恐怖を視る者
トモリがバタリ、と倒れた。
「トモリ!!」
ダリアが叫ぶ。
トモリに奇襲をしたのは、アリシア・シャロンだった。
アリシアは、ゆっくりと顔をあげトモリを捉える。
「あ、気絶しちゃった?」
悪びれた様子もなくそう言った。
ダリアが大きく目を見開いた。
「ノア、トモリを連れて行け!」
ルーカスはトモリの1番近くにいたノアに指示を出す。
ノアは何も言わず、トモリを抱えた。
廊下の奥からコツ、コツ、と規則正しい音が幾つも重なった音が響き、姿を現す。
冷たい目に、冷めた表情。
タイル・コードウェル。
「なるほど」
極めて落ち着いた声。
「お前達を狙ったのは正解だったみたいだ」
「随分と上からだな」
ルーカスが、低い声で言う。
その横に、一人の少女が立っていた。
「ねえタイル、これホントに面白いの?」
ローズ・ファリアが戦場に似合わない間延びした声を上げる。
彼女の足元に転がっていた鉄パイプが勝手に持ち上がり、それはローズの手元に収まる。
「まあ、いつか戦うんだろうからいいけど」
次の瞬間、鉄パイプが弾丸の様に鋭く飛ぶ。
ガンッ!!
鈍い音を立て、ルーカスが鉄パイプを受け止めた。強い衝撃が走り半歩下がった。
ただの鉄パイプでは起きないようなダメージ。
ローズの権理によって速度と衝撃が上乗せされている。
「ノア!突っ立ってないで早く行け!」
ルーカスが鋭く叫ぶ。
ノアはすぐに背を向ける。
何も言わず、トモリを抱えたまま廊下の奥へ走っていった。
「二対三、か……」
ダリアが独り言のように呟く。
「いや」
タイルが、薄ら笑いを浮かべた。
「二対四だよ」
タイルがそう言ったのと同時に新たな人影が現れる。
セイラ・ブライアント。
彼女は箒に優雅に腰掛けていた。
「ダリアちゃん」
セイラがダリアの頭上から話しかける。
「上も警戒した方がいいよ」
困ったような笑みを浮かべてセイラは言葉を続ける。
「ごめんね。仲良くさせて貰っていたけど、これは試験だから」
いつもとは違う冷静な声を聞き、ダリアは驚きの表情を浮かべる。
4人全員が揃った。
そして、全員が異様な雰囲気を放っている。
「……っ」
床を蹴る。
ダリアが真っ先に動いた。
標的は、ローズ。
早い。
だが──
「おっと」
軽く避けながらローズの人差し指が動く。
床に転がっていた金属片が一斉に浮かび上がる。
弾丸のようにダリアへと向かった。
ダリアは姿勢を低くし、模擬弾を銃から放つ。
近距離でなら勝てる。
そう判断を下した。
轟音。
壁が木っ端微塵に砕けた。
鉄パイプが、壁を抉ったのだ。
ボロボロと破片が周囲に舞う。
ダリアの足が止まる。
「うそ、でしょ……」
コンクリートは、人間の力で楽々壊せるものではない。
もしあの鉄パイプが自分に当たったら、どうなってしまうのか。
背筋が冷たくなる。
その瞬間、ダリアを見てタイルが目を細める。
何かを見極めるように。
「……ああ」
彼は静かに呟いた。
「Dropout」
ダリアの身体が硬直する。
ダリアの腕時計が赤く光った。
ルーカスが、光で目を瞑る。
次に目を開けたとき、ダリアの姿はもう無かった。
静まり返る廊下。
一人、脱落した。
だが、目の前にはまだ四人いる。
「さて……」
タイルは挑発するように言った。
「次は誰でしょう?」




