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「無能」と追放された俺、観察スキルで全て見抜いて無双したら元パーティが崩壊した  作者: ささかま
第4章 空の迷宮

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70話 触れられている

静けさは続いている。


だが、もう安全には感じなかった。

風は弱い。

崩壊も遅い。


それなのに、空間そのものが張り詰めている。


俺たちは足音を揃えたまま進む。

トン、トン、トン。

リズムを崩さない。


視界は使わない。

位置も固定しない。

それでも、さっきまでと違う。


何かが“先にいる”。


前方の浮遊島へ渡る。

着地した瞬間、足場がわずかに沈む。


次の瞬間、消えるはずだった。


だが消えない。


崩壊の順序は見えている。

三秒後に消えるはずの箇所が、そのまま残っている。


俺は眉を寄せる。


おかしい。


この迷宮は、順序を守る。

ズレはあるが、消えること自体は避けられない。


それが、止まっている。


ひなたが戸惑った声を出す。



「え……なんで残ってるんですか」


「分からない」



雪那が低く言う。



「誰かが押さえてる」



その言葉の直後だった。


空気が、わずかに裂ける。


何もない場所で、音だけが先に鳴った。

次の瞬間、岩盤の一部が消える。


削れたんじゃない。

砕けてもいない。


“消えた”。


遅れて衝撃が来る。

風が巻き込み、破片が吹き飛ぶ。


順番が逆だ。


俺はその場から動かない。

動けなかった。


今のは攻撃じゃない。

過程がなかった。


ひなたが息を呑む。



「今の……何も見えなかった」


「結果だけ出てる」



言葉にした瞬間、自分でも違和感があった。


それは俺が使うものに近い。

だが違う。


俺は条件を揃えて、ようやく一秒を巻き戻す。

それでも因果は残る。


だが今のは、最初から存在していないみたいに抜け落ちている。


凛が一歩だけ前へ出る。

普段よりも、慎重に。



「……違う」



その声は低かった。



「何が」



ひなたが聞き返す。


凛は前を見たまま答える。



「見えてないんじゃない」


「最初からない」



意味が分からない。

だが、感覚だけは一致する。


さっきの破壊には、流れがなかった。

動きも、溜めも、発動も。


ただ、そこに結果だけが置かれていた。

コメントが流れる。



「今の何!?」


「攻撃見えなかったんだけど」


「ラグじゃなくね?」


「先に壊れて後から音来てる」



足場がまた鳴る。

今度は本来の崩壊だ。


俺は足を鳴らす。


トン、トン、トン。


三人が即座に合わせる。

移動する。


その瞬間だった。


視界が一瞬だけ途切れる。


音が消える。

風も消える。

身体の感覚が抜ける。


——次の瞬間。

俺は一歩先にいた。


踏み出した記憶がない。

だが、確実に位置が変わっている。


ひなたが驚いた声を出す。



「え、今……」



凛もわずかに振り返る。



「動いた?」


「いや」



俺は短く答える。


動いていない。


だが、移動している。


足場の崩壊位置を見る。

さっきまでいた場所が、ちょうど消えている。


回避している。


“先に”。


背中に冷たいものが走る。


今のは俺の再観測じゃない。

条件は何も満たしていない。

同期もしていない。

視覚も捨てていない。


それでも、結果だけが成立している。


雪那が低く言う。



「干渉されてる」



その言葉が、妙にしっくり来た。


この空間は、もう迷宮じゃない。


誰かの“処理範囲”だ。


前方で、また同じ現象が起きる。

何もない空間が歪む。

次の瞬間、ワイバーンの首が消えている。


音が遅れて響く。

身体が落ちる。


戦闘ですらない。


ただ、そこに“そうなった”という結果だけがある。


凛の呼吸が、わずかに乱れる。



「……こんなの」



言葉が途中で切れる。


知っている。

だが、知らない。


その矛盾がそのまま滲んでいた。


俺は前を見ない。


見れば、認識がズレる。

だが感じる。


近い。


さっきよりも、はっきりと。

こちらを見ている。


観察しているんじゃない。

理解している。


その確信が、理由もなく浮かぶ。


コメントが荒れる。



「今の瞬間移動した?」


「いや先に避けてたぞ」


「なんで当たる前に結果出てんの」


「これもうゲームじゃない」



足場が崩れる。

今度は逃げる必要がある。


俺は足を鳴らす。


トン、トン、トン。


三人が揃う。


だが今度は、自分のリズムが一瞬だけ遅れる。


そのズレを、何かが拾った。


踏み出す。


その前に——

既に、次の足場にいた。


理解が追いつかない。

身体が先に処理されている。

俺は奥を見ないまま、確信する。


これは戦闘じゃない。

攻略でもない。


もっと単純で、もっと異常なものだ。


俺たちは今——

“触れられている”。

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