表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「無能」と追放された俺、観察スキルで全て見抜いて無双したら元パーティが崩壊した  作者: ささかま
第4章 空の迷宮

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

69/86

69話 もう通ったあとだ

静かだった。


風の流れが変わる。

さっきまで身体を押していた圧が、急に引いた。


足場は相変わらず不安定だ。

だが空域そのものの“荒れ”が一段落ちている。


それが逆に、不自然だった。


俺は足を止めずに進む。

トン、トン、トン。

一定のリズムだけを維持する。


視界は信用しない。

位置も固定しない。

音と感覚だけで足場を捉える。


ひなたの呼吸がまだ少し乱れている。

凛は最短距離を維持して前へ出る。

雪那は氷糸を薄く散らし、崩れた瞬間の逃げ道を準備していた。


魔物の気配がない。


その一点が、ここまでで一番おかしかった。


浮遊島へ着地する。

踏み込んだ瞬間、違和感が走る。


壊れ方が違う。


端が、真っ直ぐだった。

崩壊ならこんな形にはならない。


砕けるはずだ。

欠けるはずだ。

裂けるはずだ。


だが目の前の岩は、削り落とされている。


しかも、ただの斬撃じゃない。

焼けている。

凍っている。

抉れている。


複数の属性が混ざっている。

それなのに、無駄な破壊がない。


俺はしゃがみ、指でなぞる。

表面の粗さ。

熱の残り。

魔力の流れ。


戦闘跡だ。

だが、異常なほど整理されている。



ひなたが小さく言う。



「これ……迷宮の崩壊じゃないですよね」


「違う」



俺は立ち上がる。


通った。

ただそれだけだ。

だが、その通り方が異常に正確すぎる。


凛が、足を止めた。


視線が一点に固定される。

呼吸が、わずかに変わる。



「……これ」



短い。

だが明らかに反応している。


俺はそのまま問いかける。



「見覚えがあるか」



凛はすぐには答えない。

視線は切断面から離れない。


雪那が周囲を警戒したまま言う。



「あるなら言って」



凛が小さく頷く。



「……何度も見た」



それで十分だった。


俺は周囲を観察する。

削り方。

力の流し方。

当て方。


一人だ。


囲んだ形じゃない。

逃がしていない。

誘導していない。


最短で処理している。


次の浮遊島へ渡る。


そこにあったのは、死骸だった。


ワイバーン。

さっきより大きい。


首元だけが消えている。

抉れたんじゃない。


“抜かれている”。


胴も翼もほぼ無傷。

飛行状態のまま中枢だけを破壊されている。


一撃だ。



ひなたが息を詰める。



「これ……一人でやったんですか」


「その可能性が高い」


「無理です」


「普通ならな」



俺は死骸の位置を見る。

崩壊のタイミングと合っていない。


足場が消える前提の動きがない。

調整していない。


つまり——


合わせていない。


この空域に。



凛が低く言う。



「同じ」



俺は顔を上げる。



「何と」



凛は一瞬だけ言葉を切る。



「戦い方」



それ以上は言わない。


だが一致する。


俺の観察とも。


削り方。

当て方。

無駄のなさ。


全部、同じだ。


それなのに、違和感が消えない。


この空域は、ずれている。

位置も、タイミングも、すべてが不安定だ。


だから俺たちは、見ない。

合わせる。

ずれを前提に動く。


だがこの痕跡には、それがない。


最初からズレていないみたいに、処理されている。


あり得ない。



雪那が静かに言う。



「進むわよ。止まる方が危ない」



俺は頷く。


次の浮遊島へ渡る。


中央に、空白があった。


削れたんじゃない。

消えている。


縦でも横でもない。

空間ごと切り取られたみたいに、そこだけがない。


縁に立つ。


下は見えない。

ただ、黒い粒子だけが残っている。


まだ薄い。

完全に消えていない。



ひなたが声を落とす。



「これ……さっきのですよね?

時間が経ってないように感じます」



つまり、近い。


この痕跡を作った存在は、まだ遠くない。


コメントが流れる。



「急に敵出なくなった」


「これ誰がやったんだよ」


「削れ方おかしいって」


「コラボで見た動きに似てる」



カメラが、勝手に右へ振れた。


俺たちの動きじゃない。

自動追尾でもない。


何かを捉えようとした動き。


視界には何もいない。


だが、気配がある。


薄い。

だが、確実にそこにある。


凛が、ほんの一瞬だけ固まる。



「……今」



その言葉の途中で、空気が抜ける。


何もいない。


最初から、何もなかったみたいに。


コメントが一拍遅れて流れる。



「今映ったよな?」


「誰かいた」


「いやバグだろ」


「いや今の人影だって」



俺は視線を固定しない。


見ようとすると、ずれる。


なら、見ない。


感じる。


いる。


確実に。


だが、認識できない。


それが一番まずい。



足場が軋む。


長くは持たない。


俺は足を鳴らす。


トン、トン、トン。


三人が合わせる。


今までと違う。


戦い方じゃない。


相手そのものが違う。


俺は前を向く。



「行くぞ」



返答は短い。



「了解」


「はい」


「うん」



その瞬間。

空域の奥で、何かが“消えた”。


気配だけが、わずかに遅れて消える。

最初からいなかったみたいに。

だが、確かにいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ