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「無能」と追放された俺、観察スキルで全て見抜いて無双したら元パーティが崩壊した  作者: ささかま
第3章 再現不能の領域

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47話 “観測者”と呼ばれた日

未だにコメント欄の熱は下がらない。

日本語と英語が混ざり、画面は流れ続けている。


ひなたはまだ自分の登録者数を見て、落ち着かない様子だった。



「ちょっと待ってください……

ほんとに10万……?」



実感が追いついていないらしい。


俺は周囲に意識を向ける。

配信がバズっていても、安全が保証されるわけじゃない。


コメントの中では、勝手に呼び名を決める流れが始まっていた。



「観察マン」


「未来読んでる奴」


「解析バケモン」



ひなたが吹き出す。



「観察マンはちょっと嫌です!」



凛が小さく言う。



「事実ね」


「事実でも嫌です!」



その中に、別のコメントが流れた。



「もう7万超えたぞ」



ひなたの動きが止まる。



「……え?」



画面を覗き込む。



「え、ちょっと待ってください」



表示された数字。


72653。


コメント欄が一気にざわつく。



「いつの間に」


「伸び方おかしい」


「もう新人じゃない」



凛が短く息を吐いた。



「……自然な伸びじゃない」



俺はスマホをしまう。



「ただ増えただけです」



ひなたが即座に否定する。



「ただじゃないです!」



説明する気もなかった。

見られるなら、次もやるだけだ。


その時、通路の奥で重い足音が響いた。


空気が一瞬で変わる。


凛の視線が細くなる。



「来る」



暗がりから現れたのは、四足の魔物だった。

黒い外殻が何層にも重なり、異様な圧を放っている。


ひなたが踏み込む。



「いきます!」



大鎌が振り下ろされる。

直撃。


だが、浅い。



「硬っ!?」



次の瞬間、魔物の前脚が振り抜かれた。


ひなたの体が弾き飛ばされる。



「っ!?」



壁に叩きつけられ、息が詰まる音がした。


凛が即座に雷を放つ。



「――雷閃」



だが、わずかに逸れる。


外殻に弾かれた。


雪那の氷刃が続く。

複数同時に突き刺さる。


それでも、止まらない。



「面倒ですね」



短く呟く。


俺は踏み込み、短剣を差し込む。

だが、浅い。


手応えがない。


コメントが流れる。



「通らない」


「これ硬すぎる」


「長期戦だろ」



魔物は距離を取り、再び構える。


ひなたが立ち上がる。



「……これ、無理じゃないですか?」


「無理じゃない」



だが、すぐには終わらない。


凛と雪那が同時に攻める。

だが削れない。


俺ももう一度踏み込む。

同じ場所を狙う。


弾かれる。


違う。


見えていないわけじゃない。

情報はある。


だが、多すぎる。


外殻。

筋肉。

魔力の流れ。


全部が視界に入る。

だが、答えが出ない。


魔物が再び踏み込む。


避ける。


凛が撃つ。

外れる。


ひなたが振る。

壁を削るだけ。


終わらない。


その瞬間。


視界のノイズが消えた。


違う。


情報が増えたんじゃない。

削ぎ落ちた。


一点だけが、浮かぶ。


胸部の奥。


外殻の隙間、そのさらに奥。


そこに、すべてが繋がっている。


理解したわけじゃない。

ただ、届いた。


思考より先に口が動く。



「……そこか」



音が消える。


動きが遅くなる。


魔物の全身が、ゆっくり見える。


俺は最短で踏み込む。


無駄な動作は一切ない。


ただ、その一点だけ。


短剣を突き立てる。


刃が滑り込み、深く沈む。


次の瞬間。


魔物の全身から力が抜けた。


崩れる。


黒い外殻が内側から砕け、音を立てて崩壊した。


沈黙。


一拍遅れて、コメントが爆発する。



「え?」


「今の何?」


「ワンパン?」



ひなたが呆然とする。



「……今の、何ですか?」



凛が言う。



「一点しか見てなかった」



雪那も珍しく驚いている



「迷いがなかったわね」



俺は答えようとして、視界が白く飛んだ。


足が止まる。


こめかみが焼けるように痛い。


呼吸が乱れる。


数秒、何もできない。


雪那が静かに言う。



「それ、弱点じゃないわ」



顔を上げる。


青い瞳が、まっすぐこちらを見ていた。



「“終わる場所”を見てる」



ひなたが息を呑む。



「終わる場所……?」



「分かりません」



正直に言う。



「ただ、見えただけです」



凛が小さく言う。



「連発するのはやめなさい。その状態でできるとは思えないけど」



その通りだった。


コメント欄の流れが変わる。



「観察じゃない」


「観測だろ」


「Observer」



ひなたが画面を見る。



「観測者って呼ばれてますよ!?」



コメントが一気に揃う。



「観測者」


「Observer」


「それでいい」



凛が短く言う。



「……それでいい」



その一言で、名前が定まる。


観測者。


その文字が画面に流れ続ける。


俺はそれを見つめる。


違和感はない。

むしろ、しっくり来る。


その時、コメントが流れた。



「それ、空のSランクで通用するか?」



視線が自然と上を向く。


空の奥。


歪んだ裂け目が、わずかに見えた。


まだ遠い。

だが、無関係じゃない。


俺は短く息を吐く。

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