もっと大きな動きが来ると思う。そなたは手伝ってくれるか?」
よしおは、頼み事を受けるとは思っても見なかった。異変の原因は南から勢力、どうするつもりだろう、興味を抱いてしまった。
「はい、大巫女様のおっしゃることなら」
と、とっさに返事してしまった。
「は、は、は、頼りになるのぉ。」
そうじゃと頷き、侍女に耳打ちして、侍女を下げらして、よしおに話しかけた。
「南がどのように動くのかは分からぬ。しかし備えなければならない。関東の巫女たちに南からの動きがあったこと、利根川を使って登ってくることを告げてもらえぬか」
よしおは、なるほどと感じた。
連携を取ることを先行するのだ、何が起きるのか分からない不安よりも皆で共有することの確かさに納得した。
「はい、おっしゃることは理解します」
大巫女は、素直なよしおの返事にさらに気に入り、大きく笑った。
侍女が戻り大巫女に手渡した。
大巫女は確認して、侍女に伝える。
「これは、ケヤキの巫女から頂いた護符じゃ、それとこの籾を袋に入れて、関東の巫女たちに伝えてくれ」
よしおは、大巫女がケヤキの巫女、ゆかりの母と面識があった。
驚いたが、これを持っていけば、確かに関東の巫女にも会えると思った。
「大巫女様、確かに承りました。」
よしおは頭を下げて大巫女に誓うのであった。




