千葉の被害
千葉の被害
リーダーは、必死になっていた。
水田が、稲穂がお辞儀している。
水田が湖のようになっている。
微高地が見えてきた。小屋が潰れている。
これ巫女がいるんじゃないか。
潰れて大丈夫か?
しばらく荒れた小屋を見ていたら、その先に潰れてない小屋があった。
中に人がいる?
「すみません。ケヤキの民のものですが、海の巫女様はいらっしゃいますか?」
「巫女は私だが、お主は?ケヤキの民?おお知ってるぞ、その昔、先代が会ってるな。」
「はい、私もケヤキの民のリーダーで、先代からの話は承ってます。いま、北川辺の大巫女様が、見てこいとおっしゃったので来ました。嵐があったんですね。大丈夫ですか?」
朝、起きた時に、北川辺の大巫女の事を考えていた。巫女は、
「なんと、北川辺の大巫女様が、気が付かれたのか?」
巫女は驚いていた。
「何という事か。ありがたい。舟は軽微な損害で済んだが、水田は、多分だめだ。海の水がかかっている。」
巫女は悲しい顔になった。
祈りに対する無力感というか、集落の役に立たなかった無力感だ。
リーダーは、何か言葉ないか探ったが分からなかった。
「リーダー、申し訳ないが明日まで居てもらって、明日、舟で送るから、水を持ってきてくれないかな?水が足らなくなると思うんだけだ。どうだろうか?」
リーダーは喜んだ。力になれるならやろうと決心した。
海の巫女は、巫女として力強いなと思った。
リーダーは倒れた小屋の修理を手伝い、その日は泊まらせてもらった。
翌朝、海の巫女は中型船の漕ぎ手を用意してくれて、北川辺に向かうことになった。
「海の御子様、では行ってきます。」
「大巫女様によろしくお伝えください。侍女を代理として送ります。」
侍女を連れてリーダーは舟に乗った。
漕ぎ手が何人かいて、前進した。
大海原に中型船が出た。
波に揺れる感覚が新鮮だった。
潮風に吹かれ、舟が進む度に、期待が膨らむ。
海に入ると潮の香りが広がる。
丸木舟を留めた場所にたどり着き、河口へと方向を変えた。
河口に入ると、変な揺れがあったが、構わず進むと流れが落ち着いてきた。
嵐の被害は、海岸沿いだけのようだ、所々に水田が広がり、小屋が見えた。
風が爽やかになり、塩臭さがなくなっている。
舟で上流に向かう事で、ゆっくりと土地の姿が見えた。
いくつかの微高地を越えると、権現堂の小屋が見えてきた。
水田が見えて、先の反対側に微高地がまたあり、小屋が見えてきた。
北川辺の集落だ。
舟が来たことが分かったらしく、岸辺に男たちが立っていた。
リーダーは先頭に立ち、手を振って、降り立った。
網の親父がいた。
「ケヤキの民のリーダーです。大巫女様の言いつけで、海の巫女様の使いを連れてまいりました。」
網の親父は、直ぐに納得してくれ、大巫女の小屋に使いの侍女を連れて行ってくれた。
リーダーも付いていった。
侍女とリーダーが大巫女の前に立った。
「大巫女様、千葉に行き、海の巫女の使いを連れてきました。大巫女様の予言通り、嵐が来ておりました。被害は舟に軽微なものがあったらしいですが、高波で水田が、海の水を浴びて壊滅したらしいです。海の巫女様が、感謝されて、水を分けてほしいとの話で、使いの者とともにもどりました。」
リーダーが話すと、頭を下げた。
大巫女が受けて返事を返した。
「リーダー、ご苦労さまでした。わかりました。使いのものとやら、海の巫女様は何とおっしゃった?」
侍女が大巫女様に膝まつき、会釈して話した。
「大巫女様、海の巫女は、嵐の後、大巫女様の事を考えたそうです。そうしたらリーダーが来られてたいそう感激されていました。嵐の後で、水が不足するかもしれないので、大巫女様の慈悲にすがり、水を所望したいと申しておりました。何卒、ご慈悲を賜りますよう。お願い申し上げます。」
大巫女は、ゆっくりと頷き、自分の侍女に耳打ちして、侍女が動き出した。
その後はしばらく待てと仰せで、リーダーの千葉への道行などを聞いて笑いが広がっていた。




