31話 最強の3人で固定パーティを組むことになった
夜のスタジオは静かだった。
配信機材の待機ランプだけが、淡く光っている。
今日は探索ではない。
打ち合わせを兼ねた配信だ。
それでも待機人数は多い。
開始前の画面なのに、コメント欄はすでに流れていた。
ここ最近、俺たちは何度も一緒に潜った。
凛の速度と精度。
ひなたの火力。
俺の観察。
噛み合えば強い。
それはもう証明されている。
同時視聴者数。
2700。
待機だけでこの数字は異常だ。
だが今は、それを疑う段階でもなかった。
配信開始を押す。
画面が切り替わる。
俺の横には、凛とひなたが座っていた。
「こんばんは」
コメントが一気に加速する。
「きた」
「3人いる」
「今日なんかある?」
ひなたが元気よく手を振る。
「こんばんは!」
凛は短く言った。
「白石凛です」
それだけで空気が跳ねる。
視線を集める強さがある。
俺はコメント欄を一度だけ確認する。
今日は戦闘より、言葉の方が重要だ。
凛が先に口を開いた。
「単刀直入に言うわ。今後の話をする」
コメント欄がざわつく。
「来た」
「重大発表?」
凛は淡々と続ける。
「これまでの共闘で、数字は出てる。
視聴維持率も高い。
切り抜きの伸びも安定してる」
ひなたが頷く。
「コメントもすごく良かったです!
また見たいって人、多かったです!」
凛は短く肯定する。
「再現性がある」
それから、俺の方を見る。
試す視線ではない。
評価を終えた目だ。
「単発ではもったいない。継続で組みたい」
コメント欄が一瞬止まる。
次の瞬間、爆発した。
「正式きた」
「ついに固定?」
「神ユニット」
ひなたが笑顔のまま両手を上げる。
「私も賛成です!」
だが、俺はすぐには答えない。
ここで流されると、後で崩れる。
配信はもう生活費のためだけじゃない。
スポンサーも入った。
見られる数も増えた。
だからこそ、軽く決めるつもりはない。
流れに乗るだけなら簡単だ。
だが、それを続ければ主導権は失う。
この先もやるなら、使われる側にはならない。
形は最初に決める必要がある。
「確認したいことがあります」
凛が短く返す。
「どうぞ」
俺は整理して言う。
「戦闘中の指示は俺が出します。
攻略を最優先にします。
配信映えのための無理な動きはしません」
コメント欄が流れる。
「いいね」
「そこ大事」
ひなたが一瞬だけ驚いた顔をする。
だがすぐに頷いた。
「私は大丈夫です!
その方が絶対やりやすいです!」
凛は黙って聞いていた。
数秒の沈黙。
それから、あっさりと言う。
「問題ない」
コメントが跳ねる。
「即答!?」
「受けた!」
凛は続ける。
「あなたの指示が一番合理的。それで結果が出てる」
短い。
だが、それで十分だった。
トップ配信者が主導権を渡した。
その意味は軽くない。
ひなたが嬉しそうに笑う。
「じゃあ、決まりですね!」
コメント欄はもう追えない。
それでも分かる。
視聴者が待っていた瞬間だ。
単発ではなく、続く形。
俺は凛を見る。
凛は小さく頷く。
ひなたは期待を隠さない。
この2人となら、先に行ける。
そう思えた。
「じゃあ」
一度、息を整える。
「今後は継続で組みます。
正式に、この3人で潜ります」
コメント欄が完全に爆発した。
「うおおおお」
「固定きた」
「最強パーティ」
同時視聴者数が跳ねる。
2700。
3100。
3500。
発表だけで増える。
もう流れは止まらない。
ひなたが画面を見て声を上げる。
「めっちゃ増えてます!」
凛は落ち着いたまま言う。
「当然。期待値がそのまま数字に出てる」
俺は少しだけ笑う。
確かに、その通りだ。
単発の神回では終わらない。
続くなら、見る理由ができる。
俺は画面から視線を外し、前を見る。
「次は、もう少し深い階層に行きます。
攻略も、配信も、今より上を狙います」
コメントがまた流れる。
「絶対見る」
「神回継続」
「この3人やばい」
凛が静かに席を立つ。
「証明しましょう。
この選択が正解だったって」
ひなたも力強く頷く。
「はい!」
俺は短剣に触れる。
まだ戦っていないのに、集中が深くなる。
一時的なコラボは終わった。
ここからは、固定の戦力だ。
使われるつもりはない。
選ぶ側で進む。
もう後戻りはしない。
そう決めた。
その時、待機画面の次回予告欄に、
凛が新しい行き先を打ち込んだ。
――深層、攻略開始。
コメント欄が再び爆発する。
この3人の配信は、
もう次の段階に入っていた。




