表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「無能」と追放された俺、観察スキルで全て見抜いて無双したら元パーティが崩壊した  作者: ささかま
第4章 空の迷宮

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

77/85

77話 vs火精霊①

火精霊は、立っているだけで周囲を爆ぜさせていた。

人型をしている。

だが輪郭は燃焼そのものだ。


一歩近づくたびに、空気が弾ける。

音が遅れて来る。

熱だけが先に頬を焼いた。


周囲の音が薄れる。

爆発の直前だけ、奇妙に静かになる。

その後で、一気に世界が弾ける。


雪那は呼吸を整え、静かに手を上げる。

指先から氷糸が伸びる。

見えないほど細い線が、空間を走った。


『氷糸結界』。


いつもの勝ち筋。

先に盤面を支配し、動きを止める。


火精霊が踏み込む。

糸に触れる。

次の瞬間、爆発した。


白い閃光。

遅れて衝撃。

張り巡らせた糸が、触れた箇所から連鎖的に焼き切れる。


さらに一歩。

爆発が重なる。


足場が耐えきれず、崩れた。

浮遊島の一部が崩落する。

砕けた岩塊が下へ落ち、途中で空気ごと爆ぜた。


雪那は即座に後ろへ滑る。

足場の端を蹴り、崩れた面を避ける。

だが熱は逃げない。


止まらない。

制御が追いつかない。

このままでは盤面を握れない。



「……止まらない」



火精霊が腕を振る。

軌跡そのものが爆ぜる。

空間が裂け、熱が押し寄せる。


雪那は半歩だけ横へずれる。

直後、さっきまで立っていた位置が抉れた。

遅れて爆風が叩きつける。


避けても安全じゃない。

逃げでは削られる。

正面拘束は捨てる。



「正面は無理」



雪那は一度だけ視線を切る。

次の瞬間、足元に薄い氷鏡が広がった。


鏡面が砕ける。

そこから雪那と同じ輪郭が三つ、別方向へ走った。


『氷鏡分身』。


火精霊の進路が一瞬だけぶれる。

中央ではなく左へ寄る。

分身へ食いつく。


誘導成立。


雪那はその隙に氷糸を張り直す。

捕縛ではない。

爆発の向きを逃がす角度で、浅く、細く。


火精霊が糸に触れる。

爆ぜる。


炎が正面へ広がらない。

斜め上へ流れる。

熱の通り道が、一瞬だけ制御された。


視界の端にカメラが滑り込む。

雪那を捉え、すぐに別方向へ向かう。

コメントだけが残る。



「雪那うまい」


「止めてる?」


「いや逸らしてるだけ」



止めてはいない。

だが削れている。

起点は作れる。


雪那は右手を返す。

空気が凍る。

踏み込みの頂点に合わせる。



「氷牢・静」



火精霊の下半身が一気に白く染まる。

氷が食い込み、燃焼の形を押し固める。


拘束成立。

雪那の魔力が一気に流れる。

ここで盤面を奪い切る。



「捕まえた」



左手で霜を走らせる。

足元から凍結が広がる。

床を白く塗り、逃げ場を削る。


『霜界侵食』。


拡張開始。

だが、伸び切らない。


凍結内部が膨らむ。

外からではない。

内圧。



「……内側」



次の瞬間、内側から爆発した。


氷牢が砕ける。

霜界侵食も途中で途切れる。

広がり切る前に、白が焼け落ちた。


分身が一体、消し飛ぶ。

二体目も熱波で溶ける。

残った一体も視界の端で砕け散った。


拘束は意味がない。

内部から破る。

止めても再燃する。


火精霊は止まらない。

むしろ、さっきより燃えている。

拘束を受けたことで、密度が上がっている。


雪那は距離を取る。

だが離れるほど、爆発の範囲が伸びる。

安全圏がない。


呼吸のたびに熱が肺へ入る。

低温で奪うはずの盤面が、逆に塗り潰される。

静の支配が崩れる。


またカメラが来る。

一瞬だけ映り、すぐ離れる。

コメントだけが残る。



「無理じゃね?」


「火おかしい」


「雪那でも押されてる」



無秩序ではない。

偏りがある。


糸に触れた角度。

分身へ向いた踏み込み。

侵食が焼かれた位置。


全部が同じではない。

流れがある。


雪那は最後の分身を前へ走らせる。

同時に本体は斜め後ろへ。

さらに極細の氷糸を低く一本だけ張る。


一点で跳ねる。


火精霊が分身へ食いつく。

爆ぜる。


その爆圧が、低く張った糸で僅かに跳ねた。

熱がずれる。


踏み込みが半歩だけ外へ流れる。



「通る」



雪那はそう判断し、もう一度だけ氷牢を重ねる。

今度は全身ではない。

踏み込んだ右足のみ。



「氷牢・静」



白が走る。

足首が止まる。

軸がぶれる。


勝ち筋。


その直後、足元から爆発が突き上げた。

凍結した右足を起点に、火が逆流する。


氷を媒体にして、内側から膨らむ。


雪那は咄嗟に後ろへ跳ぶ。

遅れる。

袖が焼ける。

頬に熱が走る。


着地と同時に、視界がわずかに揺れた。

消耗が速い。

配置が最適ではない。


単独では非効率。

それでも退かない。


火精霊がまた踏み込む。

爆発密度が上がる。

空間そのものが赤く軋む。


雪那は糸を張る。

逸らす。

凍らせる。


足りない。

制御はできる。

完全停止ができない。


熱の波が頬を撫でる。

髪の先が焦げる。

指先の氷糸が、じりじりとほどけていく。


それでも、目は逸らさない。


止める。

止めるしかない。


雪那はわずかに息を吸う。

視線を火精霊の踏み込みへ合わせる。


次で決める。


そう判断した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ