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「無能」と追放された俺、観察スキルで全て見抜いて無双したら元パーティが崩壊した  作者: ささかま
第4章 空の迷宮

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68話 当たっても成立しない

足音を揃えたまま、さらに奥へ入る。


リズムを保つ。

視線を切る。

流れだけを拾う。


さっき掴んだ形は、まだ生きていた。

足場のズレはある。

だが、三人の呼吸が揃っている限り、致命的な崩れにはならない。


凛が先に流れを作る。

雪那が止める。

ひなたが割る。


その順番だけを守れば、観測不能領域の魔物にも対応できる。

少なくとも、さっきまではそうだった。


前方に二体。

膜翼の魔物。

高度差あり。


俺は足を鳴らす。


トン、トン、トン。


凛が動く。

空気を裂く一閃。

魔物の進路がずれる。


雪那の氷糸が先回りし、翼の片側を絡め取る。

ひなたが踏み込み、大鎌を振り下ろす。


入った。


重い手応え。

膜が裂ける音まで聞こえた。

一体が砕ける。


そう見えた。


次の瞬間、砕けたはずの魔物が、まだ飛んでいた。


ひなたの大鎌は空を叩いている。

雪那の氷糸は、何もない位置を縛っている。

凛の斬撃だけが、遅れて空気を切る。


時間がずれたんじゃない。


結果の方が、書き換わった。


俺は息を止める。

残る一体が横から入り、凛の脇腹を掠めた。

血が散る。


凛はすぐに距離を取る。

浅い。

だが、今のは対応できた攻撃だった。


ひなたが歯を食いしばる。



「当たったのに!」



雪那が短く返す。



「成立していない」



俺はすぐに次を読む。

だが、読むほど悪くなる。


攻撃が当たるかどうかじゃない。

当たった結果そのものが、安定していない。


同じ手順。

同じ流れ。

同じ一撃。


それでも、最後だけが噛み合わない。


前方の空域がもう一度歪む。

今度は三体。


多い。

しかも近い。



「下がるな。順番は維持」



凛が血を拭って頷く。



「やる」



ひなたが大鎌を構える。



「今度は砕きます」



雪那の声は静かだ。



「固定を厚くする」



トン、トン、トン。


リズムは揃っている。

視線も切れている。

なのに、胸の奥で嫌な感覚だけが強くなる。


二体が先行する。

一体が上。


凛が最初の一体へ斬撃を置く。

雪那が止める。

ひなたが薙ぐ。


今度は倒れた。

黒い粒子になる。


だが、その粒子が消え切る前に、上から来た個体が加速した。


まずい。


ひなたは振り終わりだ。

雪那は次の拘束に入っている。

凛はまだ戻っていない。


間に合わない。


俺は踏み込む。

遅い。

距離が足りない。

このままじゃ、ひなたの首に入る。


確信した瞬間、景色が一度だけ薄く重なった。


同じ光景だ。


同じ位置。

同じ失敗。


次の瞬間、俺は半歩だけ前にいた。


何も考えないまま、ひなたの肩を引く。

魔物の嘴が髪を掠める。

遅れて風圧が頬を打つ。


ひなたが息を呑む。

俺も同じだった。


今のはおかしい。


だが、考える暇はない。

凛が戻る。

雪那の氷槍が落ちる。

ひなたが体勢を立て直し、魔物を叩き割る。


静かになる。


誰もすぐには喋らなかった。


ひなたが最初に口を開く。



「助かりました……けど、今の」


「偶然だ」



自分でも早すぎる返事だった。

だが、それ以外の言葉を出したくなかった。


凛が俺を見る。



「偶然で片づけるには、多すぎる」



雪那も視線だけを向ける。



「さっきから結果が不安定」



その通りだった。


ここは位置がずれる場所じゃない。

もっと深い。明らかに。


成功したはずの結果が、成立したまま残らない。

だから、今までの攻略法だけでは足りない。


俺は奥を見る。

見ないようにしても、そこだけは分かる。


空気の沈み方。

魔力の滞り。

全部が一ヶ所へ落ちている。


あそこが核だ。


だが、正面から踏み込めば、今度こそ結果ごと潰される。



「戦い方を変える」



ひなたが息を整えながら聞き返す。



「変えるって……どう変えるんですか」


「当てるな。確定させるな」



自分で言って、意味が最悪だと思った。

それでも他に言いようがない。



「この空域、成功した結果を食ってる。なら、完成した一撃を先に作るな」



凛が眉を寄せる。



「途中で繋ぐ?」


「そうだ。流れだけ作って、最後まで確定させるな。押し切るんじゃなく、崩す」



雪那が短く頷く。



「成立前に凍らせる」



ひなたも理解しきれない顔のまま、大鎌を握り直す。



「……難しいですけど、やるしかないですね」



俺は足を鳴らす。


トン、トン、トン。


三人が合わせる。

だが、もうそれだけじゃ足りない。

この先は、見ないだけでも、順番だけでも突破できない。


遠くの歪みが、ひとつだけ脈打った。


魔物の気配じゃない。

もっと重い。

もっと静かな何か。


そこだけ、世界の底が口を開いているみたいだった。


俺は息を整える。


ようやく戦い方が分かったと思った。

だが違う。

分かったのは、今までの正解が通じないことだけだ。


この先にいるものは、もっと別の理屈で動いている。

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