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「無能」と追放された俺、観察スキルで全て見抜いて無双したら元パーティが崩壊した  作者: ささかま
第3章 再現不能の領域

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46話 世界配信と、帰還率0の空ダンジョン

ダンジョンを出たあとも、配信は切らなかった。

切る理由がなかったし、切ったところで意味はない。


画面の向こうは、まだ騒ぎ続けている。


同時視聴者数は6万を超えていた。

数字の更新が早すぎて、ほとんど目で追えない。


コメント欄は完全に壊れていた。

日本語と英語が混ざり、同じ速度で流れていく。


その時、配信画面の右上に見慣れない表示が出た。


【自動翻訳機能が有効になりました】

【海外ミラー配信が統合されました】


ひなたが二度見する。



「え、ちょっと待ってください」



「なにこれ!?」



「世界って書いてません!?」



凛が画面を確認して、静かに息を吐いた。



「本格的に向こうへ届いたな」



「もう国内配信じゃない」



コメント欄の一部が、自動で日本語に変換され始める。



「信じられない」


「どうやってボスを騙した?」


「彼は何を見ているんだ?」



ひなたが口を開けたまま固まる。



「読める!

いや、読めるのも怖いですけど!」



コメントは止まらない。



「日本の配信者やばい」


「この女の子たちも強い」


「今来た。何が起きた?」



ひなたはそこで、はっとしたように自分の画面を見る。

次の瞬間、変な声を出した。



「……えっ」

え、え、え?」



そのまま大鎌を取り落としかけ、慌てて両手で抱え直す。



「ちょ、待ってください!

10万、いってます」



一瞬、空気が止まった。


登録者数。

100,428。


さっきまで5万台だったはずだ。

俺が確認している間にも、数字は少しずつ増えていく。


ひなたの目が完全に泳いでいた。



「なんで!?

私、さっきちょっと叫んでただけですよ!?」



コメント欄が一気に笑いと祝福で埋まる。



「おめでとう」


「ひなた10万きた」


「今の叫びで登録した」



ひなたは顔を真っ赤にして首を振る。



「いやいやいや!

そんな理由で増えないでください!」



その勢いのまま一歩下がり、石に足を引っかけて盛大によろけた。


俺が腕を掴む。



「危ないです」


「うわっ、す、すみません!」



コメントがさらに加速する。



「今の完璧」


「そういうとこだぞ」


「登録した」



凛が小さく笑った。



「らしい」



ひなたはまだ混乱していたが、それでも少しだけ嬉しそうだった。



「10万って……ほんとに10万ですか?

夢じゃないですよね?」



「現実です」



俺が答えると、ひなたは大鎌を抱えたままへなへなとしゃがみ込んだ。



「むりです……

今日、情報量が多すぎます……」



凛は視線を画面から外さずに言う。



「喜んでいい。

でも、これでもう発言一つで炎上する規模だからね。

今までみたいに気軽には喋れない」



ひなたの顔が引きつる。



「えっ、急に怖い話しないでください……」



その横で、雪那が淡々と呟いた。



「妥当ね。

未熟でも伸びる者は伸びる」



ひなたが顔を上げる。



「それ、褒めてます?」



雪那は少しだけ考えてから答えた。



「事実よ」



それから視線を俺へ向ける。



「あなたも同じ。制御できないなら脅威になる。

今は、まだ配信者で済んでいるだけ」



軽い口調ではない。

警告に近かった。


コメント欄にも似た空気が混ざる。



「確かに危ない」


「強すぎると管理されるぞ」



その時、配信画面の左上に通知が入る。


【探索者協会本部から公式接続要求】


ひなたが悲鳴のような声を上げる。



「ええっ!? 公式!?」



凛が通知文を確認する。



「……早い。本当に動いたらしい」



俺は一度だけ目を閉じる。


面倒でも、止まる理由にはならない。

通知を閉じる。

今ここで応じる必要はない。


コメント欄がまた爆発する。



「協会きた」


「本物だ」


「完全に見つかったな」



同じ頃、世界の別の場所でもこの配信は見られていた。




アメリカ。

大型モニターの前で腕を組んだ男が、配信を見ながら笑う。


レオン・グレイ。


「Interesting

派手じゃないのに、全部持っていくタイプか」




空域迷宮。

満身創痍の女性が、スマホで配信を見ていた。

頭のうさみみが力なく垂れている。


ルナリア・ラビット



「凛、いい人を見つけたようね。

もし……もしも1週間前に彼と出会えていれば、この結果は変わっていたかも」



諦めたように宙を見つめる。



「もう時間が残されていない。

救助も期待できない。

あと数日で私も私じゃなくなる。

最後までVtuber、ルナリア・ラビットとして生きたかったのう」



小さく呟いたあと、頬に一筋の涙がつたわった。




日本、探索者協会本部。

神谷恒一は戦闘記録を見終え、短く告げる。



「すぐに黒崎悠斗と接触を図れ。

空域迷宮関連については救援しないと契約にあるが、ルミナス嬢を失うのは協会の損害が大きすぎる。

空の迷宮の探索依頼を出し、ルミナス嬢を救助させる」


「黒崎悠斗が受けますかね」


「白石凛がいる。ルナリア嬢と仲がよかったはずだ。

うまくいくように情報を出す」





配信に視点が戻る。


俺はスマホ越しの世界を見ながら、小さく息を吐く。


騒ぎは大きくなっている。


だが、やることは変わらない。


攻略して、生きて帰る。

それだけだ。



コメント欄に、また空の話題が流れる。



「空のやつ、行くのか?」


「帰還率0だぞ」



ひなたがすぐに反応する。



「え、あれって本当に行く話なんですか!?」



凛が肩をすくめる。



「普通は行かない」



雪那は静かに続ける。



「……行くなら、止めないわ」



全員の視線がこっちに集まる。


空を見上げる。

地上からでも分かる。


高い場所に、現実からずれた裂け目が浮かんでいる。

光がわずかに歪み、距離の感覚が狂う。


あれが次だ。


俺は短く答えた。



「近いうちに行くかもしれません」



一瞬、コメント欄が止まる。


次の瞬間、爆発した。



「正気か」


「やめろ」


「だから見たい」

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