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「無能」と追放された俺、観察スキルで全て見抜いて無双したら元パーティが崩壊した  作者: ささかま
第4章 空の迷宮

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71話 止まっていない

俺たちは、一つ前の足場からさらに奥を見た。


風は弱い。

崩壊も遅い。

それでも空域に満ちる圧は、さっきより確実に濃い。


静かなのに、息が詰まる。


トン、トン、トン。


足音を揃える。

リズムを切らさない。

見ない。

合わせる。


それでも、さっきまでと違う。

この先はもう“読む場所”じゃない。


次の浮遊島へ渡る。

着地した瞬間、俺は違和感に足を止めた。


岩盤が抉れている。


だが深さが異常だった。

魔物を倒すための一撃じゃない。

同じ場所を、何度も削っている。


角度が揃っていない。

力の流れも乱れている。

あれだけ精密だった痕跡が、ここだけ明らかに崩れていた。



ひなたが声を潜める。



「これ……やりすぎじゃないですか」


「そう見える」



俺は縁まで歩き、下を覗く。


見えない。

だが、黒い粒子が濃すぎる。


一体分じゃない。

二体でも足りない。

この足場の下だけ、異常に残滓が溜まっている。


雪那が低く言う。



「倒したあとも続けてる」



凛が反応しない。


さっきから、ずっと黙っている。

視線の置き方だけで分かる。

見ていないんじゃない。

見たくないのを押し殺している。


俺は次の足場へ移る。


そこにも死骸があった。


ワイバーン。

首は落ちている。

胸骨は砕けている。

翼の根元まで抉られていた。


止めは十分に入っている。


それでも、そのあとにさらに壊している。


もう一体。

こちらは胴ごと裂けていた。

だが致命傷は先に別の場所にある。


殺してから壊している。


意味がない。


いや、違う。


“止まっていない”。


俺は膝をつき、傷跡を観察する。


火。

水。

風。


そこまでは同じだ。


だが、二撃目から乱れている。

威力じゃない。

判断が崩れている。


対象が何かじゃない。

ただ、“消す”という結果だけが先に出ている。



ひなたが息を詰める。



「これ、本当に同じ人なんですか」



凛の肩がわずかに震えた。



「……やめて」



小さな声だった。



「それ以上、見ないで」



ひなたが言葉を失う。


凛は視線を逸らさないまま続ける。



「癖は同じ。

でも、こんな壊し方しない」



言い切ったあと、凛は唇を噛む。


それで確定した。


同じだ。

だが違う。


強化じゃない。

変質だ。


前方で、空気が裂ける。

俺たちは反射で身を低くする。


何も見えない。


次の瞬間、少し離れた足場の端が消える。

遅れて衝撃が来る。


発動も、軌道も、集束もない。

ただ結果だけが置かれる。


しかも近い。

巻き込み始めている。


コメントが荒れる。



「今の近すぎる!」


「味方巻き込んでるだろ!」


「倒したあとも攻撃してるぞ」


「これ止まってない」



その言葉が、そのまま答えだった。

これは最適な戦闘じゃない。


制御を失った最強だ。


足場の中央へ寄る。

だが意味はない。


この空域では、安全の概念そのものが崩れている。


俺は息を整える。

次の裂けを待つ。


来た。

左。

そう感じた瞬間、右の空間が歪む。


外された。


読みじゃない。

合わせられている。


凛が一歩前に出る。

止める間もなかった。


見えた。


長い髪。

細い肩。

浮遊島の向こう側。


後ろ姿だけの、輪郭。

一瞬だ。


次の瞬間には、最初から何もなかったみたいに消えている。


だが凛だけは動かなかった。

呼吸すら止まっている。



「……止めないと」



小さな声だった。


断言じゃない。

願いに近い。


その直後、頭上を見えない何かが通る。

風が遅れて落ちる。

足場の上半分が、斜めに消えた。


ひなたが声を殺し、雪那が氷を打ち込む。

凛は動かない。

視線だけが奥に固定されていた。


まずい。


俺は凛の肩を掴んで引く。

遅れて崩壊がそこを飲み込む。


間一髪だった。

凛は息を吐く。

だが目は逸らさない。



「このままだと」



言葉が止まる。



「ぶつかる」



短い。

だが十分だった。


この先にいるのは、戦えば終わる相手じゃない。

終わらせたら、間違える。


俺は足を鳴らす。

トン、トン、トン。


三人が合わせる。

凛の呼吸も戻る。


まだ、間に合うなら。

そう思う理由はない。


それでも、このまま終わらせるのは違うとだけ分かる。

俺は奥を見ないまま言った。



「進む」



返事は短い。



「うん」


「了解」


「……はい」



その瞬間、遠くの空間が静かに沈んだ。

拒まれたわけじゃない。


歓迎でもない。

ただ、最初から決まっていたみたいに、道が繋がった。

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