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炎垂れて、命燃ゆ ─炎宿す少女、灯火を掲げる─  作者: 東歌
生存適性統理育成選抜試験編
7/25

光の先にあるもの

あれは、俺たちが出会った日の夜のことだった。


突然、誰かから電話がかかってきたんだ。


ちょうどベッドの上でまどろんでたところだったから、なんなんだと思いながら起き上がってスマホを見たら、トモリからの電話だった。


トモリは、あの大人しい性格的に自分から電話をかけることはないと思っていたから正直、驚いた。


「もしもし」


俺はベッドに腰掛けながらスマホを通して話しかけた。


「あ、ごめんなさい、今、電話しても大丈夫ですか」


落ち着きの無い声が耳に入った。


正直言うと疲れたので今すぐに眠りたい気持ちで一杯だったが、大人しそうなトモリが電話をかけるということは何かが重要な話なのではないかと思い、少し話すことにした。


「何時間も話さないならいいぜ」


「流石にそこまでは話しません」


冗談で言っただけなのに、真面目に答えるのがちょっとおかしくて俺は笑った。


「で、なんで俺に電話かけてきたんだ?」


「今日、ダリアさんとノアさんと模擬戦しましたよね」


「あー、そうだな」と軽く相槌をしながら思い出したんだ。その日の模擬戦のことを。正直、あの二人の連携は凄かった。綺麗に噛み合っていた。


出力型と制御型の違いを、あのとき理解したんだ。


「ルーカス……さんの権理は、光なんですよね?」


「だからさん付けいらないって。」


トモリにはわざわざさん付けをしなくてもいいと昼間にも伝えたはずだが呼び方を変えることはなかった。


「質問に答えてください」


さっきから、トモリの話し方に妙な違和感があった。なにかを確認しているかのような、話を早く進めたがっているような、そんな違和感だ。


「そうだけど?」


「ルーカスさんは、生まれつき光の能力を使えましたか?」


「いいや、後から使えるようになった」


「何歳からですか」


「十四歳だな。権理の覚醒は15歳までだから、結構ギリギリで使えるようになった。」


「そう、なんですか」


質問攻めが終わったと思ったら、トモリは上の空のような返事をした。


しばらく沈黙が流れた。気まずい感じだ。何を真剣に考えているのか知らないが、俺としては早く電話をかけた理由が知りたかった。


何も話さない時間が続いた。俺には何を考えているのか全くわからなかった。


「おーい、大丈夫か」


「……あ、はい」


俺の呼びかけに対して十秒ほど経ってから言葉を返した。だが、さっきの上の空での返事ではなく、はっきりとした返事だった。


「あの、ルーカスさん」


「なんだ?」


「光って、私が見てる限りだと攻撃面で見るとあまり強い能力では無いんです。」


突然他人の能力を批評し始めた。


だが事実であるのも否めない。


確かに光の能力は攻撃に向いたものではない。他能力よりも遥かに早く移動できたり、他人の視界を奪ったり、どちらかというとサポートタイプだ。


「それで、私さっき思ったんです」


一拍置いて、続きの言葉を紡いだ。


「光って、雷として利用できないかなって」


「雷……」


意外な言葉が出てきたんだ。

新しい視点だった。俺が権理に目覚めてまだ長い時間が経っていないのもあるかも知れないが、そんな視点で話す人と初めて出会った。


「そうやって考えたり、実際に使ったことはありますか?」


「いや、全く。つかそれって、『双権理( そうけんり)』なのか?」


双権理とは、一人の権利保持者が二つの権理をもつ現象を指す。だが双権理保持者は極わずかで、非常に稀なものだ。


「いえ、双権理ではないです。光を雷として扱うのはあくまで派生の範囲だと思います」


「あー、なるほど。ちょっと明日、直接訓練場で直接会わないか?なんかこういうのはしっかり話したい」


「私は構わないです。ダリアさんとノアさんも呼びますね」


「助かる、そうしてくれ。じゃあまた明日」


俺はそう言って通話を終了させた。


長い時間話していたので、眠気はどこかへと吹き飛んでいた。


光を雷に。

そんなこと、俺だけじゃきっと思いつかなかった。


学校がわざわざグループを組ませたのは、こうして互いに切磋琢磨して行くためなのかもしれない。


そう思い、その日俺は眠りについた。


その翌日、俺たちは再び訓練場へ足を運んだ。


光を雷に変える。


言葉で言ってしまえば実に簡単だが、実際にやってみるとだいぶ難しかった。なんせ、提案をしたトモリ自身も、もちろんノアやダリアも能力の派生なんてしたことがなかったからだ。


だが、長時間練習していると少しだけ、肌がビリッとする感覚が一瞬だけ走った。


そのとき、俺の手のひらでは光が雷のように瞬いていたんだ。


一度感覚を掴めば習得するのは容易だった。

できたときと同じことを繰り返して、身体に雷の出し方と操作の仕方を叩き込ませた。


そうやって練習して、ある程度操作できるようになったのは生存適性統理育成選抜試験開始の一日前だった。


「悩みどころだね」


三人にそのことを話すと、ノアがそんな反応をされた。


「使えるようになったならどんどん使っても良いかもしれない。でもそれは、個人での話だ。まだ慣れない状態で使っても自分の身体に負荷がかかるし、操作も確実性はあまり高くないからね」


「確かに。ルーカスが操作ミスって私たちがビリビリ状態になったらたまったもんじゃないからね」


ダリアが納得したように呟く。


「ルーカスはどうしたいんだい?」


「俺は自分のことだけどまだなんとも言えない。三人が考えた方針に従いたいと思ってる。」


「トモリはどう思う?」


ダリアが、ずっと黙っていたトモリに話を振った。


「基本は使わない方針でいいと思います。一人になったときとか、危険な状態の時だけ使うって、制限をかけるような」


「いいんじゃない?もちろんルーカスがどう思うかによるけど」


「僕も使うとしたらそんな風に運用しようかなって今考えてたよ。それが一番いいと思う。」


「俺は元々賛成だ。まあ、仲間があんまりいないときにぶちかます」


かくして新しい力である雷の能力は、俺たちの隠し札となった。

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