孤独な雷撃
俺の手は微かに震えていた。
この土壇場で雷の力を使うこと──そのためにどれだけの勇気が必要なのか、今更ながら理解したのだ。
『使えるようになったならどんどん使っても良いかもしれない。でもそれは、個人での話だ。』
この力はまだ実戦では使用したことがない。
ここでいざ使ってみて、失敗してしまったら何が起こるのか分からない。
『ルーカスが操作ミスって私たちがビリビリ状態になったらたまったもんじゃないからね』
今俺の背後には仲間は誰一人としていない。
廊下に立つのは、俺と目の前の四人だけだった。
『光って、雷として利用できないかなって』
──使うしかない。
雷の力は、まだ完全に制御できる訳ではない。だが今使わなければ、このまま四人に囲まれて終わりになる。
俺が手をかざすと、手のひらの上に光が走った。これはいつもやってきたことだ。
そこにさらに光の量を増幅させる。分散しないように極限まで光を縮める。
すると、小さな電光が手のひらの上を踊り始めた。雷を出すことはできた。あとは、慎重に使うだけ。
その瞬間、ローズが床に散らばっていた沢山の金属片を浮かせた。
俺は反射的に光を放った。
金属片は空中で弾かれ、バラバラと再び床に落ちる。
「よし……!」
自分の小さな呟きが耳に届いた。
緊張と微かな興奮が入り交じった声だった。
それを見たタイルは目を細め、じっと俺を見つめた。
俺は雷の力を使う覚悟をした。
ここから先、後退することは許されない。
雷が全身に行き渡るような感覚。
今までとは違う雷の感覚を掴んだとき、神経が研ぎ澄まされるような感覚があった。
集中するため、目を閉じ息を整える。
拳から発せられた電光が、バチリと空気を裂く音を出した。
そしてローズが微笑む。
「ちょっと面白そうじゃん」
──轟脚。
雷を身体に纏わせスピードを出してセイラの方へ向かう。
「はや……」
ものすごい速度で回避をするセイラ。
彼女は既に空中にいた。
雷や光は移動速度が早くても空中へ行くことはできない、そう判断したのだろう。
「雷……雷の速度で攻撃して……」
俺は頭の中で必死に戦略を練る。
もし今仲間がいたら、俺よりももっと早く、そして完成度の高い戦略を編み出してくれたのだろうか。
タイルは微動だにせず、ただじっと俺を目で追う。
その視線の鋭さに、身体がぞくりとした。
一瞬でも判断を誤れば脱落させられる。
──光駆。
雷を即座に光に戻し、その眩しさで四人の視界をほんの一瞬奪う。
その間に、自分のこれからの動き、そして相手がどう動くかを考える。
冷静に、冷静になれ──。
「そう簡単にはいかないか……」
視界を取り戻したアリシアが言う。
すると即座に俺めがけて移動をしてくる。
パッと光を放ち、彼女の攻撃の軌道を僅かに逸らした。
この時点で俺は、この四人に勝つという考えからノアかトモリが戻ってくるまで耐える考えに切り替えていた。
まだこの戦いは序盤だ。
俺の背後に仲間はいない。
この戦いを耐え抜くことで、次の展開を切り開くしかないのだ。
雷の刺激が全身に走る。
思考をより研ぎ澄ませる。
俺は次の一手を考えた。
攻撃か、防御か──。
「──やるか」
再び雷を集め、俺は4人に向かって動き出した。




