助け舟は風と来る
廊下に、雷鳴が響き渡る。
ガラスの割れる音、誰かが駆ける音、常に何かしらの音が聴覚を刺激する。
セイラの箒が宙を舞い、ローズの物質攻撃が常に来る。タイルがルーカスの新たな能力である雷の能力を分析しながら攻撃をしかけ、アリシアが戦場を駆ける。
ルーカスは必死に攻撃を受け流す。
だが少しずつ、着実に押されてきている。
一人の戦力では限界があった。
「くそ、やべーな……」
ルーカスの心に焦りが生まれる。
なんとか状況を打開せねばと、必死に考えを張り巡らせていた。
そのとき、廊下の奥から足音が聞こえてきた。ルーカスが今誰よりも待ち望んでいた、仲間の声だった。
「ノア……!」
「よく耐えたね、ルーカス」
ノアの合流により、久しぶりにルーカスの心に余裕が生まれた。
「おー、仲間が戻ってきてよかったな」
タイルが感情の無い声で言う。
「セイラ、アリシア」
突如、タイルが二人の名を呼ぶ。
「お前たちは偵察に行ってこい。コイツらは俺とローズで潰す」
「うん、了解。行こ、アリシアちゃん」
「はーい、あいあいさー」
偵察をしろ、と命令されたセイラとアリシアは階段を下り消えていった。
「お前ら二人だけで俺たちのこと潰せんのかよ」
ルーカスがタイルとローズを煽る。
「一番ボロボロな奴には言われたくないな」
タイルがノアに向かって怪しげな笑みを浮かべながら口を開く。
「あと三人潰せばこのグループも終わりだからな」
「……は?」
ノアのいつもの余裕そうな表情は消え失せ、代わりにひどく驚いた表情が覗く。
ノアにとっては、その一言だけでダリアが脱落したという事実を理解するには十分だった。
「まあ、突然言われたらビックリするよねー」
ローズがけらけらと言う。
ノアはルーカスの方を向いた。
ノアはそのとき、ルーカスの申し訳なさそうな表情を見た。
さっきまで一緒にいた仲間が脱落し、もういない。
ノアはその事実を、頭の中で切り替えられずにいた。
「本当に……」
視界が真っ暗になるような感覚が走る。
「ノア!」
だがルーカスの叫び声により、また現実へと引き戻された。
タイルとローズは、もうすでに戦闘態勢に入り攻撃を仕掛けてきていた。
そうだ。これは試験だ。
相手は勝つために動く。
こちらの事情なんざ関係ない。
──滑空歩法。
ノアは空中へと浮かび上がる。
セイラが居なくなった今、空中はノアにとって独壇場だった。
──風刃。
タイルとローズに、無数の見えない攻撃を紡ぎだす。
タイルは簡単なことかのように攻撃を相殺した。
「雑だね。本来はこんな雑な攻撃するタイプじゃないだろ?」
タイルはノアの顔をしっかり見つめて続く言葉を言った。
「仲間がいなくなった焦りで一杯なんだろ?」
「だって……また……」
「……また?」
ルーカスが疑問の声を上げる。
「タイル、もういいんじゃないの?」
ローズが呼びかける。
「まだ、もう少しだ」
もう少し。
その言葉がルーカスの頭にこびり付いた。
もう少し、とはなんなのか。
「そっか、なら────」
ローズが自身のアサルトライフルでバン、バンと二発続けて発泡し、鉄パイプを思い切りノアの身体に当てる。
「あ……っ」
ノアが呻き声を上げる。
「もう十分でしょ?」
その後ローズが吐き捨てる。
「この戦い、ちっとも面白くない」
「Dropout」
ローズの言葉のあと、間髪入れずにタイルが命令をする。
「その言葉……」
さっきも言ってた、と続けようとしたがルーカスは続きを言うのを辞めた。
なぜなら、その言葉が脱落を意味する言葉だと、やっと理解したから。




