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「無能」と追放された俺、観察スキルで全て見抜いて無双したら元パーティが崩壊した  作者: ささかま
第3章 再現不能の領域

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49話 戻らない場所へ、それでも行く

配信を切ったのは、協会から二度目の通信要請が届いた時だった。

通知音が静かな場所に妙に響く。


さすがに、これ以上は配信向きじゃない。

そう判断して、俺はスマホの画面を閉じた。



「え、切るんですか?

ここからが気になるのに?」


「ここからは外向けじゃないです」



名残惜しそうなコメントを最後に流し、配信は終了した。


それでも通知は止まらない。

切り抜き、フォロー、メッセージ、取材依頼らしき文面まで混ざっている。


凛が俺の手元を見る。



「十分騒がせた。

次は協会」



俺は通信要請を開く。

映像通話。

発信元は探索者協会本部。


承認すると、黒い画面の向こうに一人の男が映った。

四十代半ば。

表情はほとんど動かない。



「探索者協会本部、戦略管理局長の神谷だ」



名乗りはそれだけ。

すぐに本題へ入る。



「黒崎悠斗。

君の戦闘は確認した」



ひなたが小さく呟く。



「ほんとに本部だ……」



神谷は気にしない。



「結論から言う。

君を優先監視対象に指定した」



「理由は二つ。

未定義の戦闘手法。そして、空域迷宮との類似性だ」



空気がわずかに重くなる。


雪那が短く返す。



「類似性、ね」


「そうだ」



神谷は資料を展開する。

浮遊島、崩壊する足場、歪んだ雲。


空中に浮かぶ迷宮の断片。



空域迷宮スカイ・ラビリンスは攻略記録自体は存在する。

だが、再現に成功したパーティはない」



「同一ルートで侵入し、全滅した記録もある。

現在の帰還率は一パーセント」



ひなたの顔が引きつる。



「一パーでも十分やばいですよ……」


「理解している」



神谷の声は揺れない。



「通常の攻略理論は通用しない。

固定された最適解が存在しない」



「観測によって挙動が変化する可能性がある。

ゆえに、再現不能と判断されている」



再現不能。


その言葉が、頭の奥に残っている感覚と重なる。



「加えて、失踪者が出ている」



画面が切り替わる。


複数の名前が並ぶ。

その中で、一つだけ目を引く名前。



「協会所属のVtuber兼アイドルとして活躍しているルナリア・ラビット。

公表済みの失踪者だ」



ひなたが息を呑む。



「配信を何度も見たことあります。

確かチャンネル登録者250万人越えてましたよね」



凛が短く答える。



「知ってる。

友人のSランク探索者」



それだけだった。

だが、視線はわずかに落ちている。



「高度中層で通信途絶。

同様の事例は何度か確認されている」



「……そう」



短い返答。

感情は抑えられている。

だが、完全には消えていない。



「黒崎悠斗。

空域迷宮の再調査を依頼する」



命令ではない。

ただ事実として置かれる。


ひなたが小さく声を漏らす。



「いきなり本題ですね……」


「時間が惜しい」



神谷は即答した。



「強制ではない。

断る権利はある」



その一言で、場が静まる。


俺は空を見る。

雲の向こうの裂け目。


あれは、ただの景色じゃない。



「……危険すぎる」



凛が口を開く。


一拍、間があく。



「Sランク探索者が戻ってないって分かってる場所に、軽い理由で行く必要はない」



正しい。

だが、それだけでは止まらない。



「……それでも行くなら、止めない」



ひなたが凛を見る。

何か言おうとして、やめた。


雪那が静かに言う。



「到達はできる。

でも、今のままだと死ぬ。条件を揃える必要がある」



神谷が頷く。



「その通りだ」



「協会は情報と装備支援を行う。

ただし、生還は保証しない」



保証しない。


その言葉だけが、妙に現実的だった。


俺は目を閉じる。


あの一撃。

見えたが、理解していない。


だが、消えてもいない。


曖昧なまま終わらせるのは、納得できない。


それに。


戻ってこない人間がいる場所を、放置する理由もない。



「……受けます」



ひなたがこちらを見る。



「ほんとに……?」


「受けます」



凛は何も言わない。

ただ、小さく息を吐いた。


神谷は変わらない。



「了解した。

詳細は送る。準備期間は短い」



通信が切れる。


静寂だけが残る。


ひなたが大鎌を抱え直す。



「行くなら、私も行きますからね。

今さら置いていかれても困ります」



凛が短く言う。



「私も行く」


「知ってる。

なら言わせるな」



雪那も一歩前に出る。



「私も同行する」



「観察、回避、火力、制圧。

必要な役割は揃っている」



迷いはない。


俺は空を見上げる。


再現不能。

帰還率一パーセント。

失踪者あり。


だからこそ、確かめる価値がある。


未完成のまま終わるわけにはいかない。



「……再現する。

今度は、理解して、当てる」

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