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「無能」と追放された俺、観察スキルで全て見抜いて無双したら元パーティが崩壊した  作者: ささかま
第4章 空の迷宮

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78話 vs火精霊②

爆発が連なる。

熱が一瞬で距離を詰めてくる。


雪那は動かない。

半歩だけ、前へ出る。


焼ける。

袖口が弾ける。

頬に熱が走る。


それでも退かない。

視線は火精霊の踏み込みだけを見ていた。


重心が落ちる。

爆発が膨らむ。

その中心で、わずかに熱の戻りが遅れる場所がある。


そこだけ、燃焼の流れが鈍い。


爆発を止める必要はない。

押し返す必要もない。

流れの薄い一点を穿てばいい。


雪那は息を止める。

残った氷糸を束ねる。

広げない。

細く、鋭く、一本の刃にする。


火精霊がさらに踏み込む。

熱が近い。

視界が揺れる。

だが、逸らさない。


足場が軋む。

遅れて、足元の石が赤く染まる。

もう長くは保たない。


それでも、次で終わらせる。



「……そこ」



指先が走る。


見えない白線が、爆発の薄い一点を貫いた。

火精霊の輪郭が初めて乱れる。


遅れて、雪那が踏み込む。

凍らせるのは全体じゃない。

広げない。

一点だけ。



「氷牢・静」



白が走る。


今度は足ではない。

胸の奥。

燃焼の流れが遅れた一点へ、凍結が突き刺さる。


火精霊が止まる。


動きじゃない。

燃え方そのものが止まる。


その一瞬を逃さない。

雪那は左手を返す。

足元ではなく、止まった一点へ霜を集める。


『氷刃連華』。


複数の氷刃が白い花みたいに一斉に咲く。

細く、鋭く、同じ箇所だけを穿つ。


一撃。

二撃。

三撃。


全てが同じ位置へ重なる。


火精霊の輪郭が崩れる。

人型が保てなくなる。

燃焼がほどける。

赤が薄れる。


だが、終わらない。


内部で熱が膨らむ。

逃げ場を失った圧が、内側から破裂しようとする。


(ここで外したら、終わらない)


雪那は踏み込んだまま動かない。

足が焼ける。

肺に入る空気まで熱い。

それでも、ここで離さない。


膨張が限界へ達する。

火精霊の胸元が、今にも内側から砕けそうに脈打つ。


その瞬間だけ、世界が止まる。


音が消える。

熱だけが残る。

空気が張り詰める。


雪那は指先に残った冷気を集める。

散らさない。

押し込む。

止まった一点へ、周囲の熱ごと収束させる。



「……終わり」



『零界収束』。


白が落ちる。


一点に向けて、熱が引き剥がされる。

広がろうとした火が逆向きに潰れる。

輪郭が中央へ引き寄せられ、逃げ場ごと圧縮される。


火精霊の両腕が歪む。

頭部の輪郭が潰れる。

人型が維持できず、燃焼だけが中央へ吸われていく。


音が消える。

熱が沈む。

爆発が外へ逃げない。


次の瞬間、火精霊の中心が内側へ潰れた。


赤い爆ぜ方ではなかった。

白く凍り、静かに割れた。


輪郭が崩れる。

火が細くほどける。

消える。


ようやく、止まった。


雪那はその場から動かない。

動けない。

指先が震えている。

呼吸が浅い。


熱を吸い込みすぎたせいで、胸の奥が痛い。

魔力も底に近い。

視界の端が少し暗い。


それでも、勝った。


火の気配が消えた空間は妙に静かだった。

さっきまで爆発で埋まっていた耳に、逆に無音が刺さる。

吐いた息だけが白く残る。


カメラが戻る。

雪那を正面から捉える。

コメントが一気に流れる。



「倒した!?」


「雪那やっば!」


「今の何した!?」


「火が消えたぞ今の!」



雪那は返さない。

返す余力がない。


ただ、中央空域の方を見る。


遠くのルナリアの周囲で、空間が一段だけ深く沈む。

揺れが荒くなる。

規則だった歪みが崩れ、外へ滲み出す。


抑えられていたものが、一つ外れた。


制御が消えた。

それだけで、空間の質が変わる。


さっきまで一定だった揺れが、不規則になる。

遠近感がわずかに狂う。

足場の端が一瞬だけ遠く見える。


精霊を倒した。

それで楽になるわけじゃない。

むしろ、悪化している。


雪那は焼けた袖を見下ろす。

焦げた布が、わずかに崩れ落ちる。

短く息を吐く。


一つ壊した。

それは終わりじゃない。

次は、もっと崩れる。


それでも、壊すしかない。

止めるには、前へ進むしかない。



「……1つ、壊した」



雪那はようやく一歩だけ後ろへ下がる。

膝がわずかに沈む。

力が抜けそうになるのを、呼吸で押さえ込む。


まだ倒れられない。

ここで座り込めば、そのまま立てなくなる。

理解しているから、無理やり身体を起こす。


足元には、凍った火の破片が散っていた。

触れた端から白く砕け、砂みたいに崩れていく。

残熱すら長くは残らない。


完全に潰した。

あの火は、もう戻らない。


だが勝利の実感より先に来るのは、別の感覚だった。

空気が重い。

さっきまで火精霊がいた時とは違う不気味さがある。


安定が崩れたせいで、何かが剥き出しになった。

そんな圧だけが、中央から伝わってくる。


雪那は視線を細める。

次の歪みが来る前に、動く。

そう決めて、指先に残る痛みを握り潰した。

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